淫美な白兎
天然ナガイ
淫美な白兎
昔、ある村に
竹造はキジ撃ちの名人だった。肩に鉄砲をかけ、毎日山に入っている。ヤマドリを見つけると、足を忍ばせ息を殺し鉄砲を構える。
狙いを定めてズドーン! と、見事命中。
その日もいつも通り狩りに精を出していた。
竹造は
そのとき上流の草むらで、ガサガサと音がし、大きめの鳥が飛び立った。
「でかいな、イヌワシだ」
と、目で追うように竹造は空を仰いだ。その大きさにも驚いたが、足には獲物を掴んでいる。とっさのことで、それが白い布をくるんだ人間の赤子のようにみえた。
「いかん!」
と竹造はすぐに鉄砲を手にとった。
赤子に当たらぬよう神経を集中し、よーく狙いをつけ引き金をひいた。弾は羽根をかすめ、イヌワシは驚いたらしく獲物を落とした。
「よし、やったぞ」
イヌワシはふらふらと飛び去り、竹造は無事を確かめようと落とした場所へ走っていった。
竹造が人の子と思ったのは、真っ白なウサギであった。ウサギはまるで野に咲くヤマユリのように美しく、それも見たこともない白銀の毛をしている。
竹造は、取って食うにはしのびないと感傷的になっていた。さいわい怪我もないようだし、そのまま逃がしてやろうと思った。
「次は気をつけろよ。さあ、山にお帰り」
◇
その晩、竹造は家で一人キジ鍋をつついていた。すると、「こんばんは」と外から女の声がする。
「こんな時間に誰だい」
といって
竹造は思わず顔を赤らめた。
なぜならその娘は、肌もあらわにほとんど召し物を着けていない。女らしい体の曲線を見せつける胴巻きは、胸のうえ半分が露出しており、編み目の脚は肌が透けている。なんのまじないかは分からないが、お尻には丸い
ムチムチの体つきと胸の谷間の、なんと
「なんだい、けったいな格好して。あんたいったいどこから来た」
「わたしは昼間、あなたに命を救ってもらった白兎でございます」
「ええっ!? なんだって」
「助けてもらったお礼にご奉仕に参りました」
そう言われ竹造は、突き出た胸、くびれた腰、布が食い込んだ股を
据え膳食わぬは男の恥とばかりに、家の中へ娘を招き入れることにした。
「ところで、頭に
「これは、うさ耳でございます」
「ふーん。まあいいや。それじゃあ遠慮なく楽しませてもらおうか」
「はい。お気の召すままに。うっふーん」
しなだれて体をくっつけてくるから、竹造は唇を吸って押し倒した。
「あーん あっはーん」
こうして思いのまま竹造はムフフな夜を過ごした。
◇
猟師仲間の
根っからの怠け者の又七が狩りに出掛けると聞いて、村のみんなは、こりゃあ天変地異が起きるぞ、と嘲笑していたが、又七は、そんな周囲の冷やかしなど気にも止めなかった。
とにかく又七は無類の女好きで、女の裸に目がない。やわらかく真っ白な素肌にむしゃぶりつきたい
「ちっきしょう、竹造の奴め。オラだってそんな娘っ子を抱きてえ!」
最初はそんな馬鹿な話があるかと聞き流していたが、竹造の真に迫った語り口に、カーッと全身が熱くなり、昨晩は妄想が膨らみ、精魂尽き果てるまで自営活動に励んだ。
月夜の晩に、女の肌が恋しくてたまらなかった。
そんな又七の執念の探索は実を結んだ。突然、藪の中から白い影が飛び出した。
「居た!」
と又七は喜んだものの、一瞬で表情を変えた。白兎は、大きな熊に追われている。
又七は鉄砲の腕に自信はなかった。猟師のくせにほとんど撃ったことがない。
奇声を上げ、あてずっぽうに森へ発砲するばかりだ。
ズドーン! ズドーン! ズドーン!
それでも熊は追うのを諦めた。向きを変え森深く逃げていった。銃声の音に驚いたのだろうと又七は思った。
なにはともあれ白兎は助けた。
「やった! オラもきっちり恩を売ったぞ」
にんまりとし、しばらくの間、白兎と見つめ合っていた。
◇
その晩、又七は今か今かと約束の
ドカーーーン! といきなり家の戸が破られた。
「てめぇ、この野郎。今日はよくも邪魔してくれたな! 白兎は逃げたうちの
ヒエーーッと又七は悲鳴を上げた。
バンザイの恰好で家の中を逃げ回った。
怒り狂った熊のヤクザが、お
淫美な白兎 天然ナガイ @atsukana
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