第7話

 やっぱり自分は椅子に座っていた。しかし。

顔の黒い男は、背が小さく、顔は大きく、中肉中背よりは体格が良かったが。蔵の中だからか。

絶対的なあの恐ろしさがない。


初めて喉から声が出せた。


親の因果が、子に、報い。


男は器具を皮袋にしまいながら、時に手入れし、またしまう。この皮袋がたたまれるまでか、時間制限であると感じる。


いまのは、


顔の黒い男が初めて、自分に語りかけている気がする。


痛めつけたあと、初めて助かると思っていたやつのことばだ。


助けてくれないの?


女のような、少年のような、少女のような、子供のような。思えば思う程、悲しくなってきた。


それでいい。


 同調してくれるのか?


男はみんな殺せと言われ、女子供からは話を聞けと言われた。


この指で。


男が両手を開く。

短指症のようだった。ピアノを弾く自分には、あらゆる手段で鍵盤を叩く人達を見てきた自分には。


立派な手ですよ。気に入らないなら、僕の手をお貸しします。困ったことはありますか?


困ったことだと?!


顔の黒い男が怒鳴る。


そんなもの、そんなもの、あの日、この仕事を命じられた時から!


何年、何十年この人は。

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