第50回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画(636文字)
あなたに心からの笑顔を
この先にある50マイルの森を抜ければ、もう待ち合わせ場所だ。
僕はこれから就職の面接を受けに行くのだ。ここら辺からはその会社の私有地らしい。こんな大きい会社だから身寄りのない人の優先採用枠があるのか。ここで働けたらいいよな。
車なら2時間もあれば十分に間に合う。
森に入ってすぐ、何か持った人が立っているのに気が付いた。
ヒッチハイクかと思い車を止める。
マネキン人形だった。
笑顔のマネキン人形が、「ようこそ」と書かれた看板を持っていた。
?
意味が分からない。車を走らせる。
数十メートルおきに同じようにマネキン人形が「ようこそ」看板を持って立っている。老若男女問わず立っている。
無視すればいいのだが、あまりにリアルな人形につい車を止めてみてしまう。
よく見ると笑顔なのに目が怖く、気味が悪いがつい見てしまう。
こんなことしていたら時間に遅れ、就職できなかった。
時間を守るという基本的なことができない人に仕事を任せられないと言われた。
何を言っても取り合ってもらえず、仕方なく帰る。
森を通る時に恨めしく人形を見る。こいつらのせいで……。
よく見ると楽しそうに人形が笑ってる。行きに通ったときと違い心から楽しいという笑顔だ。
僕が就職できなかったのを笑っている。人の不幸を笑っている。
カッとなって車で人形をはね飛ばすが、勢いよすぎて木にぶつかり僕は死んだ。
死んだ僕は処理され、森に立つマネキン人形の一体になった。
面接に来る人は笑っていない笑顔で迎え、就職失敗の人は心からの笑顔で見送る人形になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます