第7話 待ちぼうけ

客室で有明 暁都が風呂から上がるのを待つ皆乃川 恋は座っていてもずっとソワソワとしている。



しばらくソワソワしていると


きちんとした身なりで風呂から上がった暁都が客間にきた。


「すまない、待たせたな」

と乾かしきれなかったであろう少し濡れた髪を軽く束ねながらそう言った


「い、いえ!(……今日はいろんな暁都様がみれている気がする…)いきなり来た私が悪いので」

風呂上がりの暁都をみて思わず目を逸らす恋


「否、本当に何から何まですまない。

先ほどのような醜態を晒したことも。


なかなか会いに行くことができず待たせてしまった挙句に君の方から伯爵邸に尋ねさせてしまったことも含めて。」


と暁都は少し寂しげな表情を見せた。


そんな暁都を気にしてないからと励まそうと頭に浮かぶ限りの言葉を紡ぐ恋


「そ、そんな…!全然待たされてるだなんて思ったことないです!!


それを言うなら私の方が伯爵様を待たせてばかりです。お名前を呼ぶのも結婚だって私がまだ13歳だからできないわけで…

私の方が…たくさん、伯爵様を待たせてしまってますから…」

しかし思い返す自分の不甲斐なさが恋の中にぐるぐると増えていきます気を落とし下を向く


暁都とはそんな恋の手を優しく大きな手で包み込み膝を開き目線を合わせると


「…許嫁殿、そんな顔をするな。

人が何かを成し遂げるのにも、誰かに気を許すのにも時間は必要だ。それが早いだとか遅いだとかは関係ない。…まして君に待たされているなどと感じたことは一度もない。

何時でも笑顔で真っ直ぐな君を見ているのはとても楽しいのでな。」


だから、どうか焦らす一歩一歩歩んでほしい。

そう付け足した


「はいっ………私が伯爵様を励ましたかったのにいつのまにか私の方が伯爵様に励まされちゃいましたね。」


暁都に言われた事を噛み締めながらしっかり返事をしてから眉を下げてそう言う恋


「いや、そんなことはないさ。」



すると話がひと段落した段階で客室の扉がノックされた


「楠木でございます。お茶と恋様からいただいた豆大福と軽食を持ってまいりました。」

と執事の声


「入れ」

暁都の声を合図に楠木はカラカラと台車をおして机まで運ぶ


台車の上には恋の持ってきた豆大福の他に色々な種類の茶葉と軽くつまめる食べ物



「わぁ!お茶の葉がこんなに!」

と思わず歓喜の声を上げる


「えぇ、お茶に詳しいメイドがおりまして食べるものに合わせてお飲みいただくのが良いかと。」

テーブルの上にお茶とお茶菓子を置きながら答える楠木


「こんなに種類があるなんてすごいです!」

目を輝かせる恋


「えぇ、私よりも伯爵様方がお詳しいでしょうから是非恋様にお教えしてはいかがですか?」

と暁都に微笑むと

では私は失礼しますと言い残して客室から楠木は出ていった。


楠木は暁都と恋ができるだけ長い時間お茶を楽しめるようにと準備をしたのだろう


「(楠木め…余計な気遣いをしおって)」

などと思っていてもやはり楠木には頭が上がりそうにないと思う暁都だった。

















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