第12話 恐怖

 大量のゴブリンを倒し、一休憩していると、集落の奥から人型の影が近づいてくる。まだゴブリンの生き残りがいたのか。そう思っていると、近づいてくる影は徐々に大きくなってくる。待って、なんか大きくない?

「ユートさん!それはゴブリンキングです!」

 ゴブリンキングか、今戦ったゴブリンの上位版だとしても、この回復があればいけるんじゃないか?この考えは全く持って間違っていたことを痛感する。

 気が付けばキングゴブリンはだいぶ近づいてきていた。さすがに結構大きさがあり、少し驚きながら短剣を構える。しかし、短剣を持つ腕がない。

「えっ」

 驚きが一瞬あったが、次の瞬間には激痛がはしる。あまりの痛みに気が付けば倒れていた。やばい、やばい、やばい。これまで感じたことがないほどの恐怖がそこにはある。

「パーフェクトヒール!」

 彼女の魔法詠唱が聞こえる。すると、痛みは完全に消え、腕が治っている。これなら、とりあえず逃げることはできる。痛みがなくなったことで思考がクリアとなり、逃げる選択肢を考える余裕が生まれる。

「逃げましょう!」

 ゴブリンキングに対して背を向け、全力で走れ出す。しかし、一向に足音が離れる様子はなく、これでは撒くことは難しいだろう。走りながらなんとか勝てる方法を考えなくてはいけないということか。

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