第10話
◇◇◇
「レインー、一旦ここまでにして少し休もうか」
3年経ってたのを知ってからまた日数が経過した。相変わらず一撃も与えられなかった。最近は筋トレの回数は減らしている。それよりも武器を使ってた方が有意義だと判断した。
「了解……はぁ…今回は少し疲れたな」
「何時間もぶっ通しだったからね」
レインの疲れた――という言葉に反応したんだろう。『
その時だった……自分を中心に少し強い揺れが起きた。その揺れで自分がふらつくくらいの大きさだ。
「お?……なんだ今の?」
「あー魔力が回復したね。3年半もかかったね」
「あんまり変わってない気がする……けど」
――ピコンッ!
なんか頭の中に甲高い音が響くのと同時に視界に変な文字が浮かび上がる。
――スキル『次元収納Lv.Max』を獲得しました――
――スキル『強化Lv.1』を獲得しました――
「なんかスキル覚えたな。……存在忘れてたよ」
「お!いいじゃん!収納と強化でしょ?」
「よく分かったね」
「設定したの私だしね。ほぼ忘れてたけど」
「……おい」
「それじゃあ使い方教えようか。あと7年くらいかな。頑張ろうね」
「改めてよろしく」
◇◇◇
そこから『次元収納』のスキルを学ぶ。思ったより簡単だった。
目の前にポケットがあるみたいなものだ。そこに入れたら視界の中に収納しているものが浮かび上がる。それを指で触れてもいいし、目で指示するように選ぶ事もできる。
あとは取り出し方を何となく決めて取り出して終わりだ。武器を出すときに刃から取り出したら危ないしな。
刃を相手に向けて全力で射出する事も出来るけど拾いに行くのがものすごく面倒という事なのでやめた。
『次元収納』は数日で良い感じに覚えた。次は問題の『強化』だ。これは本当に難しい。
まずどこを、どれだけ、どのくらいの時間を想像して使わないといけない。
脚だけ強化しても上半身がついてこないと腰から折れる。腕だけ強化しても殴ろうとしても肩とかもちゃんと含めないと脱臼する。
全身を隈なく強化すると全ての行動で暴風が起きて周辺が破壊させる。アルティと俺が休む家の屋根を傷付けた時は本気で殴られた。
それに視覚も強化すると見え過ぎて吐きそうになる。耳も強化すると小さな音でも間近に聴こえて鼓膜が破壊されるかと思った。
ふざけて叫んだアルティをぶっ飛ばそうと思ったが返り討ちにされた。なんとも悔しい。
『支配』も忘れずに地面の形を変えて武器とするとか風を使って速度を上げるとかをやりながら『強化』を使って立ち回る。がレインの使う『支配』では出来なかった。
本当に難しいが出来ることが増えるのは本当に楽しかった。全てを否定されて何も認められなかったレインがここまで出来る様になった。
◇◇◇
「アルティ!!今日こそは一撃を入れてやる!覚悟しろ!」
もう何度繰り返したか分からない台詞を叫びアルティへ斬りかかる。もう『阿頼耶』に声をかける必要もない。心で念じればその形になる。
もう何年も一緒にいるから連携もかなり取れるようになった。
「……くッ!鬱陶しい攻撃ばっかりだね!」
アルティの『支配』?による風や大地の攻撃は『魔色視』で察知して、レインは回避する。アルティが使う武器の手数も『阿頼耶』で防ぐ。力の強さは『強化』を使い分けて対応する。
後先考えない全力の猛攻でアルティを追い詰める。まだ一撃も傷を負わせていない。惜しいという場面は何度もあった。
だが一撃を与える……それが途方もない程の高い壁だった。
"今度こそ!今度こそ!俺が勝つ!!"
「今回はなかなかだね!でもまだ私には届かないよ!!」
アルティは手放した武器を『支配』で浮遊させコントロールする。初めて見る戦い方だ。
「私の戦い方はこんな感じなんだよね。これを引き出しただけでも凄いと思うよ。誇っていい」
アルティは2本の剣を持ちながら浮遊する槍や剣や斧で攻撃してくる。
この数はまずい!『阿頼耶』の分裂を以ってしても対応出来ない。そしてこれを攻略するのは不可能だと直感で理解してしまった。
多分、その時は無意識だったんだと思う。レインは魔力というものちゃんと使えていない。
スキルを使う時は基本的に魔力を消費する。でも今までスキルも当然ないし、魔力もなかった。だからスキルで出来ることを何となくやってただけだ。
魔力を放出する……という事は出来なかった。ただの無駄遣いだしやる必要もない。
魔力自体を感知するのは誰だって出来る。というか覚醒者になる条件が魔力を見るというものだから。他の覚醒者たちを威圧する事は出来るかもしれない程度だ。
しかしレインはこの時、何かしようと行動しようとした。その際に全身から魔力を一気に放出した。レインの魔力総量は途轍もないからこんな事でどうにかなる程じゃない。
「…………『阿頼耶』?」
レインが放出した黒い魔力を『阿頼耶』が吸収している。ものすごい速度で吸い込んでいるように見える。
「レイン!何してるの?!」
「いや……俺に言われても……」
その光景を見たアルティは俺への猛攻をやめた。この時は右手に剣と左手にナイフを持ってた。
そこから普段のスライムみたいな形になったが……。
「なんか……デカくね?」
「うん……デカいね。何これ?」
肩に乗れるくらいの大きさだった『阿頼耶』はレインより少し小さいくらいになった。ほぼ10倍?いや20倍くらいか?
「もしかして『阿頼耶』って魔力を食って成長するのか?」
「多分……そうなのかな?レインはそれを魔神よりも使いこなしてるから分からないよ。というか大きくなった事は分裂の数も増えるよね?これはもういよいよ手が付けられなくなりそうだよ」
「そんなに凄いのか!……『阿頼耶』ー!凄いぞー!」
レインは近くにいた阿頼耶を撫でた。阿頼耶は嬉しそうに身体をプルプルと震わせてレインに飛び乗った。
普通に死ぬかと思った。
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