第305話
「過去に死んだ敗残兵の成れの果てトそんな脆弱な敗残兵の親玉ゴトキにナニができる。偉大なる第6狂戮の魔王様にお仕えする公爵である私が全て容易く叩き潰シテやる」
巨腕の悪魔がその腕を振り上げてレインへ向かって突進する。脚に込めた力を一気に解放した事で地面は大きく削れる。その巨大な図体からは予想ができない速度で移動した為、レインの反応は遅れてしまう。
ズドンッ――と巨腕の悪魔が腕を振り下ろし、レインが立っていた大地ごと押し潰した。その一撃の衝撃だけで周囲を走っていた悪魔たちの身体が宙に浮く。
「ふはハハハ!簡単に押し潰レおったワ!力を得たといっても所詮は下等な人間ダ。兵士たちよ……進軍を続ケヨ!!」
「お前……何言ってるのか分かりづらいし、何よりうるさい!あとなんか変な匂いすんだよ!」
巨腕の悪魔の手元から声が響く。
「ナニ?!」
その声に巨腕の悪魔は驚愕する。確実に殺したと思ったレインは剣一本でその一撃を完全に受け止めていたた。しかしその一撃は確かに強いものでレインが立っていた地面の方が耐えられず大きな亀裂が出来ていた。
「下等な人間如キが私の一撃を受け止メタだと?!」
「もう一回言うが、その話し方も聞き取りづらいんだよ!ちゃんと話せ!!」
レインは剣を振り上げ、巨腕の悪魔の腕を両断する。切れ味だけが自慢の剣だ。これくらいの悪魔の腕なら簡単に切断できる。これでこの悪魔は最大の武器を失った。
「ぎゃあああッ!!腕が!私の腕がぁ!!」
「だからうるせえ!!」
そのままレインは悪魔の頭を斬り飛ばし、もう片方の手に持った剣で残っていたもう片方の腕も斬り落とした。さらに着地と同時にその巨大な身体に剣を数回突き刺した後、全力でその身体を蹴り飛ばした。
悪魔には心臓が何個もあるっていうタイプもいる。殺したと思っても意外と生きていて再生してきたりする。だから他の者より多少強い個体に関しては大袈裟なくらいに切り刻まないといけない。自分で公爵だと名乗っていたから尚更念入りに斬り殺さないといけない。
「よし……死んだな。〈傀儡〉……さっさと戦列に加われ」
新たに手に入れた傀儡の兵士は生前の見た目と大きく変化がない。巨大な腕を持つ漆黒の悪魔だ。その巨腕の悪魔はすぐに他の傀儡たちと同じように悪魔を叩き潰し始めた。
「よし……次は……」
レインは次に向かう方向を決める。周囲を走る弱い悪魔は防壁に配置された覚醒者でも対処が可能だ。わざわざレインが出る必要はない。より強く対処が難しい悪魔がいる所を目指さなければならない。
"我が王よ"
「うぉいッ!!!」
そんな時、突然頭の中に響いたアスティアの声にレインは大声をあげてビビり散らかす。今、攻撃を受けたら直撃するくらいに身体が硬直した。
頭の中に声をかける時は前もって言ってくれと言いたいが、レインはその前もっての声かけにすら驚くからほぼ意味がない。
「…………ってアスティアか、どうした?」
"今ここにいる傀儡の兵士たちだけでは左右に広がった悪魔まで手が回らなくなって来ております。
既に防壁まで到達している悪魔の一団もおり、覚醒者との戦闘状態に突入しています。負傷する者も出てきておりこのままではいずれ突破される可能性も……"
「マジか……結構倒してるからまだまだ余裕なんだよ思ってた」
事実レインの周囲には数百以上の悪魔の死体が積み上がっている。今もレインの近くにいる傀儡は自身に向かってくる悪魔たちを容赦なく惨殺している。
"敵は作戦を変えた模様です。圧倒的な強者である我が王を回避し人類への攻撃を優先したようです。
敵は悪魔でありながらある程度の統率が取れております。故にこちらの弱い部分を的確に狙ってきており、普通の悪魔を相手にするより数段厄介です"
「て、言われても……どうするんだ?ここで死んでる悪魔を傀儡に加えてもあまり意味がないだろ?」
傀儡はレインの魔力が尽きない限り永遠に再生する。しかしレインの魔力が永遠ではない為、いつかは限界が来る。だからまだ余力のある現在でも節約を心掛けないといけない。
傀儡は生前の強さをほとんど継承し、傀儡となったからといって劇的に強くなるなんて事は起きない。同じ強さの傀儡を大量に創り出した所で殺し合いになる。そうなると無駄な魔力を消費する事になる。
だからレインはある程度の強さを持つモンスターしか傀儡にしない。選別しながら戦っていたせいで戦力の補充がうまく出来ていない。
"仰る通りです。我が王よ……その地点は『紅焔の神覚者』に任せ、さらに強者の気配が感じられる最前線……黒の
「…………なるほど?」
"ぐ…こう?愚考って何だ?"
「まあいいや。そうしようか……だけど俺がここを離れたら阿頼耶の方に悪魔が流れる。お前が責任を持って援護しろよ」
「ご主人様!」
「うぉいっ!!阿頼耶?!何でここに?もっと後方にいただろ?」
突然後ろに現れた阿頼耶にレインはまた叫ぶ。会話に夢中になってもモンスターの襲撃には気付ける。ただ敵意が全くない人が相手だと流石に難しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます