裸で馬に乗る婦人のチョコをもらった日

白鷺雨月

第1話暗い部屋に彼女はいる。

湿った空気とカップラーメンのにおいがする。きっとこれは彼女の好きな豚骨ラーメンのにおいだ。

その部屋は薄暗くて、ゲームの電子音だけが響いている。

このワンルームの部屋に住むのは僕の会社の後輩で彼女である立花たちばな梨夏りかであった。

「やあ佐久間先輩でございますか。当方今手がはなせないのでござる」

いつ聞いても奇妙な口調だ。

梨夏はコントローラーを握りしめて一心不乱にモニターの画面をみつめている。

そういえば梨夏の好きなゲームの新作が出たと言っていたな。


立花梨夏は生粋のオタクである。アニメ、ゲーム、コミックそれらがないと生きていけない人種なのである。僕も多少なりともオタクではあったが梨夏と付き合うようになり、自分なんかまだまだで一般人だとおもい知らされた。

コトンと音がした。

梨夏のかけていた眼鏡がフローリングの床に落ちる。

どうやら寝落ちしたようだ。

コントローラーを握ったまま、彼女はスースーと寝息をたてている。


部屋のあかりをつける。

まあよくもここまで散らかるなとおもわせるほどに散らかっている。空になったカップラーメンの容器に割りばしが突き刺さっている。それは梨夏の癖だ。

梨夏の肩に毛布をかけて、僕は部屋を片付ける。

キッチンの流しにためられている汚れた食器を洗う。こんなところにもカップラーメンの空き容器が置かれている。

洗濯かごに無造作につまれている衣類を仕分けして、洗濯機にいれる。

しかし梨夏のブラジャーでかいな。

Gカップとかいってたな。

よし、ていねいに手洗いしてあげよう。

あらかた片付け、梨夏のところに戻ると彼女はベッドで寝ていた。

すやすやと寝ている梨夏の髪を撫でる。

うん、何かべたべたしているぞ。

梨夏のやつ、またゲームに夢中になってお風呂にはいっていないな。

起きたらシャワーに入れないと。

今日は映画を見にいく約束だったのにこの様子ではそれもどうなることだか。

こんなことは何度もある。

映画を見たいといったのは梨夏なのに、彼女はゲームをやりすぎてそれをすっぽかしてしまう。

僕がこうやって部屋の掃除をしないとあっという間にごみ屋敷になってしまうのだ。

でもこうやって無防備に寝ている梨夏の顔はめちゃくちゃかわいい。

このとてつもなくかわいい寝顔を見てしまうと仕方ないなと思ってしまう。



それから数日後、僕は見てしまった。繁華街で歩いている梨夏を。

彼女はお洒落をしてバッチリ化粧までしていた。僕には見せたことのないきれいな姿だ。

そしてその横には背の高いハンサムな男がいた。

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