本日の三題噺 2/21 『別れの挨拶』、『bot』、『自主企画』
挨拶は大事
加藤の SNS はタロbotと家族や友人にからかわれている。
それも仕方のないことだと本人は思っている。
愛犬タロの画像が多いからだ。加藤はタロを可愛がっているし、タロも加藤が大好きだ。
それに、文字だけよりもタロが写っているほうが喜ばれている。
第一、加藤はインドア派なのでそんなに変わったことを投稿できるわけではない。
ある日、加藤が SNS をチェックしていると、友人から某サイトで自主企画を主催するので参加しないかと誘いがあった。
他の参加者とも交流し和気あいあいとした企画だったが、一人嫌な奴がいた。
一言二言、嫌味悪口を書き込んでいる。
加藤だけではなく他の参加者にも同じような書き込みをしている。
友人に聞くと、別の主催者の自主企画にも嫌がらせをしているらしい。
そいつは退会させられても別名義で登録し、同じ事を繰り返しているようだった。
加藤がスマホをいじっているとタロが手を出してきて、思いもしなかったリンクに目がいった。
別れの挨拶とあった。
気になって見てみると、別れたい人に別れの挨拶をすると別れられるという掲示板だった。
結構書き込んでる人がいた。
加藤も自主企画のあいつのこと思い出し、二度と来るなと書き込んだ。
次の自主企画にもあいつは書き込みをして嫌がられていたが、いつの間にかいなくなっていた。
そして加藤がそいつの存在を忘れた頃にあるニュースがあった。
両親が出て行った家で一人暮らしをしていた四十七歳の男性が、死後半年経ってから発見されたニュースだった。
一時話題になったが、それも日々起こる出来事の中であっという間に世間からは忘れ去られていた。
別れの挨拶掲示板に一定数の書き込みがされたことが死亡原因だと気づいた人間はいなかった。
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