第49回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画(789文字)

 あなたを愛しているだけ

 女神の加護が薄れ魔法が弱くなるこの季節になると、私はいつも泣いていた。

 二百年前にあなたが死んでしまったから。

 魔法が使える魔獣はこの季節の影響を受け弱っていたが、魔法を使えない猛獣たちはこの季節に活発に動いていた。

 二百年前のあの季節は猛獣の何十年に一度という活動期で、魔法が弱くなった人間たちの相手ではなかった。他の季節なら軽々討伐できたはずの猛獣たちに苦戦を強いられ、多くの人々が怪我をし、死んでいった。

 三人の治療魔法使いが大怪我をしたあなたの治療に当たったがダメだった。一人は高名な魔法使いだったのに。私は自分の魔力をギリギリまでこの人に渡した。他の季節だったら助かっていたのに。

 それから私はこの季節になると泣いてしまった。

 魔法は人並みにしか使えないが魔力量は国内で上位であった私と、魔力は人並み以上魔法はトップクラスのあなたは、より強い魔法使いを求める国の政策によって婚約が結ばれた。ただこの婚約は政略結婚ではなかった。私はあなたを愛したし、あなたも私を愛してくれた。だからあなたが死んでしまった時、私は自分を恨んだ。私がもっと強力な魔法を使えていたらあなたは死なないで済んだかもしれないのだから。

 私は家を出て世界一の魔法使いと言われている魔女に弟子入りした。

 いつも五、六十人の弟子がいた。弟子の正確な人数は分からない。私のように紹介なしで来た人間もすぐに弟子にしてくれるが、師匠は厳しかった。一緒に修行していた人が翌日には逃げ出しているということがよくあった。

 その厳しい師匠の修行に耐えた私は二百年近くかかってやっと独立することができた。

 私はあなたの骨から五年かけてあなたを蘇生させた。ゆっくりゆっくり確実に蘇生をさせた。

 師匠が世界一の魔法使いというのは本当だった。あなたはあなたのまま蘇った。       

 私はもうこの季節になっても泣かない。

 泣く必要がない。あなたといられるのだから。


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