AIショートショート

@goriran

時空を超えた恋人

 これから書く話は、みんな嘘と思うかもしれない。でも、誰か一人でもこの話を信じてほしいと思って書くことにする。

 私は大沢琴音。何もかも平凡な中学三年生。日常も、学校でも、塾の時間も、ずっとぼんやりしていた。平凡といったらそれは噓かもしれない。学校で話す相手はいなかったし、先生ともそこまで仲良くなかった。強いて言うなら、司書の先生と少し話すくらいだろうか。話すといっても、「これ借ります。」というくらいなのだけど。

 それはある日のこと。学校の図書館で見つけた古い本が始まりだった。学校にある本というのは公立図書館に比べて新しい本が多い。多くの場合、学校図書館は司書サービスの会社と契約を結んでいて、一定期間が経つと返す決まりになっている。五、六十年前のものだろうか。神保町の本屋によくあるような、ほんのり黄色い背をしている。

 その本に手を触れた瞬間、目の前が真っ暗になった。

 

 気がつくと、自分は鎌倉時代の京都にいた。「いた」というよりかは「いたらしい」というほうが正しい。

 ここはどこなのだろう。さっきまでいたモダンで、窮屈で狭い空間から、開放的空間に転置した時のその落差が、私に混乱をもたらす。とにかく古いが、どこか優雅な感じが読み取れる。そう考えていると後ろから小汚い男が近づいてくる。

 「どうしたんだ、そう考えこんで。」

 本当は私から話しかけるべきなのだろうが、相手が話しかけてきたのなら都合がよい。まずこの時に大事なのは今何年なのか知ることだろう。

「ねえ。今は何年なの。」

「何年って...今は正応二年じゃないか。」

 正応二年。聞いたこともないような単語が、真面目に授業を受けてこなかった私の頭を覆いつくした。正応二年とは、鎌倉時代の後期のことである。歴史の授業でそんなことを聞いたことがあるだろうか。いや、聞いても覚えていなかったはずだ。当時の私は、歴史に興味がなかったからだ。


 彼の瞳には、あきれたような感情でいっぱいのように感じた。本当に、鎌倉時代なのかもしれない。

 私はこの時代に何をしに来たのだろう。私はこの時代にどうやって帰れるのだろう。私はこの時代に生きていけるのだろうか。私はこの時代に死んでしまうのだろうか。私はこの時代に恐怖を感じた。

「おい、おい。どうしたんだ。顔色が悪いぞ。」

小汚い男が私の顔を覗き込んできた。私はその男の顔を見て、驚いた。その男は私のクラスメートの大澤にそっくりだった。その男は大沢という名前だった。大澤はクラスの中で私の次に目立たない存在だった。大沢は私のクラスで雄一、私に話しかけてくれた存在だった。


「大澤...?」

私は思わずその名前を口にした。すると、その男は驚いたように私を見た。


「どうして私の名前を知っているんだ。お前は誰だ。」

その男は私の腕を掴んできた。私はその男の力に抵抗できなかった。私はその男に連れられて、どこかに連れて行かれた。私はその男に助けを求めた。私はその男に帰りたいと言った。私はその男に泣きついた。私はその男に許してと言った。私はその男に信じてと言った。私はその男に大沢だと言った。私はその男に私だと言った。私はその男に平安時代だと言った。私はその男に図書館だと言った。私はその男に本だと言った。私はその男に平氏だと言った。私はその男に源氏だと言った。私はその男に歴史だと言った。私はその男に未来だと言った。私はその男に現代だと言った。私はその男に中学生だと言った。私はその男に琴音だと言った。


「琴音...?」

その男は私の名前を繰り返した。その男は私の顔を見つめた。その男は私の目を見た。その男は私の涙を見た。その男は私の声を聞いた。その男は私の心を感じた。その男は私の手を握った。その男は私の髪を撫でた。その男は私の肩を抱いた。その男は私の耳元で囁いた。


「もう大丈夫だ。琴音。」

 どうやら彼は、平氏の末裔として迫害を逃れている大沢という若者だった。大沢は私のことを自分の妹だと思い込んでいた。

 私は大沢と一緒に暮らすことになった。暮らすといっても、源氏から逃れなければいけないので、野宿の繰り返し。その途中で、大沢と一緒に京都の町を散策したり、平氏の墓参りをしたり、平安時代の風習に触れたりした。

 大沢は私に平氏の歴史や自分の家系について語った。大沢は平重盛の隠し子の末裔で、平氏の滅亡後に大唐に漂着したという伝説を信じていた。その中で、彼から、平氏の栄光と悲劇や平安時代の文化に触れ、次第に興味を持つようになった。

 しかし、私はいつか自分の時代に戻らなければならないという問題はいつまでたっても解決しなかった。

 そんなある日、私は大沢と一緒に平氏の隠れ家にいたところを、源氏の手下に見つかってしまった。大沢は私を守るために、源氏の手下と戦った。そのとき、手に持っていた古い本が光り始めた。私は本の光に引き込まれるようにして、自分の時代に戻ってしまった。私は大沢に別れを告げることもできなかった。

 私は自分の時代に戻っても、大沢のことを忘れることができなかった。大沢のことを想いながら、平氏の歴史について勉強するようになった。いつかまた大沢に会えることを信じていた。

「ねえ。大澤...話したいことがあるんだ。」

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