第12話
「……さてこれはどうしようか」
"放置はやめてね?一応私たちの家なわけだし?こんなの置いてたら臭いがヤバいよ。傀儡にしてもこれはここに残るからね!"
「…………うーん…本当にどうしよう」
その時、肩から阿頼耶が少しだけ出てきてレインの頬をつついた。
「どうした?」
阿頼耶は覚醒者たちの亡骸とレインの顔を交互に見る。と言っても目はないからキョロキョロしてるように見えるだけだ。
「もしかして……食べたいのか?」
阿頼耶はうんうんと首?を縦に振った。食べる……というか取り込むのかな?
「じゃあスキルを使った後ならいいよ。少し待ってくれな?」
阿頼耶は分かった!と言わんばかりにスリスリしてくる。
レインは手をかざしてスキル『傀儡』を使う。これに関しては使うのは初めてだ。
スキルに関しては口に出す事なく使えるようにはなっている。『傀儡』を使おうとすると亡骸から黒い煙が立ち昇る。
多分これが傀儡にする事が出来ますよっている印だと思う。
"全て傀儡にする"
――ズズズズッ!!
「うわっ!キモっ!」
"おい!私のスキルをキモいとか言うな!"
覚醒者の亡骸から真っ黒な鎧を来た者たちが這い出るように出てきた。全員がフルプレートメイルを着用している。生きてた頃に装備していた物は全然違う。
――『傀儡の兵士 剣士』を15体獲得しました――
「アルティ……なんか違うような気がする」
"あーそれは今のレインの強さと元の素材の強さと何が得意だったかで装備が変わるんだよ。全員が鎧と剣だから……まあそんなもんなんじゃない?剣士なんて雑兵みたいなもんだしね。数揃えてたら良い感じになるんじゃない?"
適当だなぁ。……まあいいや。Dランクの兵士が15人手に入ったみたいなもんだしな。
『傀儡の兵士』はそれ専用の収納場所があるから召喚解除で消える。
とりあえずこんなのを引き連れて歩くわけにもいかないから収納しておく。
そして阿頼耶は自分の一部を分裂させて覚醒者たちの亡骸への近付いていく。
阿頼耶は身体を大きく広げで亡骸の上へ被さるように乗った。そして徐々に小さくなっていって1人を完全に取り込んだ。それを15回繰り返した。
そして……。
「ご主人様……こうして直接意思をお伝えできるようになった事……私にとって至上の喜びでございます。何なりと私にご命令下さい」
レインの目の前にはアルティと同じ黒髪を持つ全裸の女性が跪いていた。
「……誰?!」
"……誰?!"
「誰……とはまたおかしな事を仰いますね。私は『阿頼耶』。貴方様の剣となり盾となる存在でございます」
「…………阿頼耶?何で?人の姿に?」
駄目だ。疑問が多すぎで考えもまとまらない。
「私はご主人様とずっとお話ししたいと思っておりました。しかしその為の身体がなかったのです。こうして会話が出来るようになったのはあの者たちを取り込み、言語と知識と声を手に入れましたからです」
「……そうなのか。それで……その姿は?俺が殺したのは覚醒者だけだが?」
「この姿と声は魔王アルティを参考に致しました。ご主人様にとってもこの方がよろしいかと思いまして……」
"様をつけろ!様を!!"
「アルティが様をつけろって怒ってるよ」
「私のご主人様は今までもこれからもレイン様だけです。それ以外の者は有象無象です」
……やっぱりこれってレインが選ばれてるって事だよな。……でも魔神の武器だったって言ってなかった?
「……あれ?魔神は?」
「あの時、私はあれが持つスキルによって無理やり従わされておりました。私が主人と認めるのはレイン様だけです」
「そうか……とりあえず服着てもらえる?」
「かしこまりました」
阿頼耶は自分の一部を使って服……というか鎧を作った。黒を基調にした鎧だ。アルティを参考にしているだけあって綺麗な顔立ちだな。髪が肩までの長さなのは違いを持たせるためか?
「その姿で出来る事って何かある?」
「基本的な戦闘は可能です。レイン様と共に戦える事、大変喜ばしく思います。さらにこの身体の特性上、物理攻撃に対してはそれなりの耐性を有しております。
スキルに関しては『回復』スキルを持っております。レイン様が怪我をされた時、お亡くなりになっていなければ回復させる事が出来ます」
"回復スキル持ちだったのか。これはかなり稀少だよ!良い収穫じゃん!"
「そうなのか?……じゃあ俺が持ってるこの武器はどうなんの?」
「それも今まで通りで問題ございません。この分裂もスキルによるものですから。ただ現状は私の方に多くの力を割いておりますので弱体化している部分もあります。お望みであれば元の姿に戻ります」
「そうするともう戻れないのか?会話も出来ないのか?」
「いえすぐにこの姿にもなれます。会話が可能なのはこの姿だけです」
「なら大丈夫。とりあえずはその姿のままで頼むよ……まあこれからもよろしく頼む」
「誠心誠意お仕え致します」
◇◇◇
そこからレインは阿頼耶を連れて外へと向かう。迷うかもと思ったがそんな事はなかった。
とても懐かしく思う光を目の前する。あの時、転げ落ちた急な坂を容易く登る。
「ああ……眩しいな」
外は夜明けくらいだった。ここに来たのが夕方の時間だったから……10時間くらい経過していた。と言う事は外の1時間があそこでは1年くらいか。
「……帰るか」
こうして10年間死に物狂いで鍛えレインは現実の世界へ戻ってきた。
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