私はただ貴方に依存してほしかった。

九月のカルル

知らなかった存在



もう3年生か…。

2年生の方が絶対楽しい!3年生になりたくない!


今年のクラスは…仲良い子が少ないな…。

話す機会も減って、気まずくなった子が多いなー、、



嫌だなぁ。



カナ来ないかなー。うちの親友。唯一仲良いのはカナだけなんだけど……。


うち陰キャすぎん…?



周りはワイワイと新学期にテンションが上がってるのか騒いでいる。



このクラス、メンツが疲れそう。まあなんとかやっていけるっしょ!



うちは初対面でも上手くやっていけるのが取り柄!



「あっ!!ゼアー!」



「あ、カナ!」



「一緒のクラスで良かったー!」



「それな!安心した、ぼっちかと思ったもん」



安堵したのも束の間…。


見覚えのある姿が教室に入ってきた。



「こんにちはー!みなさん、座ってくださーい」



「えっ、、また門真先生…」



これもまた嫌だー。


1年の頃に犬猿の仲だった友達との問題を相談していた先生だ。


結局その子とも先生とも気まずくなったんだけど…。



また、面倒な問題が起こりそう。



「みなさんの担任勤めることになりました。もう2年間一緒に過ごしてきたからわかるね!門真愛理(カドマ アイリ)です」



よろしくお願いします、といつもの笑顔で頭を上げる先生。



気まずいって~w



「うちまた門真先生や~、、、」



「何?嫌なん?あの先生可愛いのに」



そのうちわかるよ、。この気持ちは言葉にできないから。




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それから何日か経った。



「せんせーい、席替えしたーい!」



「俺もーこの席飽きた」



「じゃあ昼休みにしよ!みんなそれでいい?」



みんなナイス。うちもこの席端っこだけど前すぎて嫌やったんよ。


そんなの賛成に決まってんじゃん。



「くじ引きね!不正したらもう席替えなしだから」



おい不正すんなよーと男子たちが騒ぐ。


小学校時代からの関わりがある人で、悪いイメージしかない男子たちには関わりたくもない。



でもクラスは初めて一緒になる人が多くて割と気が楽。


始めからやり直せるからね。



「ゼアちゃーん!くじ引いた?」



「引いてないよー!」



「はいこれ!選んで!」



「ありがとう!んー……」



どれでもいいなぁ…。



一見、どれも同じようなくじ。

何の変哲も無いくじの中に、一つだけ目立つものがあった。


思わずじーっと見つめる。



一つだけ光ってるみたい…。



『このくじを引け』

誰かが告げている気がする。くじでさえも、自分を引いてー!と主張しているような…。



「これにする!」



引かないといけない気がしてはそれを手に取った。


恐る恐る四つ折りしてある紙を広げる。



そこには“28”とはっきり刻まれていた。


この時のくじは、うちの運命を選ぶ選択肢だったと思う。



「ゼアどの席なの?」



「わからんけど、28だったよ」



「確認してくる!」



あんな人がたくさんいるところに自ら行くなんて…度胸がすごい。


ってか、うちより先に確認するのね…w


ハズレ席でも、せめてカナの近くがいいな。



「えーっ!」



カナが叫ぶ声が聞こえた。



「どうやった?」



「真反対よ…?どうする?あたしゼアいないとぼっちなんだけど…」



事態は深刻になった。



「うち目の前と横と斜め右前不登校ばっかおるわ…寝れんなこりゃ」



と言いつつ、怒られるのが怖くてあんまり寝ないんだけどねw



窓側の前から2番目で横は壁だから安心。


後ろは知らない男子だわ…。

いや男子しかいない!


うちの列3人しかいないし、その隣の列も2人しかいない…。



あれ…過疎ってない…?

こんなにクラスの人数少なかったっけ?



女の子と仲良くする機会少ないの悲しい。


今年はだめだうちw

受験のために勉強頑張るだけにしよ。



「それで、復習。794年、桓武天皇が都に城を移しました。その城のことを何と言うかわかる人ー」



前から思ってたけどこの先生時々可愛いんよな~。


老けて見えるけど…それにみんな舐めてるしw



「司馬(シバ)はわからんとー?」



「平安京やろー泣くよウグイス平安京」



「正解」



「舐めんなよー」



「司馬はわからんと思っとったけん先生w」



「死ねw」



「あ、先生に向かってそんなこと言っていいとー?w」



「いいとよー」



結構やばいやついるわ…。


そんな暴言久しぶりに耳にして衝撃受けてしまった。



去年相当平和ボケしてたかもしれん。



「はい終わりの挨拶してー」



起立、礼


ありがとうございましたー


ハリのない挨拶で締めくくる。


私は言ってすらもないw

ただ頭を下げてる。



休み時間暇やなー。カナは隣の席の女の子と話してるし。


あの女の子は確か…ヒヨリちゃんだったかな?

