14歳。彼の偏見と憂鬱。

片耳

プロローグ

「あー、腹減った。」


彼の最期の言葉だった。

直後、彼は東京タワーの展望デッキから飛び降りたからだ。

近くにあったスチール製のゴミ箱で窓ガラスを叩き割り、こちらを振り返ることもなく墜下していった。

驚異的な速度で地面との距離を縮めている最中、彼は何を想っていたのだろう。

その事だけがありふれた世界から僕だけを差別化する。


それにしても死ぬ間際まで傲慢な奴だなあと一度は彼を蔑んだが、それもまた彼の恣意であり画策。僕は何も知らなかったし、知ろうともしなかった。

どちらにせよ、友達未満だった僕に

「一緒に死ぬ」

という選択権はないように思えた。


果たして彼の行動は正しかったのか、正しいという言葉では何も解決しない事は分かってる。わかってるけど、やっぱり寂しいなあ。


何がなんでも、彼は秀美だった。。


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14歳。彼の偏見と憂鬱。 片耳 @tadou

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