転生の家康とキリンの子

立花戦

第1話―凡人は転生する徳川家康に―

生まれた瞬間だけは等しい。

その瞬間に取り巻いている本人に関わる外部からの決定される。

これらは相違で結ばれ縛られる。

環境や両親による運命に。

才能があるか無いかは置いて外に出たからには違う道に歩む道に。

生まれたときだけ同質を誰もが持っている。

そこだけは禀質ひんしつはないだろう。


「先天性の才能なんて無い事をボクは知っている。

才能は願うものじゃなくてつかむものだ!」


場所は日本の最北になる北海道。

ボクは上を脱ぎ猛吹雪もうふぶきの耐える修業をしている。

底冷えしていくと思考していた誕生に関することで忘れていたことがある。障害や病などの一定数で抱えながらも中にはいる。

その一定数はいるが尊き命は紛れもない。

理不尽な確率で翻弄される運でも祝福されるべきで優しく同等にあるべきの生命。


「特別な能力はなくて平等。後天的に目覚める才能もボクは信じていない。

ただ信じているのは血を吐くようなボクのトレーニングだけ」


念仏を唱えるように独白をやめず続ける。

ボクがいるのは日本で最も寒いとされる北海道内にある陸別町りくべつちょうだ。


「無事に生まれて?そんな綺麗事を言えるのは想像しかしていない」


極寒に耐えながら独白は止めようとしない。


「そんなセリフを言える資格は無い、それを知らない人生を歩んだから述べれるし語れる。平然と。

しかも理解しようとも歩み寄らない」


陸別町は大気中の水蒸気を昇華して小さな氷晶が降るダイヤモンドダストが発生する。

ボクは囚われる運命とも呪を乗り切るためにわざわざ北海道まで渡って来たのだ。

上半身を裸にして極寒に襲われながらもキラキラと輝く細氷と戦っている。

ただただ独り言には鬱憤を吐き出すため。

実の息子に実験に近い教育を受けてきた。

非の打ち所のない〖凡人〗を育てる。

こんな頭のイカれた計画の養育されて理解してくれる人なんていない。

凡人はただの概念に過ぎない。

凡人はその地域や特定のコミニティーの多数派の印象を持たれるだけの定義。

この悩みを相談しようにも理解してくれるものは誰もいない、ある意味ボクは生まれてから不遇や障害を持って生まれた。あの家庭に生まれた瞬間から。


「はは、はっはは!ボクは生きている。

いつもボディガードはいないから助けはこない。

スゴイ、手や頭が痛いほど寒くて苦しいぞ」


生命の危機を遭うことで必死にならざる得なくなり命の大切さをそのときに知れる歓喜に高揚する。

これが生きている充実感!

