第7話 本の話
まだ暖かいお風呂から出た恋は
髪 濡れた髪を拭きながら客室に向かう
客室では暁都が布団を敷くために端に寄せた机の上で何やら本を読んでいるようだった
「許嫁殿、風呂は冷めていなかったか?」
と恋が風呂を上がったことに気がついて声をかける暁都
「はい、ちょうど良かったです」
「そうか」
と本を閉じた
「あの、何を読んでいらっしゃったのかお聞きしても?」
「あぁ、なに、大したものではないが詩集のようなものだ」
「詩集ですか?」
「あぁ、昔、俺がまだ雑念が多くて若かりし頃に少しでもそれが減る様にと上司に勧められてな。それ以来癖で肌身離さずもっているのだ」
とボロボロになった本をそっと撫でる暁都
「とても大切なものなのですね」
恋は暁都の表情からそう口にした
「あぁ…許嫁殿も読んで見るか?」
と興味津々だった恋を見透かしてそう問いかける
「へ?いえ!そんな、大切な本を私が読んで良いものでわ!…」
「構わんさ、君ならば。だが、そうだな…その代わりと言ってはなんだが許嫁殿が今朝話していたロマンス小説を読ませてはくれないだろうか?」
「ふぇ?あの小説をですか??」
「あぁ、君が面白いとするものだ知っていて損はない」
「わ、分かりました!お部屋からとってきますね!」
と部屋へと本を取りに行く恋だった。
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不意に始まったお互いのお気に入りの本を読み合う時間
本を捲る音と風が建物を揺らす音が部屋に響く
恋は暁都から借りた詩集を
暁都は恋から借りたロマンス小説を
隣り合わせで読み耽る
お互い本を読み終えるころには時計は22時を回っていた。
恋が恐れていた風の音もいつのまにか収まり
パタンッと本を閉じる音が最も大きな音となった空間で
「あぁ…もうこんな時間か…ついつい読み終わってしまったな…」
と、時計を見てつぶやく暁都
「私もです。詩集って筆者の思いを想像したりできてとても面白いですね!」
「それは良かった。」
無邪気に笑う恋に優しそうに答える暁都
「あ、あの伯爵様はいかがでしたか?……その…ロマンス小説」
普段絶対手に取らないであろうロマンス小説を読んだ暁都に恐る恐る尋ねる恋
「あぁ、恋人同士の駆け引きが甘く切なく描かれていてとても面白かった。続きのページが気になる本は良い本だ。」
と恋に答えた
「!よかったぁ…ふふっ」
恋も暁都の感想に安心した様に答えた。
「さて、そろそろ床に入ろう
体が冷えてしまう。」
「そうですね!」
その後布団に入ってからも
お互いに本の感想を話したりおすすめの本について語らいながら眠りにつくのだった。
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