煽り煽られしてたネトゲ仲間が品行方正な美人先輩だった話

tama

第一章:ゴリさんとの初めてのオフ会

第1話:深夜にネトゲ仲間と煽り合いをしていく

 深夜2時半。 俺こと神木玄人かみき くろとは自分の部屋で奇声を上げていた。


「は、はぁ!? 意味わからんって!!」

『か、か、かっすぅ~ww クロちゃんクソ雑魚過ぎわろたw』

「いや待て待て待てって!! それ絶対にハメだって!!」

『全然違うよー! これは当て投げっていうちゃんとしたテクニックだからさぁ……って、え!? も、もしかしてクロちゃん対応出来ないのー?ww』

「いや無理無理! マジで意味わからんって!!」


 ―― You Lose! ――


『はいアタシの勝ち! 何で負けたか明日までに考えといてくださいww』

「ぐ、ぐぎぎっ……!」


 その日、俺はネットフレンドの“ゴリ林さん”と通話をしながら格ゲーのオンライン対戦をしていた。


 ゲームの対戦結果は、ゴリさんにボコボコにされるという圧倒的な惨敗で終わった。 あまりの悔しさに俺は装着していたヘッドセットの有線部分を噛みつきそうになった。


「いやゴリさん強すぎっしょ! そんなに強いなら先に言ってくださいよ! 何が“アタシ格ゲー弱いからなぁ”ですか! 嘘ですやん!!」

『いやだってクロちゃんがさぁ、“新作の格ゲー速攻で理解しましたわ”って言うからさぁ。 そんなこと言われたらさぁ……アタシにわからしてもらいたくなるじゃん?』

「汚いって! 本当に性根が腐ってますわ! そんなん初心者プレイヤーが普段よく言う戯言ですやん!」


 そんなわけで深夜に俺が奇声を上げて発狂していた理由は、新作の格ゲーでゴリさんに何度もボコボコにされていたからだった。 この恨み……絶対にいつかはらす!


『あははっ! いやぁ、笑った笑ったw』

「笑い過ぎですやんっ!」

『いやでもごめんね、流石に今のはガチで大人げなかったわ。 気を取り直して違うゲームやらん?』

「は、はぁっ!? 何言ってるんすか、勝ち逃げとか絶対に許さないっすよ!」

『お、おぅ……?』

「ってかそんな殊勝な事言うゴリさん気持ち悪いっすわ! いつも通りずっと調子乗っといてください、そしたら俺も心置きなく叩き潰せるんでねっ!」

『き、気持ち悪いってクロちゃん酷くない? これでもアタシ華のJKなんですけど?』

「いやゴリさん残念な話なんすけど、自分の事を華のJKとか言っちゃう女子高生ってあまりいないと思いますよ」

『そんな馬鹿なっ!?』


 ということで今通話をしている相手はゴリ林さん(通称ゴリさん)という女性だ。 今から2年くらい前にトイッターの“#FPSフレンド募集”のタグでフレンドになった人だ。


 ゴリさんとフレンドになってから色々な事があったけど、今ではほぼ毎日通話をしながら何かしらのゲームを一緒にやるような仲になった。 ただし5分に1回のペースでお互いに煽り煽られ、イキりイキられ、罵倒しあうような仲でもあるんだけどさ……


 そんな煽りあう系フレンドのゴリさんだけど、フレンドになった当初は至って普通の真面目そうな女子だった。 勝てば「やった!」と素直に喜び、負けたら「負けちゃった……」と悲しそうにする、本当に普通の女子だった。


 それがいつの間にか勝てば「かっすぅ~w」と煽り、負ければ「殺すぞ」「はいはいクソゲー乙」が口癖で、常にイキリ散らかす煽り系女子になってしまった。 ちなみにこの事を少し前にゴリさんに直接伝えたら「おめぇもだろ、殺すぞタコ」って言われた。


 まぁ口が悪くなるのは対人ゲーをやり続けてる人間の宿命みたいなものだから仕方ないということで。


 それとゴリさんは俺よりも年上なので、ゴリさんと話す時は一応敬語で話すようにしている。 俺は埼玉県に住んでる高校二年なのに対して、ゴリさんは都内に住んでる高校三年の女子との事なので、一応ゴリさんの方が年上なのだ。 まぁ熱くなったら年上年下関係無くお互いに煽り罵倒しあうんだけど。


 あとこれもゴリさんはよく戯言で言ってるんだけど、“私はイケてる都会のピチピチ美人JK(本人談でしかないので信憑性0)”らしい。 まぁネットの世界だから俺は話半分にしか聞いてないけど。


「でもゴリさんってなんでそんなにゲーム上手いんすか? FPSゲーといい格ゲーといい、どんなジャンルでも上手くて羨ましいっすわ」

『いやいや私なんて全然普通だよー。 アタシは逆にクロちゃんの方が凄いと思うけどね』

「え? 何でですか?」

『だってさ、クロちゃんっていつもアタシ相手に色んなゲームでボコボコにされてるのに萎えて辞めちゃうって事ないよね。 今のも逆の立場だったらさ、アタシは台パンしながら通話ブチ切ってるよ』

「あははっ、まぁ俺は最初にボコボコにしてくれた方が逆に燃えるタイプなんでね! だから必ず追いついてみせますよ! そしていつかゴリさんを叩き潰すんで覚悟しといてください!」

『……ぷははっ! やっぱりクロちゃんは良いねぇ、向上心の化物だ! うん、いつでも挑戦待ってるよ。 あ、何ならアタシに勝ったら何かご褒美でもあげようか?』

「えっ!? 何くれるんすか?」

『そうだなぁ……あ、じゃあさ、いつか10先でアタシに勝てたら、ご褒美としてクロちゃんの彼女にでもなってあげようか?』

「んー、チェンジで!」

『おいこら待てタコっ! なんで美人JKであるこのアタシが振られなきゃいけないんだよ』

「うーん、そうっすねぇ……ゴリさんのその性悪な性格が治ったら惚れようか考えますわ」

『ははっ、そりゃ一生無理だねぇ』

「あはは、そりゃそうだ!」


 そう言って俺とゴリさんはお互いに笑いあった。 お互いにいつも煽り散らかしてるわけだけど、でも決して不仲という訳ではなく、むしろ仲はだいぶ良い方だと思っている。 多分それはゴリさんもそう思ってくれてるはずだ。


『んじゃまぁ、アタシがクロちゃんに初めて振られた記念にもう一勝負しようぜぃ!』

「いいっすね! やりましょう!」


 こうして今日は夜が明けるまでゴリさんとゲームをやり続けていった。 明日も学校なのにね……

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