大学生になる前にこの物語に目を通せていたなら、今頃自らのファッションセンスに頭を悩ませることもなかったのかもしれない。服への学びを得ることができる。
ファッションというとビジュアルに関することなので、小説では表現しにくい気がしていましたが、ファッションに関する歴史だったりアイデアだったり描写だったりが細かく、文章で魅せる小説の利点が活かされていると感じました。時折イメージイラストを近況ノートで挟んでくださり、それも可愛いです。アメリカンな空気が漂っており、湘南や横須賀の雰囲気が好きな人は刺さるのではないでしょうか。
ですます調の文体が、やわらかくて香り高くて雰囲気が良いですね。衣類に染みついた歴史の匂いがしてくるようです。はじめにALOHAを持ってくるのもずるいなあ。キャッチコピーにもあるようにマニアックな知識が頻出しますが、読んでいて忙殺されることはありません。むしろティータイムの角砂糖のように、湯気とともにすっと溶けていきます。直司の恋路も楽しみ。彼らのアロハがどう織りなされていくのか、期待です。