スマホ画面に映るのは自分の顔だけだった
ライスヒューマン
エンカウンター
第1話 たった1色のキャンバス
いつもと違う真っ暗なスマホ画面に目を落とす。
20時38分。
あの人はどこへ行ってしまったのだろう。
自分は今までのことを思い出す。
スマホ画面は真っ直ぐ、規則的に電池マークの黒部分が減り、時間が規則的に進んでいき、とてもしょっぱい涙が規則的に落ちていくだけだった。
ただ絵を描くことが好きだった。
小さい頃から内気で、人と関わりたくなかった自分は、ただただ自分のために、自分でひたすらに絵を描いていた。
読書だろうと色々と1人でできることなどいっぱいあったが、イラストの何かに大きく惹かれたのだろう。
中学生になり、自分は美術部に入った。
周りは小学生の頃、自分の性格や能力を知ってる人ばかりで、自分のインキャぶりは、治らずしばらくは友人もできなかった。
2年生になり、東京から転校生が来た。
転校生の名前は黒沢優吾というらしい。
自分はいつものように友人にもなれないようなものと思っていた。
しかし黒沢は、自分達美術部員しかいない5時を回る頃の美術教室のドアを開け、
「遅れました、新しく入る黒沢です。」
と言った。
翌日から黒沢はなぜか自分にやけに関わろうとしてきた。
「今日も夜景を描くのかい!とても綺麗だね!。」
やら
「君の筆はとても綺麗だね!大切にしているんだ!。」
やら
やけに自分をベタ褒めしてきていた。
でも自分は今までに感じたことのなかった嬉しいような、また褒めてもらいたいような気持ちになった。
他人のために絵を描いて、そして見てくれた人から褒めてもらいたくなった。
これを世は“しょうにんよっきゅう“と言うらしい。
自分を少しだけ社会に出してくれた黒沢は、親が転勤族名ためにすぐ大阪へ引っ越して閉まった。
自分はインスタグラムというイラストや写真を投稿するSNSで活動を始めた。
今まで絵を描くアプリと親と会話するためのショートメールとGoogleしか入っていなかったスマホにこんなにおしゃれなアプリが追加され、斬新だななんて思った。
その後はインスタグラムをやったり、3年生からは受験勉強をして、県立高校に入学をしたりした。
高校1年生、自分はなんの進展もなく1年間を過ごした。
いくら中学校生活で進展があっても根本の性格は変わらかったようだ。
でも、インスタグラムでは、自分を認めてくれる人が増え続ける。
今や2万人が自分を認めてくれる。
そんな中に、一人毎日のようにコメントを送ってくれる、有名インスタグラマーの“コーナ“
というフォロワーが、1年生を終わろうとしている3月、こんなコメントを送ってきた。
「メールアドレス教えてほしいです!。」
スマホ画面に映るのは自分の顔だけだった ライスヒューマン @Raisuhyuman
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