この喜びにキチガイだって自覚している。

ボクの人生は平凡になるよう外部からの要素から求められたもの、運命がいてこられた人間だ。

父は厳格な人であり事務次官という高い地位を持ちながら驕らず謙虚にいる。

本来なら上の役職あるはずの大臣クラスを裏工作で更迭こうてつさせたりする超過した成功させる謀略家。

世襲制な政治家を粛清など民政など尽くす在るべき気高き政治手腕を併せ持つ。

そして母も父に負けず劣らずの非凡である。

通常では敏腕ビジネスマンでも数十人の仕事の量をこなす。

さらに迅速だけではなく内容までも優れた万夫不当な活躍。畏怖してこう呼ばれたビジネス最強のソルジャーと絶賛。

日本を動かすとも謳われてきた二人の子は、どの層にも期待と羨望の眼差しを向けて止まない。


「くっ、意識が……朦朧してきた。

でもここで……耐えて重圧を抜けてやる」


ボクはその十男の地位として生まれた。

華麗なる一家の苗字はどこにでいる゙田中゛だ。

英才の苗字には似つかわしくないと体裁上の理由で無駄な名称がつけられた。

それは、ブーストチルドレン。

次の世代の社会を背負う子供を込めたという。

ボクは一応そこで可愛がられて育てられた。

それでもボクは日本を変えるために選ばれたブーストチルドレンの責務が生じる。才能というのを兄や姉が研鑽する姿を間近で見てきたからか現実的に受け止めた。

それが才能というには小さな捉え方でまやかし。

十男の田中晴人たなかはるとであるボクは、そこから離れて平凡な生活を送れるように両親はボクだけ教育方針を変えて平凡を与えた。

当初は好きなことして楽しかった。

けど成長するにつれて名門の田中家は平凡ではあまりにも重たい家名だった。

どうにかボクも普通という枠から抜けないかと必死に悩んで足掻いた。

そして導き出したのが精神を鍛えることだ。

身体を自然と向き合うことで強くなれる。

修行して強くなった精神はその分だけ強くなる。


「ぜっ……たいに……ブーストチルドレンに相応しい男になるんだ。ボクは……田中晴人。

凡人から超人になるんだ…………」


そこでボクは朦朧としていあ意識が途絶える。

絶えず燃える魂も未知のどこかへと流されてゆく。


(――息が苦しくない。空気が……変わった?

いや、他にも変化が複数とある。

凍えて感覚のどれも失っていた身体が万全。

奇妙だ!震えるほどに奇妙)


完全な全盛期に戻ったかのような体調の良さ。


(死を彷徨っているにしては最高コンデションだ)


不調がないのは驚愕。何よりも恐怖に心が震えている田中晴人はおもむろに目を開けてみた。

真っ先に飛び込んだのは赤い髪の青年。

赤い青年はどこか人間離れしていた。

その容姿もさることながら立ち振る舞いが天上人であると本能が根源がそう訴えてくる。

服従せよと。


「……どこの……どなたですかアナタは?」


だが気概と精神だけでそれを跳ね除けてみせた。

田中と怪しい青年はソファーで腰掛けた状態で向かい合っている。

建物内にはあるのは宮殿であり厳かな黒と青が基調とする。

拉致されたのかと田中晴人は敵愾心を隠すことなく目の前の青年を睨んで詰問をする。


「なんと!これはビックリした。

神には意見をするのも縛られるようになっているのに根本から刻まれていた誓いに抗えるとはねぇ。

おっと、そう警戒しないでくれ」


足を組んでいる好青年らしい方は笑顔で紳士的な振る舞いをしてくる。


「無理だ。

警戒はするだろ。常識的に」


「ハッハハ。それもそうか混乱させたよね」


頭の後ろを掻きながら親しい笑みを湛える。

逆に張り付けたような笑顔を見知らぬ人にこれだけ向けるのは裏があって思うべきだろう。


「……」


「驚かせてしまって本当にすまない。

私は海をつかさどる神クラミツハ。

キミをここへ招待した本人で愉快な神だよ」


「神。ゴッド?」


「そのゴッドだよ」


腕を広げてみせて敵意がないことを大袈裟に露骨に示すクラミツハ。

ここへ招いたのか?ボクを。

すべての罪を許すような慈悲深く柔和な笑み。

その海のような寛大さには燻っていた心が温まるのを田中晴人。

ここまで好印象があっただろうかと少年は歓喜と恐怖の相反する二つが併存させられていた。

何かされたのかと戸惑いながらも敵意をさらに剥け出す。だが田中晴人はそれしかできない。


(無力だ。クソ普通だからボクが……

ここまで痛感させられるなんて)


これが限界だった。

面罵も詰問さえ出来なくなっていく。


「くっ……」


「フフッ。どうやらプロフィール通り素晴らしい素質を。おっと不適切、曲げない精神が輝いている」


なにが楽しいのか笑みを崩さずに選ばれた理由を述べていく。


「……呼んだのはそれを聞かせるためか」


「ここは高天原たかまがはら


「タカマガハラだと?」


日本神話に出てくる神様の京みたいな場所なのか?


