TURN.05「スカイ・ハイ(Part,2)」
(なんだ……!? 何が起こった!?)
ヴィヴィッドは驚愕した。何処からの攻撃だったというのか。
Vi0以外に敵の反応はない。第三者の介入というわけではなさそうだ。
(まさかッ……!?)
一つの可能性にヴィヴィッドは辿り着く。
「あまり余裕はないが体制を立て直さなければ……!!」
バトルステージの空へ上がることはエリアアウトとはならないが、バトルステージの真下への落下はエリアアウトとみなされる。地に体がついた途端に敗北となる。
「レスキュー・ブースター作動ッ……!!」
背中に緊急用のブースター・パックが出現。これで一定時間空を飛ぶことが出来る。
しかしこのアイテムの使用はスキルとなり、当然SPも消費する。何よりこのブースターはベガアスと比べれば機動力は月とすっぽんの差まで落ちてしまう。
この一瞬。機動力も失い、SPも残り僅か。突然の奇襲を受けベガアスは緊急修復中。助けにはまだ来られない状況。
「教えてあげようか……アンタがさっき避けたミサイルだよッ!」
その隙を当然、Vi0は逃すはずもない。
既に体勢を立て直し、再度射撃準備へと取り掛かっている。ノロノロ歩く程度くらいの機動力しかない相手ならば狙い撃つのも容易い。
「まだ起爆はしていなかったんだよね! 遥か遠くにいかせてからUターン! 忘れた頃にぶつけさせてもらったわ!」
どうやらVi0の放つミサイルには自動操縦AIつきのホーミング機能も搭載されているようだ。
避けられたミサイルは一度戦線を離脱。そして時間差を置いて再度狙いを定めて後部から一直線に接近。熱源反応接近の警告への反応など許さぬスピードで狭るミサイルは見事にヴィヴィッドのベガアスを撃ち抜き、彼を振るい落とすことに成功する。
「次こそは仕留める!!その状況から立て直すなんて不可能なんだからさァッ!」
左手のガトリングガンが長砲塔のエネルギー・キャノンへと切り替わっていく。超高火力の波動砲だ!!
「【レヴォリューション・ブラスター】装填完了! その命、今度こそ貰った!!」
エネルギー充填95パーセント。トドメの一撃が放たれようとしている。
「……それはどうかな?」
予想外の一撃こそ食らい、窮地に追いやられた。
-----しかしヴィヴィッドの口元は緩んでいた。
「何がよっ……ってっ、うわぁああっ!?」
波動砲発射。その直前にまたも爆風。
「な、なにっ……なによぉおお!?」
背中だ。彼女の背中から何かの奇襲。
バリアによってある程度のダメージこそ防がれたが大ダメージ。
ジェット・ブースターも大破し飛行能力が大幅低下。充填に失敗したエネルギー・キャノンも暴発し、散々な状態で墜落する。
「何処からの攻撃なのよッ!? あんな無防備な状況で仕掛けられる攻撃なんて……ハッ!?」
落下の最中、Vi0は気付く。
「……まさか、作戦が被るとは思わなかった」
そうだ、ミサイルを放っていたのはVi0だけじゃない。
ヴィヴィッドのベガアスも放っていた。そしてベガアスが放ったミサイルもまた……Vi0と全く同じ軌道・同じ作戦で動いていたのである。
「姿勢制御不安定ッ……早く予備のブースターに換装をっ、」
「【スタン・ガン】!!」
片手のマグナム銃から、一発の弾丸がVi0に向けて放たれる。
姿勢制御のため無防備。バリアの展開すらされていない丸腰の彼女へ向かって。
「うっ……!?」
弾丸を撃ちこまれた。しかし、そこまでの大したダメージにはなっていない。
(体が動かないッ……!?)
ダメージこそなかったものの、Vi0の体から自由が奪われる。
指先も足も、満足に動かすことが出来ない。まるで石にされたかのように体が重く感じる。
(麻痺のデバフ攻撃……!?)
一定時間行動不能になる状態異常攻撃だ。命中すれば数秒は満足に動けない。
姿勢制御安定作業中のパワード・スーツはなすすべもなく落下していくのみだ。
(墜ちるッ……!?)
このまま落下を待つのみ。これにてエリアアウトでフィニッシュだ。
「ああ、お前の負けだ」
-----落下するよりも前に。
「それでいいな?」
ヴィヴィッドはVi0の片腕を掴んでいた。
彼女の落下方向にはヴィヴィッドがいた。このまま待てばエリアアウトで彼の勝利だったというのにヴィヴィッドは敵である彼女に手を差し伸べた。
「……かぁあ~、悔しぃいい!!」
Vi0には気持ちの問題があった。
「はいはい私の負けぇ~。あぁ、1000ポイントは流石にデカいなぁ~……」
この状況、どう考えたって負けを認めざるを得ない。
Vi0の体からパワード・スーツが消滅していく。武装解除、降伏のサイン。
サバンナのデュエルは……ヴィヴィッドへと軍配が上がった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「しかし驚いたわ。まさか作戦モロ被りなんて」
バトルステージから離れ、お互い愛車のマシンの下へと向かっていく。
Vi0はインナースーツから軍服ユニフォームへ。パトリオット・ナイト用の衣装へと切り替わっていた。
「俺も思いもしなかった」
仕込んでいた罠がここまで微塵もズレもなくかぶり、そしてお互いにその作戦で窮地に追いやられる。こんな笑い話があるだろうか。
「ねぇ? アンタのマシン。二台とも結構カスタマイズしてるようだけど相当やり込んでるでしょ? イベント報酬のパーツもあるし、課金パーツだって……あ、そういえばアンタが持ってるセイバー! あれ、二つ前のガチャの大当たりでしょ!?」
ヴィヴィッドが持つ片手剣。その名を【システム04/ブラッディ・ティアー】。
「本当はパーツ目当てだった。コレも狙っていなかったわけじゃないが……三十連で運よく当たった」
「くはぁ~。私はそれ目当てだったんだけど全く当たらなくてさぁ……ポイントじゃなくて、武器かければ良かったかも」
「これに並ぶ賭け品を持ってるのか?」
「……相場の2億ギルでどう?」
「それだけの額を張るなら賭けじゃなくてトレードの方が早い」
「くれるの!?」
「駄目だ。これはこれで気に入っている」
「ちぇ~」
マシンの話。武器の話。そしてデュエルの話。
バトルが終わった後、二人は特に険悪なムードになることもなく笑いあっていた。それだけデュエルが楽しかったのか。それとも----
「付き合ってくれてありがとう。今日は楽しかった」
「俺もだ。デュエルは久々だったから、良い刺激になった」
「ふーん。クールで空気が読めない感じに見えたけど、アンタ意外とノリ良いじゃん」
趣味も合うし、話も合う。互いに心が躍る。
「ねぇ、良かったら---」
故にVi0は一瞬、何かを口走ろうとした。
「ん?」
「……ああいや、ゴメン。何でもない」
Vi0はヘルメットをかぶり、愛車のバイクに跨る。用事も終わったのなら、こんな無法地帯に長居は無用だ。
「じゃあ私は帰るわ。道中変なのに襲われないよう気を付けてね」
そのまま、彼女は逃げるようにヴィヴィッドの下から去っていく。
口惜しいような。何処か残念に感じるような。
何処かむず痒い表情を浮かべたまま。
「……もうちょっと、お話したかったな」
去っていくVi0の姿が小さくなっていく。
サバンナに取り残されたヴィヴィッドの口からは----キャラも無視しての本音が漏れていた。
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