第166話 キャンプ de ファイアー(脳内)

 山用の野営の道具一式は、前回商業ギルドで受け取った備品類の中に全て入っていた。

俺にはハウスがあったから、全く持って無かったんだ。


 3〜4人用のテント、薄い寝具、灯りの灯るカンテラ、簡易調理器具など色々。


 これは仕事で、ここは異世界の野外で、魔物も出るとは分かってるけど、キャンプだよね?!


 これキャンプだよ!!イヤッフォーーー!!


 俺、行った事なかったから超嬉しいんだけど!!


 ああっ!!!そうか!そうだったのかっ!!!


 商業ギルドでビンタ美魔女がスパイスをくれたのは、全てこの為だったんだ!!!


 しまった!その伏線に気付けないとは!!


 俺とした事が何たる失態だ!!


 時間が無いからと、スパイスの調合を後回しにしなければ、キャンプでカレーの黄金コンビをここで初めて堪能出来たのに!!


 これじゃあ、転校で岬くんが居なくなった後の大○翼じゃないかぁ!!!岬く〜〜〜ん!!!


「………シロー、戻って来い。」

「……トラキオ剣兄さんさん大丈夫です。少しばかり悔恨の念にかられただけですから…。」

「何をこの短時間で後悔したんっすか……。」

「色々あるんだよ〜きっと〜。」

「じゃあ、シローはそっとしておいて、ご飯の用意しようか!」

「賛成!僕、お腹減ったよ!!」


 ……君たち、俺の扱いが粗雑になるのが、少し早過ぎやしないか?


 以前、他の人にも言ったが、俺、結構繊細……。


 もういいや。みんなご飯の用意始めちゃったし…。


 悟郎さん寒くない?大丈夫?そうか、良かったよ。


 俺は何だか心がちょっと寒いや……。


 え?それはもう飽きた?早く飯にしろ??


 ……あ、はい。分かりました。今すぐに……。


 と、言っても俺、既に出来上ったご飯を持って来ちゃったんだよ。


 でも、折角のキャンプなんだから、作って食べたいよな〜。


 カレーは無いけど、キャンプの醍醐味として、調理する過程は必須だよ!


 何を作ろうかな〜〜。


 !!!そうだ!アレにしよう!!


 悟郎さん用に酸味を押さえて、肉を多めに入れれば良いか!


 そうと決まれば〜お湯でうどんを茹でま〜す。


 その間に野菜色々とキノコも切り、肉を一口大に切って一緒に炒めま〜す。


 あとは、ちょっとズルして、ばあちゃんのトマ煮と炒めた具材とを合わせて味を調整しま〜す。


 茹でたうどんと絡めたら、最後に予め削っておいた、チーーーーズを入れて完成!!


 バージョンアップうどんナポリタン(具沢山・肉マシマシマシ)!!


 山と食欲○私を読んでから、俺の定番メニューになった一品だ!


 高いパスタを使わなくても十分美味しいんだよと教わったんだ。


 しかも今、ココ、山の上(中腹より少し上付近)!!


 今日は、あの名言が俺の心で甦る……。


 焚き火は男の指定席○(同書抜粋)!!


「はい!悟郎さん出来たよ〜!!寒いから俺の膝の上で食って!」

「ニャッ(わかった)!!」

「美味しいね〜〜!!そう言えば、最近は贅沢な事に色々なご飯が食べれるから、俺の原点回帰的なメニューも久しぶりだ!変わらず美味い!いや、肉が入ってるうどんナポリタン初じゃん!!」

「ニャオニァッ(もうちょっと)!!」

「は〜い。悟郎さん肉追加する?」

「ニャ(うん)!」


 街に戻ったら、また原点回帰メニュー(肉入りバージョンアップ)を作ろう!


 悟郎さん!俺の懐かしメニューでまたご飯作るから、味の感想よろしくね!


「シローさんのご飯美味しそう……。」

「こら!ギネス!ミジェルの作ってくれたご飯だって美味しいっすよ!!」

「そうよ〜。でも、人の食べてる物って美味しそうに見えちゃうのよね〜。不思議〜。」

「シローさん!シローさん!あたしの作ったご飯と交換しませんか?!」

「「「ミジェル狡い!!」」」

「ん?多めに作ったから別に良いよ。でもエルース(うどん)は、みんなも食べ慣れてて珍しくも無いだろ?」


 ドエル店主さんさんに聞いた時は、確か野営時の定番だと聞いてたんだけど。


 でも今回は、商業ギルドで貰ったチーズを入れたから、ちょいリッチな感じになってるか?