小学校同じだったから覚えてるわ。でも仲良くない…。



諦めよう。タブレット配布されてるし、なんか遊ぶか。



「ゼアちゃーん話そー!」



「ん?あ、いーよ」



うちに声掛けてくれるいい子たくさんいて嬉しい。



「なんか面白い話ない?」



「そう言えば、このクラスリア充いないよね」



「あー確かに」



ん?いや、待て…。共感したけど、実はいたわ。



「ユーリちゃんが彼氏おるよ!あんまり有名じゃないかもしれんけど」



「あー泉(イズミ)さんとかー忘れてたw」



「あっ、じゃあ元カノとかは?」



うーん、と考え込む女子達。



「コウはリンナと付き合ってたよね」



「おい!あれは黒歴史やって!黙れ!w」



聞こえてたのか、男子の一人、コウがこちらに向かって声を張り上げてきた。



「ゼア、これ知っとる?w」



他の女子達がコウと対話をしている間、ハセがニヤニヤしながら耳打ちしてきた。



「なになに~めっちゃニヤニヤしとるやんw」



「森おるやん、わかる?」



「えーと、駿太(シュンタ)?」



「違う違う、ゼアの後ろの席のやつ」



「あーうんうん」



あの足が長い人か。



「元カノ、高橋ヒナだよw」



「えっ!?まじ?w」



意外!w

そんなことがあったんや。



「教えてくれてありがとー!いじってくるねw」



まあでも話すタイミング一ミリもないんやけどな…w



「授業始まるよー。何で席立っとるとー?」



授業前ぎりぎりに慌てて入室してきた先生。


騒がしい教室を見渡して、みんなをまとめるリーダー的存在の学級委員、トワに声をかけた。



「いや、俺学級委員!」



「じゃあ何で教科書とファイル持っとるとー?」



「これコウの!取ってきてーって言ったもん!」



「コウー?授業の準備なんでしてないとー?w」



先生の矛先がトワからコウに向いた。



「違う!手が短くて!」



トワを睨みながら焦った様子で言い訳をするコウ。



「違くないやろーw」



授業が始まる前に準備しとけばいいのにw

手が短いってどんな言い訳なんw



まあこういう絡みが面白い。



「プリント渡すけん、これできるとこ解いてー!時間は7分差し上げます」



あ、これ復習やん。去年なんかやってたところなのはわかる。

けど1個もわからん!



教科書でカンニングするか。



「もりっきー、俺に教えてー」



うちは真面目に解いてた。



「むり」



聞こうとしてなくても、勝手に後ろから聞こえてくる会話に自然と耳をかたむけた。



「えーなんでよ~ここはなにー?」



「知らん、こっちにこんで!」



多分膝に座ろうとしとるんやろなw


拒否されとるやんけ。



「えー」



カナの様子も見るために、斜め後ろを振り向いたら、渋々空いている隣の席に座った司馬の姿も見えた。



カナはヒヨリちゃんとやってるし、うちは一人でいっかー。



っていうか、司馬と森のコンビいいw


一人も割と悪くないし。



うちは後ろに聞き耳を立てた。



「もりっきー、元カノの名前なんやったっけー?w」



「黙れw」



ぷっ…くくっ、やばい、、どうしよう面白いww



思わず吹いたうちを司馬は見逃さなかった。



「なーゼア?」



「な、なにっ?w」



笑いを堪えながら、司馬の返事に答えた。


初めて話すけど、そんなことはどうでもいい…!



「もりっきーの元カノ…」



「知っとるよーw高橋ヒナやろ~ww」



普段クールな森の顔が何かを悟ったような顔になって、思わず声を出して笑った。



「あーおもしろ!w結構有名っぽいねw」



森の弱みは高橋ヒナだなw



「なんで知っとると?」



「聞いた」



「誰に?」



うーん、ハセだけど……。



「色んな人に!」



実際、みんなで森の元カノの話で笑ってたし。



「どうやって付き合ったとー?」



「いや、あっちが好きやけんって勝手に付き合っとることになった」



「それでそれで?」



「気付いたらあっちが勝手に別れよって言い出して別れとった」



うわー



「前は仲良くしとったけど、やばかった子やったんやねあの子」



「もりっきーの黒歴史やんw」



黒歴史なんかなw


でも森可哀想。めっちゃ振り回されてる。



「まあでもさ、高橋ヒナは乳がデカいだけやん?」



うちの言葉で2人が固まった。



数秒後、司馬は大爆笑を。森はドン引きを。

見事に真反対の反応を繰り広げた。



「下ネタごめんよwけど嫌なときはちゃんと言いーよ森!」



余計なお世話かもしれんけどね!



森は頷くだけだった。



「みんな解いたー?」



先生の言葉が教室にこだました。





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給食前の授業、お腹の虫が鳴くのを必死に食い止め、私は真面目に勉強をしていた。



周りはわいわいとおしゃべりをしている。


先生は…寝てるね完璧に。

歳のせいで寝れないって言ってたもんね。そっとしておこう。



あー私って陰キャだなー。一人ぼっちだし。



まあでも一人の方が楽!



コロ


コロコロッ



トンッ


トン



あーやっぱなんか後ろから投げられてるわ。


くすくす笑い声も聞こえるし。



最初は無視してた。



「はぁーー」



大きくため息を吐いて、犯人を睨む。



「気付いとるよー?w」



司馬はいじり楽しそうな顔で笑った。



消しゴム千切ってたんか。もったいない。


って言うか森のやん。司馬にやられっぱなしだぞ?何とか言えよ森。



髪の毛に絡まってないかな?後ろから投げられてたし、少し心配。



「掃除しろよなー」



「いや、俺には綺麗に見えるけん掃除いらん!」



なんやそれw



「心掃除した方が良さそうね?w」



「ひどーっw」



どういう理論なのよ司馬の頭は。


全くー、と呆れるけど、どうしても許しちゃう。



まあ、司馬はうちのこと気になってるんだよね。


なんかバレバレw





でもね……。




うちも気になってる。


可愛いって、思っちゃうから。



司馬がすぐ側にいるって考えるだけでドキドキする。



今が一番楽しいな。

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私はただ貴方に依存してほしかった。 九月のカルル @karuru_san

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