第6話 風の音
「ご馳走になったな。」
食事を平らげた暁都はそう言った
「こちらこそお粗末様でした。」
恋もそれに答えるとお皿を集めてお盆に乗せた。
「私、先にお皿洗いを済ませようと思うので伯爵様は是非お風呂に。お着替えは叔父様のお着物を脱衣所に置いておきます。」
とテキパキと言う
「いや、皿洗いは俺が」
「お風呂沸かしていただいたのでこれ以上は絶対にぜーったいに、お気持ちだけいただきます」
と今度こそは!と言わんばかりに断る恋
「ははっ、ではお言葉に甘えて先に風呂を頂こうか」
恋があまりにも必死なのに思わず笑う暁都
「はい!ごゆっくり!」
そんな暁都にそう声をかけるのだった。
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皿洗いを終えた恋は
叔父である圭一郎の普段あまり着ないが綺麗な浴衣を取り出して脱衣所の目立つところへと置く
風呂の中からは水の音
「っ!」
恋はなんだか恥ずかしくなりすぐさまその場を離れた。
続いて客室の押し入れから客人用の布団を出して綺麗に敷いた。
「暁都様の寝る準備はこれでよし!」
恋はふーっと額を腕で拭う
「私も自分のお部屋にお布団だけ先に敷いておこうかな?」
とそこに ガタンッ!と外から扉を叩く音
思わずビクッと体が飛び跳ねる
ガタッガタッとさらに扉が叩かれる
それと同時にヒューヒューと音が鳴る
風が扉を叩く音だ
いつもなら気にしない音でも人がいない家の中では嫌でも気になってしまう。
「………だ、大丈夫…暁都様もお家の中にいらっしてくれてるんだもの」
と自分に言い聞かせるが怖くて仕方のない恋
無理もない15歳といえど箱入り娘だ
しばらく考えた後
客人用の布団をもう一つ押し入れから出して敷いた。
「……許嫁殿?風呂をいただいた。あと、浴衣も感謝する。」
「は、はい!」
と布団を敷き終わった恋の後ろから風呂上がりの暁都が顔を覗かせる
「あ、あの……えっと」
恋は客室に敷いた二つの布団を見ながらモジモジとする。
「??……」
暁都は不思議そうに恋を見た
するとまた、ガタッガタッと風が扉を叩く音
「っ…!」
恋は肩をびくつかせた。
「…あぁ、成程。」
と暁都は恋が風の音を怖がっていることを察して一言つぶやいた
「ご、ごめんない!お家に泊まっていただいているだけでもありがたいことなのに…怖いから隣で寝たいだなんてご迷惑ですよね…」
と頭を下げて、布団を一つ片付け用とするが
「いや、構わん。誰にでも恐ろしくて仕方ないものがある。
それで許嫁殿が眠れなくなってもいけない。」
「ほ、ほんとですか??ありがとうございます。」
暁都の言葉に深く感謝して頭を下げてる恋
「さて、湯が冷めてしまう前に風呂に入ってきた方がいいだろう」
「はい!いってきます。」
恋はパタパタと風呂場へと向かうのだった。
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