「シロー、余裕があるなら、俺たちの飯とも交換してくれないか?」

「………良かったら頼む。」


 ロレンド盾兄さんさんとトラキオ剣兄さんさんまで…。


 そう言えば、ハラキリの飯はクソマズだと言ってたな。


 俺の飯が口に合うかはともかく、世話になってるパイセンの頼みは断れねぇ。


「ええ、どうぞ。足りなかったらすぐ出来るんで、遠慮なく召し上がって下さい。」

「ありがとう!」

「………良かったら、こっちは俺が作った飯だ。食ってくれ。うちの親父程じゃないが、オレもそれなりに作れるんだ。」

「ご馳走になります!!」


 悟郎さん!剣兄さんの飯だって!ご実家の味かもよ!ミジェルが作った飯も美味そうじゃん!


 今、分け………あああ!!!悟郎さん!待って、ちょ、ちょっと待ってよ!全部食わないでぇ!!


 …………酷いよ!!俺だって食いたかったのにぃ!


 え?美味しかった?………ねえ、悟郎さん。俺、待ってって言ったじゃん!俺も食いたかったんだよ?!


 は?次は甘い物だ?


 …………悟郎さん、貴方とは一度しっかりと、話し合う必要がありそうですね。


 こと、ご飯に関しては俺にだって譲れない気持ちがあるからね!


 項垂れてもダメです!!


 ご、ごめん寝をしたって、許さないんだからね!!


「ニャゥゥニャッ(ごめんなさい)……。」

「……くっ!狡いよ!悟郎さんは!どこでそんな手管を覚えて来たんだよ!…………もういいよ!ジャムパンタワー(イメージ)を入れれば良いんだろ!持ってけこの泥棒猫!」

「ニャッニャゥ(やったー)!!!」


 クソ!もう俺の完敗だよ……………君に乾杯だ!!


「……さっきから、シローはゴローと何をやってるんっすか?」

「主と従魔の間で色々とあるんじゃないかしら〜?」

「でも、見た感じシローが負けたよね?」

「シローさん!頑張って!!良く分かんないけど、負けないで!!シローさん教えてくれたじゃないか!奇跡は諦めない奴にしか降りて来ないって!!」


 ギネス君ごめんよ…。それ、俺イチオシのワ○ピ名言なんだ…。


 見た時思ったんだ……こいつ、オカマだけどおとこだって…!


 良かったら、安西○生のセリフと一緒にこの異世界でも語り継いで欲しい…。孤児院の子供たちに、そう伝えてくれ…!


 みんなのエール(?)を聞きながら、悟郎さんリクエストのスイーツを薄っすら涙を溜めながら作る。


 零れて無いから泣いた事にはカウントされない!


 作り置きのクッキーを砕いて、水で溶いたモウニュウコを温めて混ぜ合わせる。


 縁の少し上がった皿に、さっきの生地を伸ばして型を作る。そして時短の為、魔法で水分を抜く。


 モンバレイノ西洋梨シュカエンタぶどうの皮を剝いて、ケイラーワイルドベリーと一緒に食べ易いサイズにカットしておく。


 鍋に砂糖をドバっと入れ、火に掛けて軽くキャラメリゼし、カットしたフルーツを入れて粗熱を取る。


 水で溶いたモウニュウコ、チーズ、レモン汁、砂糖少々を火に掛けて、しっかり混ぜ合わせてから、馬鈴薯粉で少し固めにトロミを付ける。


 皿から外したクッキー型の中に、冷ましたクリームチーズ風のクリームを敷き、その上にキャラメリゼしたフルーツをのせる。


 はい!なんちゃってレアチーズフルーツタルトだ!


 ワンピースと言わずワンホール召し上がれ!


 さあ、悟郎さん!これで文句は無いだろ?思う存分にどうぞ!


 え?は、ハチミツを掛けろ?


 …これ、既に結構甘いけど……はい、掛けます。


「皆さんも、良かったら甘い物をどうぞ。」

「…ありがとう。シロー大丈夫か?何か涙目だぞ?」

「………それでも、これだけの物を作るか。自信を持て、凄い事だぞ(料理だけど)。」


 お二人にも心配を掛けてしまった……。


 悟郎さんには勝てそうもないけど、諦めたらそこで…(以下略)。


「シロー!これ凄く美味しいっす!」

「ほんと〜!フルーツがふんだんに乗って豪華だし、食べた事ないわ〜!」

「シロー!あたしも丸ごと食べてみたい!!」

「……シローさん、ありがとう!ゴローさんに負けてもシローさんは諦めなかったんだね!これ、とっても美味しいよ!」


 ギネス君、それ意味分かんないよ……。


 でも、俺の負けは確定なんだね…?


 可笑しいな?さっきまで、初めてのキャンプで楽しかったのに…。


 ちょっとはしゃいで、脳内がフィーバーしちゃったのかな?


 ……でもフィーバーなんてするのは、駅前のパチ屋か土曜の夜だけだよな。あれ?今日は土曜日だっけ?


 俺、きっと思いの外、疲れてたんだ。


 もう、寝よう。


 おやすみグッドナイト…。


 ピーナッツじゃないよ、ベイビー。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





フィーバータイム終了です。

次回からは通常通りに戻ります。

お付合い頂きありがとうございます。m(_ _)m

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