「おや?神からの威厳に耐性を身につけるというのか。ここまで心を踊らかせるのは、いつ以来かな」


抵抗しようとする少年をクラミツハは、たいへん気に入ったようで手を叩いて喜んでいる。

まったく説明義務など放棄したような神に名乗るだけで赤い青年に不満と苛立ちをおぼえる。


「安心してくれたまえ。キミの味方だよ。

神々が住まう世界を高天原、少し言い方を返ってみるなら神界だよ。ここは」


「神界?神の世界だというのか」


そんな荒唐無稽な話があるものかと田中晴人はその回答を一蹴ができない。啓示だ。

超越された領域にいる神たる存在。


「イエス、堅苦しい説明話で行こうか。

まず結論から告げさせてもらうよ……田中晴人くん。キミは亡くなってしまった。死因は凍死」


極寒の地で死亡その重大な事実に。


「そうか」


どこ吹く風な態度だった。


「ずいぶんと軽いね。

もう少し悲嘆しないのかい自分の最後を」


あっけらかんとクラミツハは肩を竦める。


「その覚悟はあったから来たんだよ陸別町に」


「これが人間たちの常識なのか混乱させられるよ。それでキミには六道輪廻の判別させてもらう」


六道輪廻。

それまで生きていた善と悪を神や仏がそれを見極める目によって真実の総計をおこなう。

六つの地獄がありそこへ振り分ける。そのごうの結果として向かう先に順位を定めた六つの地獄どれかと送られる。

クラミツハは指をパチンと鳴らすと二人の位置から挟むテーブルの上に書類が降ってきた。

卓上に落ちた書類を手にしてクラミツハは黙読をはじめる。すると厳かなドアが音を立てて開く。


「クラミツハ様。お呼びですか?」


女の子だ。

それも飛び切りの美貌を誇る。

粉雪を騙されるような美しい肌、真っ白な髪の色をしたボブヘア。豊かなプロモーション。

秘書かなと田中晴人は怪訝そうにして観察。

白髪の女の子はテーブルで左右に腰掛ける二人から中央まで近づいて尋ねた。


「キミには彼と同行してもらう。いいね」


「え?ええぇぇぇーーーッ!?冗談ですよね」


その向かうことの説明がされず一方的に言った。

当然これに絶叫する美少女。


「大マジさぁ。

さて話を進めようか田中晴人。

魂がここへ通り生前で積んできた善と悪に応じて転生する世界を決める。これ六道輪廻というのさぁ」


「こんな分かりやすい六道輪廻の説明してくれるなんて涙が出るよ」


「はは、神威に抗えるキミは非凡だ」


「至極恐悦。でもボクはただの凡人だよ神様」


「そこまで叛逆的な人間はいないよ。

その六道輪廻を決めるわけなのだが本来この手段は特別で六道輪廻とは違う世界に行ってもらう」


まだ納得していない美少女が訴えてくるが我関せずなクラミツハに田中晴人は頬に汗が流れた。


「違う世界?」


「そう。用意される道は六つの地獄とされる。

一般的に考えられる天国は天界てんかい。けれどそこは幸福を貪り食らい満たされる忘れ失う地獄」


残念なことに天国は地獄の道であったようだ。

冗談はこの辺にして探りをいれてみるか。


「善行をそこまで積んだことないが……

ボクは天国いや天界に行くのか?」


「残念だけど叶えられない。

キミには例外としてファンタジーな戦国時代に生まれ落ちてもらう。そしてキミには徳川家康になってもらう」


「徳川家康……あの天下人のか。

委細承知したクラミツハ様。もし慣例に倣うとしてボクが送られる世界がどこへ行くのか伺ってもよろしいですか」


「人間界かな。キミが生きている世界へ記憶を書き換えられて生まれ落ちる事になっていた」


迷いの素振りもなく即答をするクラミツハ。

少年が生まれ変わるのは徳川家康。

織田信長、豊臣秀吉、と並ぶ三英傑の一人として数えられて天下を統一して太平の世を築いた偉大なる将軍。


「い、いいのですか。

ボクが徳川家康になる……」


改めた言葉遣い。その資格があるか、田中晴人はテーブルを向かいでソファーを座る神は足を組み直してから暫く視線を上に泳がせた。

まさか間、髪を容れず応えないことに訝しむのだった。推し量ろうとしたのは唸りながら思案を始めた神の中心にある内面を。

徳川家康になれるかだけの返しやすい問いの言葉。


(どうも受け入れ難いが転生すると眼前の神クラミツハはボクが死んだと告げた。

こんな突拍子のないこと如何せん信じれないが判断材料は少ない。この与太話みたいな言葉を信じて考えないとならない)


