第3話 最近買った枕の話

 

 散財は、人間の生活を豊かにするのか。

 それは、私にもわからない。

 皆さん、どうも、散財、してますか?

 私はとっくにしてしまって、すっからかんという状態だ。

 

「すっからかんになるまで、何買ったんだ」

 

 と思われた方もいるだろう。

 答えとしては、今月(2023/02)はそこまで大きな買い物はしていない。

 

 ただ、ふところにトドメを刺した買い物はある。

 

 そう、それは枕。

 この散財エッセイを書くキッカケで、

 色んな人から使用感を聞かれている

 オーダーメイド枕のことである。

 

 さて、ここでオーダーメイド枕と書くと、形や生地、素材なども自分で全部決められるのかと思われるかもしれない。

 

 残念なことに、オーダーメイドと書いてはいるが、正しく言えば中材は選べるサイズオーダーまたはセミオーダーだと思ってほしい。

 

 だが、逆にある程度決まってる方がやりやすいと、私は思う。自由すぎると何が正解だかわからなくなるものだ。

 

 さて、ここからは実際に私が買ったときの話と、使ってるところまでだらだらと書いていく。

 

 まず、私が枕を買おうと思ったきっかけは、

 使っていた枕が座布団より薄くなったからだ。

 比喩的表現ではない。実際に家にある座布団と比べた結果、座布団のが厚かったのだ。

 

 その時、私は悟った。

 

 こりゃ、朝起きたら首が痛いわけだと。

 

 枕買い替えないといけない。

 そう、買い替えだな。ふむふむ。

 

 散財チャァァンス!

 

 そういう気持ちで、次の枕を探し始めたのだ。

 ここで、枕を探すということで壁にぶち当たる。

 

 まず通販サイトで評判を見たところで、何も判断できないことに気づいた。

 低反発枕で成功したことがない。

 綿枕も頭の重みからすぐ潰れる。

 少し高めの整体師御用達系枕にしたら、一年で座布団以下のペラペラになってしまった。

 

 では、ユーチューブでアフィってるやつを試すか? 試せる店で寝てみたが、なんかしっくりこない。

 

 散財だぁ! って言ってるくせに、慎重すぎないか? って思った方。

 私は散財も好きだが、散財する過程も楽しむ大人なのだ。いいもの選ぶために悩みに悩んでストレス溜めて、脳汁ドバドバになるような金額を出したいのだ。

 

 私は、立派なネズミ、ちゅーっ。

 ※何言ってんだこいつ、と思った方は一話目を読んでくれ。

 

 そんな感じに悩みに悩んでいた先週。

 ネイルを替えるために、ネイルサロン近くの近所の商店街を歩いていた。

 時間を間違えて早めに出てしまったため、やることがなくブラブラ歩いていた私は、一つの店が目についた。

 

「オーダーメイド枕専門店」

 

 まさに、天啓だった。

 

「オーダーメイド枕なら、少なくとも頭にあったものが作れるのでは」と。

 

 実は十年近く前にセミオーダーメイドな枕を8000円くらいで作ったことがある。それは、値段の割にはあまり良くなく、その作った店も調整無料期間が終わる前にすぐに潰れてしまった経験があった。

 その経験から、今回オーダーメイドを考えてはあまりいなかった。

 

 でも、これはかなりしっかりしてそうだ。

 もあるかもしれない。

 

 見せ前の看板に書かれた値段表を見る。

 おや、一番安くて1万円。高くても約4万くらいか。

 

 いけるな(なお、この時残高4万円)

 

 そんな私は、そのまま突入してみた。

 

 すると、中にいた店員のおばちゃんに声を掛けられた。

 

「お客様、ご予約されてますか」

「すみません、外の見て、どんなんやろと思って入りました」

 

 予約制だったか、やってしまった。

 買い物初心者プレイをして引き攣った笑顔の私に、店員さんは優しかった。

 

「あ、大丈夫ですよ、今から1時間なら予約お取りしますね!」

 

 散財チャァァンス(with幸運)

 

 なんとまあ、運良く時間まで潰せる。私は手指消毒をして、枕の調整を始めた。まずはカウンセリングシートを書く。

 住所、名前、今の枕はどんなのか、体には何か辛い場所があるか、寝相は、マットレスは何を使ってるか。

 

