「私、異世界を破壊します」~破壊神と一緒にできるかな~

@785

第1話 プロローグ

――どうして……こうなったのだろう……――


 それが、花月はなづきマキの正直な感想だった。

 ただ、好きな本を読んで、友達と他愛ない会話をして、そして、気になる人と目が合っただけで心臓が飛び跳ねそうになる。そんな普通の生活を送っていたはずの15歳の少女は、ボロボロの服を着せられ、木製の手枷と足枷そして、鉄の首輪をつけられ教科書でみたコロッセのような場所に立たされていた。


 ――何故?――


 その問いを何度しただろうか分からない。


 ――どうなるの?――


 わかり切っている問い。


 ――夢なら覚めて――


 消して覚めることない悪夢。


『神々に逆らった愚かな邪神の徒の少女。その魂を浄化する使命を賜りし、使徒さまの入場です』


 派手な衣装に身を包んだ小太りの男の良く通る声が拡張期で観客席からは歓声があがる。これから起きることも、これまで起きたことも全て現実と理解はしている。


 ――せめてお風呂に入りたかったな――


 もう何日もお風呂に入れず、体は埃まみれ。最期に思うことがそれとは、自分もやっぱり女の子だったんだなと実感する。


 ――こういう時には神様に祈るのだろうけど……その神様が殺そうとしてるんだよね――


 思い出すのは、この世界にきた日の事。

 あの日、運命が決まってしまった。

 そこは白い宮殿だった。そして、薄いカーテンのかかった中空に浮かぶ11の玉座。

 それだけで、異常な空間にいると認識させられる。

 更に異様さを強めるのが人種も年齢も性別もことなる12人の若い男女。

 そして、マキに告げられたのは――


『あなたは選ばれませんでした。よって破壊神の使徒の烙印を捺させてもらいます』


 白のタキシードにアルカイックスマイルの白面を身に着けた男なのか女なのか、ただルーラーと名乗ったその存在はマキの背に回ると手を当てると、激痛が走り、背中に焼き付けられた烙印の痛み、痛み、痛み。

 あまりの痛み苦悶の声すらあげられない。


『定着まで痛みを伴いますのでご容赦を』


 慇懃にお辞儀をすると手枷と足枷がつけられる。


『ですが、ご安心を祭典の開幕までは決して死ねませんので』


 ると楽し気に回りを歩きながらゆっくりと語る。


『それでは、神に選ばれし“使徒”の皆様には一月後から始まります『サクリヴィア』まで、ごゆるりと……こちらの贄を仕上げることにいたします』


 大げさに手を広げると11人の人影は消え、痛みで苦しむマキは薄汚い牢獄に放り込まれた。それからも地獄。背中の激痛に加えて与えられる食事はカビの生えたパンに腐った泥水。ルーラーの言う通り、死のうとしても死ねず、糞尿は垂れ流し精神が壊れそうになるも背中の激痛が精神を繋げてしまう。壊れることも死ぬこともできず地獄の日々――


 それが漸く終わると安堵するも生きたいという思いだけは残り続けて今に至る。


『それでは、皆様拍手でお迎えください。神々の宴! 『サクリヴィア』に参戦するのは、我が国、パラディウム騎士国の守護神である『騎士神アスロット』様の使徒にして『勇者』カエデ、そして、それを支える三人の仲間、聖騎士『アレックス・シルバーブレード』魔術師『シャルロット・ルーン』聖女『セリア・ホーリーハート』のお目見えです』


 黒髪でわりと整った顔立ちの白と黒の剣を背中に背負った青年を筆頭に、白い鎧を身に纏った金髪ロングヘアーの青年、魔女のような帽子をかぶった赤髪の美少女に、白の神官服をきた青髪の少女が入場し声援がとび会場は大いに盛り上がり始める。


――あぁ……この人たちが、私を殺す人たちなんだ……死にたくないけど無理なんだろうな――


 少女の絶望の惨劇が幕を上げる。

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