悟れないよう田中晴人は、困ったように隣で立ち控えている女の子に助けを求めるように苦笑。

神の使いと思われし女の子は、気にしないで下さいと言葉をせず代わりに満面な笑みで問いを返した。

違和感を与えないよう、それらしい振る舞いをとる。田中晴人はそこに意識をあまり向けておらず舞踏会などでの社交界で身につけた言動を自動の機械的にうごかせる間に思考を専念。

唐突に置かれた状況の改善を模索を。


(この場を抜けることを第一として。

敵対心は作らない方がよさそうだ。

宮殿内の執務室にある質がみたことないものばかりで下手に逃げたり反感を見せないようにしないと)


生殺与奪をこの神が手のひらで転ばしている。

生かすか殺すか、大袈裟の比喩でもなく暗喩として直面している。暗中模索から光明を見つけるための方針を決めた瞬間、クラミツハは思考の時間が終わって視線を避けて正面を見る。


「嗚呼キミは第二の人生を、これからは天下人の徳川家康として生涯を追憶から体験してもらいたい。こんなこと気安にもならないが萎縮しないでくれ田中晴人くん。数多いる中で私が選んだのだから」


魅力的な話だなと田中晴人は冷ややかに評価して外面的は心を踊ったように演じる。


「光栄です!」


田中晴人は背筋を伸ばして応えて、こう思った。


(多数いる中でボクを選んだ。

こんな平凡を教育されたボクが選んだ!)


少年は歓喜していた。

教育方針の弊害だった。多くを期待されず重圧から遠ざかる環境で生きた少年は特別な扱いに自尊心が高まりなっていく。

言葉の端々や表情を少しでも集めようとすることを忘れてしまうぐらいに。


「不安だろうからナビゲーターをつけよう。

可憐なこの子はホワイト・クレマチス。

キミの力になるだろう」


「よろしくね。ハルトくん」


白髪の美少女クレマチスはウインクして挨拶。


「あっ、はい。よろしくお願いします」


ソファーに座ったまま会釈。


「それではゲートを出そう。

ゲートをくぐればファンタジーワールドだよ。

きっと後悔しない。楽しい生活が待っている。特別に選出されたキミならね」


「こんな至り尽くせりされて感謝しても足りません。ありがとう神様、クレマチス様」


手を膝につけて立ち上がり深々と頭を下げる。

田中晴人は浮かれていた。

そして特別に選出されたことを尋ねる冷静力は歓喜で思考の隅から彼方に消えていた。

クラミツハは指をパチンと鳴らせるとクレマチスの左側から巨大な門が出現させると大きな軋み音を響かせて開く。


「それでは行って参ります」


「行ってらっしゃい」


田中晴人は門を通ろうと向かう。

奥に見えるのは、まばゆい光だ。足踏みをしていたが逡巡は刹那。

足を一歩と向けて躊躇を払い中へと進んで姿を光の中へと入っていた。

クラミツハは手を振りながら見送っていると納得していない様子のクレマチスに振り向く。


「いやぁー、勝手にナビゲーターさせて申し訳ない。相談や一言もなく命令させてすまないと思う。でもキミなら出来るよ。

優秀なキミならね」


「わあぁーー!ホントーですかソレは。

よし任せてください逐次に報告しますので」


続けて光の門を潜っていくクレマチス。

一人となった神クラミツハは門を閉じるとため息をこぼす。そして天上に仰ぎ見ながら零す。


「彼の性分から考慮して送った。

きっと眠られる、あの子、、、を助けてくれるはずさぁ」


その遠い目は先程までの態度は様変わりして、もの寂しいさが滲む。

もし孤独の疎外感靄のように呟きを誰かが聞いていれば尋ねるだろうがそこに居るのは今クラミツハしかいない。


「そう。彼女の最後の願いを叶えないとならない。どんな手を使ってでも。

そのために田中晴人、キミを偉んだ。

あの子を救えると未来でそう確約しているんだ」


明かせるものはいない。

目的の成就には自称の平凡と名乗る田中晴人が欠かせないキーパーソン。

それを知るクラミツハはわざわざ手のこんだ事をしてまで少年を転生させて送った。

その思惑を知るのはいつ頃になるか。

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