転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略⑬




 ◇ ◇ ◇




「おあああああ!?」


 勢いよく起き上がったブンタはベッドから転げ落ちた。


「痛い! ……あれ? ここはどこ?」


 ブンタは辺りを見回す。広さにして十五平方メートルあるかないかぐらいの小さな部屋だ。小さな丸い窓から星がまたたく夜空が見える。




「おお。やっと起きたか」


 後ろから声がして、ブンタはそちらの方を振り返る。狭い室内では窮屈きゅうくつそうに見える、大柄のショートアフロの男が椅子に座ってこちらを見ていた。


「え……? え……?」

「あー……説明するとだな、リンネ・リンネ社で騒ぎに巻き込まれたのは覚えているか? 俺はあの時におまえと一緒にいた、ガキンチョとメガネのお姉ちゃんの仲間だ。んで、今いる場所はその俺達が暮らしている地上艦の中だ」

「地上艦……え、船ェ!?」


 ブンタはあわてて小さな丸い窓に張り付いて外を見る。暗くてあまり見えないが、夜の荒野が左から右に流れていく――すなわち自分の今いる場所が動いている地上艦の中であるというのは事実だった。


「な、なんで!?」

「今回の事件に関わったリンネ・リンネの関係者がまだ何人も逃走中でな。一応指名手配こそかかったが、オーツカシティでは公式に死亡扱いになってる『ブンタ・Hホライゾン・ナイトウ』が生きているとバレると、おまえさんやおまえさんの親族とか知人が、何かしら面倒なことに巻き込まれる可能性が少なからずあってよ……」


 大柄のショートアフロの男――ニッケルは、状況が飲み込めず硬直こうちょくしているブンタに説明を続けた。


「まあ他にも色々対処する方法はあると思うが、ウチの馬鹿二人が世話になったのも何かの縁だ。ウチの船でしばらく身を隠すといい。安いメシと狭い部屋ぐらいなら用意できる。勿論もちろん、少しばかりこの艦で働いてもらう事になるが」

「み、身を隠す!? 働く!? え? ここで?」


 ブンタは動揺して思わず、頭部カバーを激しくパカパカ上げ下げする。


(何言ってんのこの人! 何でなんもかんも僕の同意なしに決められてるの!? うわー、本当に船動いちゃってるし! 荒野のド真ん中だし! 今更降りられないし、言う事聞くしかないじゃん!)


 狭い個室でニッケルの話が済み、ブンタが落ち着いて状況を飲み込むまで小一時間かかった。




 ◇ ◇ ◇




「今週の小遣こづかい、ナシ」

「ごぉーん!?」


 レトリバーⅡ格納庫。腕を組んでそう宣告するカリオの前で、マヨは絶望のあまり口を縦に大きく開いて目を見開く。


「お慈悲じひ! お慈悲をカリオ!」

「十分慈悲かけてるわ! 今月ナシにされたいか! きっちりしっかり危ない目にいやがって!」


 カリオにすがりついて何とかお仕置きを撤回てっかいしてもらおうとするマヨの横では、ミントンがチーフメカニックのタック・キューの前で、正座させられていた。


「ったく、オメーは大人なんだからしっかりしろよ。リンネ・リンネの工場が見たかったって?」

「えーと……それは実は二の次で、お出かけ終わったらマヨがカリオの子供の頃のヒミツとかニッケルのフラれエピソードとかリンコの勝負下着の色とか教えてくれるっていうから……ゴメンなさい」


 ミントンがそう供述するのを聞いたマヨが動きを止める。カリオは細い目でマヨを睨んだ。


「二週間小遣いナシ」

「ぐもぉー!? お許しを! お許しを!」

「よくも勝手に俺達のプライベートを交換条件に出しやがって! テメエあの時ちゃんとヒミツにしておくっつたよな! 言ってねえだろうなまだ!」

「セクハラですよカリオー!」

「そりゃおめえだ!」




 四人が騒いでいるその上、キャットウォークの手すりにもたれ掛かり、リンコはロリポップキャンデーをめながらその様子を眺めていた。


「そ、そうですか……僕達が見つけた脳みそさんは建物の下敷したじきに……」

「らしいぜ。俺達がデカブツと戦っている裏でそんなことがあったとはねえ。とにかく、あまり気に病むなよ」

「……はい……」

「……まあ、すぐにはちょっとキツイか」


 リンコは男性二人の話声が聞こえてくる方を見やる。キャットウォークの奥から、ニッケルとブンタが並んでリンコのいる方へ歩いてくる。


「あ、そこのモヒカンの女が俺達と一緒にそいつと戦ってたリンコって奴だ。リンコ、コイツが例の」 

「やっほ。ってホントにロボット!? えーすごい、ウケる! いやウケちゃダメか、大変だったらしいもんね」

「ど、どうも」


 物珍しさのあまり、リンコはブンタのボディのあちこちを触り出す。ブンタは恥ずかしくなり思わず一歩後ろへ下がった。




「とりあえず一旦は私達の仲間入りだね。ヨロシク!」




 明るくリンコがそう言うのを聞いて、ブンタはなんとも複雑な気持ちになった。


(結局、脳みそさんは助けられず、僕は機械の体で成り行きで傭兵ようへいさんの船で暮らすことに……どうしてこうなった……)


 ブンタは自分の金属のボディをコツコツと叩いてみた。


(最悪なのはこれがやっぱり夢じゃないっぽいってことか……色々と面倒すぎる……! 脳みそさんには偉そうなこと言っちゃったし……そうだよ、僕も結局はあの人と似たようなもんだし、やっぱり生き返るならチートな武器とか能力とかハーレムとかが欲しかったなぁ~!)


 リンコに頭部カバーの中の脳みそをまじまじと観察されながら、ブンタはキャットウォークの下で騒ぐマヨ達を見やった。




(まあでも……ひとりぼっちじゃないだけマシか)




(転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略 おわり)

(次回 超人激突! 古代遺物防衛戦! へ続く)



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