第2話

ねえ、パパ。

お化けが出てくるのってどこ?


テレビの中からか、押入れのなかかな。大丈夫。うちは超薄型テレビだし、押入れは物でいっぱいだからね。


じゃあ。

小さな息子が鉛筆で書いた絵を持ってくる。


井戸とトンネルみたいな、ツボの中は?


父は優しく、問いかける。どこで見たの。


井戸はテレビだけど、丸い部屋は、夢の中。


そっか。お化けでた?


おじいさんのお化けが出た。顔が真っ黒で、


そこで子どもはなみだはでないが、目を擦る。


父は息子を抱き寄せて頭に手を置きながら言う。

この指は、爪は、とても大切な物なのだ。


その夢は、パパがかわりに見る。一生かけて、パパが見るよ。


あの日の夜に比べれば。あの蔵の中など恐ろしくはない。自分の父は、代わってくれなかった。

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