 今の枕は低反発枕(座布団以下)

 辛い場所、腰痛、肩こり、首、頭痛、膝痛、不眠気味

 寝相は横寝

 マットレスは床直置きのぶ厚めマットレス(尚もう終わりかけてる)

 

 そんなふうに丸をつけていくと、ふとカウンセリングシートの上を見る。そして、私は驚く。

 

 ここ、寝具の大手じゃん。

 

 そう、そのオーダーメイド枕専門店は、有名な寝具メーカーが運営しており、枕の寝心地測定する際に寝るベッドマットレスもそのメーカーのものだった。

 この時は腰を掛けていたマットレスの座り心地は、とてもふわふわで柔らかい。逆に柔らかすぎて、腰掛けるには不安定で向いてないような感じだった。

 

 値段は15万。うーん、3ヶ月貯金せねば買えない金額。きっちぃ。そんなこと思いながら、店員さんに書いたカウンセリングシートを渡す。

 

 店員さんはそのカウンセリングシートを見た後、軽く枕が睡眠にどれくらい大事かという話をし始める。

 

「睡眠において大事なのは、約80%がマットレス、約8%が枕と言われております」

 

 残り12%はその他ってことか。結構割合でかいな枕。そして、マットレス。

 

「では、ここに寝てくださぁい」

 

 店員さんに言われて、その柔らかすぎる布団に寝転がった。

 

 ん? あれ?

 

「ふふっ、意外と硬いでしょ」

 

 そう、言われた通り、端に座った時は柔らかかったのに、寝転がるとしっかり体を支えてるのがわかる。なによりも、こう全ての辛さから開放される感じ。

 えっ、15万円、しゅごい、びくんびくん。

 

「は、はい」

 

 驚きのあまり目を見開く私、店員さんは和やかに笑っている。

 

「お家にあるマットレスは、このベッドより硬いですか? やわらかいですか?」

「か、少し固いです」

「そうですか、ではそれも考慮して調整しますね」

 

 そこも加味できるの強すぎない。

 

 そんなこんなで、店員さんは私に一覧表を手渡し、それを見ながら決めていくとのことだ。

 

 1万円から4万円まで、大体1万区切りに4種類のグレードが用意されており、そのグレードによって素材や、アフターサービスに差があるとのこと。

 

 まず、素材はそれぞれ別のものが用意されており、一部共通するものもあるが、調整パーツの数が地味に違う、そして、高い2つは3層構造になっている。

 

 下から2つのグレードはアフターサービス一年間無料、上から2つのグレードはアフターサービス永年無料という違いもある。

 

 ただ、私は思う。

 

 もし、合うやつなかったらどうしようと。

 てか、どれがいいのかわからないから、最初はどれを選ぶべきかと。

 

 迷っていた私に、まず最初は店員さんおすすめの低反発素材のものを試そうと提案してくれた。

 早速試した低反発素材、それはまるでふわふわシフォンケーキのような柔らかさ。

 

「うーーん」

 

 しかし、私には正直心もとなかった。

 次は、粒綿を試す。

 

「やわらかくて、寝心地はいいけど」

 

 これまた、何かが違う。心許ないのだ。

 

 ていうか、枕が簡単に潰れる頭の重さなのに、こんな柔い素材で寝ようとしてるのが間違いなのだ。

 

「じゃあ、こういうパイプ系試してみますか」

 

 そういって、いくつかパイプ系を試す。5種類試したが、それぞれ個性があるものの、しっくりこない。素敵だが、なんかこれじゃない感。

 

「では、二番目に硬めのこれ行きますか」

 

 そう言って、定員さんが持ってきたのは。

 

「蕎麦殻パイプです」

 

 蕎麦殻の感触に似せたプラスチック製パイプの枕だ。

 

 頭を乗せる。

 

「あっ」

 

 これだこれ。めちゃくちゃこれ。頭の重みに負けず、痛みはなく、なによりも辛い首を支えてくれる。

 

 え、しゅごい、枕しゅごい。

 

