青春画

yasuo

第1話 藤原くん

中学生二年生の男子、藤原は絵を描くのが好きだった。

特に女の裸を描くのが。

最初は純粋に絵のスキルを高めたいだけだった。

ネットで人を上手く描く方法を調べていたとき、裸を描くのがいいという情報を見た。

裸を見たり描いたりしているうちに、思春期の藤原が女体に傾倒していくのは仕方がなかったかもしれない。

男に比べて丸みのある線で構成される形に美しさを覚えた。

鉛筆で、自分の手でその曲線を撫でるときにはいつでもドキドキした。

なんだか悪いことをしているような背徳感。

上手く描けたとき胸に湧き上がる嬉しさ。

誰かに見せたい。見せたくない。

藤原は常に相反する気持ちを抱えて生活していた。


***


「ちょ、藤原くん、上手くない?」


美術の時間。

二人一組になってお互いを描くという課題だった。

ペアになった女子が藤原の描いた自分を覗き込んでそう言った。


「そ、そうかな」


平静を装うが、内心はぴょこぴょこと飛び跳ねている。

合法的に絵を見せられる快感!

いや、絵を見せるのに合法も違法もないが、授業でもないと他人に絵を見せる機会などないのである。


「てか全身描くとかすげー」


近くにいた別のペアの男子が覗き込んで言う。

言われて気が付いたが周りの人は胸から上を描いている。

しまった。普段一人で描くときは全身を描くことが多いから無意識に全身を描いてしまった。

自分だけ違ったものを描いていることと、普段描いている絵の片鱗が現れてしまったことに、じわりと冷や汗がにじんだ。


「でも、なんかちょっとエロくね?」

「ちょっと!それはあんたがエロいだけでしょ!」


ドキリとした。

勿論裸体ではないわけだが、どこかに癖が出ているのかもしれない。

本当にこの男子がただエロいだけの可能性もあるが。。


「もう、、なんか恥ずかしくなってきた」


そう言って赤らめた顔を両手でぱたぱたとあおぐ彼女。

藤原は自分の絵を向いて、目だけでちらりと彼女を盗み見る。

自分でも気付かないほどの、静かな劣情が揺れていた。


その夜、藤原は彼女の裸体を描いた。

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