第5話
秘密。密告。夜逃げ。裏の社会。シノギ。売春。村八分。非国民。
幅広かった。
青年は、祖先の仕事道具をついに見つけてしまった。ねじきるもの。はがすもの。きざむもの。そぐもの。しぼるもの。たたくもの。くりぬくもの。
吐くしかなかった。
その胃液の味に、生命力を感じた。生きよう。生きよう。生きますから。
どうか。
そう思うと、自らの爪は大人しく美しい指にこれまた形良くおさまり、ピアノを奏でる。
遠い日。父も同じ夢を見ると言った。幼い頃の青年はおとうさん、僕と夢をとりかえて、こわいよ、ジェイソンよりずっとこわい。父は、自分の申し出を断った。
あんなむごい、ひどいという意味だ。あんなむごいこと肩代わりしてやれるもんか。
幼い日の青年は父の言葉がよくわからず、沈黙し、それからは何度かあの夢を見て成長した。
自分が見ないときは、父が見ているかもしれないと、笑いながら。
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