「枕いかがですか」

「これめちゃくちゃいいです、これで」

 

 目が開くほど良かったその枕。私の中材は決まったも同然だ。一応試してないのも試したが、これが一番しっかりと首を支えてくれた。

 

 さてその後は高さ調整だ。

 寝ながら枕の高さ出し用を使い、最適な高さを見る。

 知っていたか、寝てるときに仰向けの正しい視線は、自然と自分の臍上の天井を見るくらいがいいんだ。それより、上でも下でもだめだそうだ。

 

 また、寝返りしやすさというのも重要。

 

 横寝で楽な高さは寝返りが出来なくなる高さになってしまう。なので、横は寝返りが出来る&横寝でもいい感じにする必要があった。

 

 そこまで測った後、次はどの値段の枕にするかが待っていた。

 

 そう、私の選んだ素材は2万円でも3万円でも用意されていた。

 差額は1万もある。

 

 一旦安いの高いのを試す。

 

「一年間無料だと、ニ年目以降はパーツごとの調整で330円かかります」

 

 この時、ふと思い出す。

 枕はへたりやすいのもあるが、体重やマットレスの凹み具合でもベストな高さが変わる。

 何度もちゃんと直せば、1万円くらい回収できるのでは?

 

 考えて、覚悟を決める。

 

「3万円でお願い致します」

 

 脳汁が出た瞬間だった。散財しゅきぃ。

 

 さて、こういう高額商品を買う時に、人間はどういう心理が働くのだろうか。

 それは、「高いものは良いものである」という人間の考えである。実際に値段から内容物が本当に良いかは分かる訳がない。

 けれど、こんなにも高いならいいものだと思ってしまう。

 こういう効果を「ヴェブレン効果」という。

 

 また、商品の価格設定でよく使われてるもので、心理的価格設定と言われてるものがある。

 その中に、

 ・名声価格(ブランド名や特別なサービスをつけてブランディングを図り高く売る)

 ・段階価格(グレードをつけて値段を振り分け真ん中を買わせる)というものがある。

 ※他にも沢山あるが今回は割愛

 

 では、今回買ったこの枕を上記に当てはめてみよう。

 この枕は、

「大手の寝具メーカー」が「オーダーメイドや調整無料などの独自のブランディング」をした枕を「グレード別に中身も買えたものを4種類」を売っているので、今回は「下から3番目の価格帯」の枕を買った。

 購入理由としては、二番目の枕か三番目の枕かになった時に「高い分高いほうがサービスも付いてるし、少し大きめで寝やすいだろうと期待した」からだ。

 

 名声価格に当てはまる箇所

 ・大手の寝具メーカー

 ・オーダーメイドや調整無料などの独自のブランディング

 

 段階価格に当てはまる箇所

 ・グレード別に中身も買えたものを4種類出して

 ・下から3番目の価格

 

 ヴェブレン効果の箇所

 ・高い分高いほうがサービスも付いてるし、少し大きめで寝やすいだろうと期待した

 

 そうこの枕の購入に、人間の消費的な心理をめちゃめちゃついてきてるのだ。

 

 

 とまぁ、なんとも上手いことをやられて買った枕。

 

 実際の使いの心地はというと、最高である。

 ヴェブレン効果あるかもしれないが、はっきり言って寝付きは良くなった。

 あと、親いわく呼吸音の改善(辛うじてのオブラート)もされたとのことだ。ここは私じゃわからないので。

 

 そう、その中でも顕著な変化は、

 朝起きて首が痛いというのもなくなった。

 そう、朝起きて痛くない。それだけでQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上がる。

 枕しゅごい。

 

 肩こりも少しずつ改善してる気もする。

 

「ヴェブレン効果」ではない! 痛みあるなしは信じてくれ!

 

 さて、そんな私ではあるが、書きながら目下問題が一つ生じていることに気づく。

 

「枕買ったときに、財布のチャック壊れたんだよね」

 

 私のふところをぶち抜いた枕、なんと財布のチャックまでぶち抜いた。

 チャックが閉まらない。

 

「財布買わなきゃだなあ」

 

 散財の悩みは尽きることがない。

 来月は財布を買おう。

 

 散財チャァァンス!

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