第14話

 息子も立派に育ち、安定した職についた。

 娘も就職した。妻も変わらずに美しい。


 全員愛している。


 顔の黒い男の顔が、初めて顕になった。


何も残せなかった。

すべて海と山に、すべてがある。捨てた。


聞きたくなかった。

自分の想いは伝えておきたいのに。

ちゃんと残されている。自分という存在が。そして、自分の子孫が今もそしてこれからも脈々と。

そう思った途端急に自分の血筋を、疎ましく?忌々しく?これはなんだ、どういう気持ちだ。


嫌悪?


僕が?息子を?娘を?妻まで?

自分自身の存在すら?


さっきまで自由で、愛しくて、一生を。

たとえどんな業を背負っていても、共に生きていこうと決めたのに。


揺れる。揺れる。


また男の顔が黒くなる。


オレも同じだ。


聞きたくない。


今日はおしゃべりじゃないですか?おおじいさん。


怒らせてはいけない、しかし。最後の対話にしたい。こんな血の呪いは間違っている。

 頭は、心は、いつだって貴方と和解して握手して、リピートされる夢が真実なら、きちんと弔いを胸に家族と生きたいんだ。


今更第二の貴方になりたくない。血塗られた残虐な、他人の家に不幸をばら撒き、時には子供さえ利用する。


恐ろしい言葉が吐かれ、僕は、自分は、白昼夢から覚める。


次はお前だ。




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