6
ライブの最後に次のライブの予定を発表した。
また配信だ。
そろそろ観客を入れてライブを始めている人たちも居る。
このライブハウスは慎重のようだ。
しばらくしてアルトサックスの子がライブ予定をアップした。
コロナになってしまい留学を中止して日本に戻ってきていた。
本人にとっては無念だったと思うけど僕としてはまたライブに行けるとひそかに喜んだ。
アルトサックスの子は、神代しおみと言った。
10名限定でお客さんを入れるとある。
なんとソロライブだ。
予約を入れた。
予約が取れた。
久しぶりのライブだ。
今からドキドキした。
最初に聴きにいった場所だ。
当日は水曜日で仕事はテレワークになっていて自宅から出かけた。
自宅から行くのが新鮮な感じだった。
狭い階段を上がるとき、ちょっと懐かしいと思った。
入ると名前を聞かれた。
前座ったところと同じところに座った。
ひとつのテーブルにひとりづつ座るようになっていた。
おやじさんは見当たらない。
しおみさんが席に来てくれた。
「ありがとう。」と言って頭を下げた。
激しい演奏とは裏腹でいつも礼儀正しく静かだ。
「留学残念でした。」と僕は言った。
「またこうやってここで出来るから。」と言って優しく笑った。
久々に笑顔を見た。
笑うと愛くるしかった。
「今日はソロなんですね。」
「ちょっと緊張してる。」と言ってまたにこっと笑った。
「楽しんでってください。」と言って戻っていった。
僕の胸に小さな火が灯った。
今までしおみさんに恋愛感情などまったくなく
純粋に演奏が聴きたくて来ていた。
そしてその演奏に心を打たれていた。
今日また別の感情が芽生えたのだった。
そうなってしまうと急に緊張してしまう。
それが僕だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます