双剣の魔術師(仮)

夕日ゆうや

ソルとルナ

 世界は混沌で満ちている。

 支配される者、支配する者。

 エルフ、獣人、ドワーフ、神、死神、天使。様々な種族が敵対し、戦いあっている。

 この世界に平和はない。

 穏健派と過激派が溝を作り、亜人種同士がお互いを軽蔑し、支配者は民草を道具として扱う。

 新王歴二百九年。

 一匹のドラゴンが世界の覇者となり、脅威をふるっていた。

 そこに双子のソルとルナが双剣を構え、向かい合っている。

 ソルは太陽のように明るい子。

 ルナは月のように静かな子。

「やるよ。ソル」

「うん。ルナ、準備はいい?」

 のちに、双剣の魔術師と呼ばれる二人は《トリックスター》として活躍している。

 いたずら者の意味を持つトリックスターだが、他の者からしてみればそんなものなのかもしれない。

 強化魔法により身体を強化された、ソルがドラゴンに剣を振り下ろす。

 翼を切りおとされたドラゴンが地面に落下していく。傷口から青い血しぶきを上げ、咆哮するドラゴン。

 そのタイミングに合わせてルナが光りの刃で頭を切り裂く。

 身体がビクビクと痙攣し、ドクドクと流れる血しぶき。

 彼女らにとっては簡単なお仕事だった。

「このドラゴン、よわーい!」

 ソルがからからと笑みを浮かべている。

「いや。子どものドラゴンくらいで喜ばないで」

 ルナは冷静沈着な判断をくだす。

 それに彼女らはかなり強く、世界を、未来を切り開こうとしている。

 そんな彼女らを呼びつける王様がいた。

 彼はソルとルナをどうにかして味方にしようとしている。

 部下が徹夜で仕上げた書類に目を通す王。

「この混沌の世界を変える力……。彼女らに託そう。〝双剣の魔術師〟」

 王は新たな名をつけ、二人を送り出すと決めたのだ。

 ――この混沌の世界を切り開くために。

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双剣の魔術師(仮) 夕日ゆうや @PT03wing

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