メガネ屋に働いている俺の所に、金持ちのお嬢様が来るんだが

こたろう

第1話

「今日はありがとう。お陰様でよく見えるようになったわい」


「ありがとうございます。私も嬉しい限りです、またのお越しをお待ちしております」


そう言ってお客さ様を見送った俺は、もう午後17時なので、店を閉める時間だ。


「お疲れ様です。佐藤先輩」


「おつかれ〜」


後輩の荒木が挨拶をしてくる。


荒木は入社一年目の新人だ。まだ入って半年ほどなので、出来る事は少ないが、お客様が来た時の対応や、メガネの掃除などをよくしている。


「それにしても凄いですね!今日だけで30人程にメガネを売っていて」


「別に凄くないさ」


「いえいえ!凄いです!!佐藤先輩はこの辺のエリアでは、売り上げ一位なんすから!」


「……たまたまだよ」


「まったく、先輩は自己評価が低いんですから」


そろそろイライラしてきた。荒木は仕事はよく出来るんだが、口がよく回り、思った事をすぐ言ってしまう癖がある。


「ほら!!掃除しなさい!」


そう言って来たのは店長の尾崎さんだ。三十代中半で、後輩の面倒見がいい人だ。身長も160は超えておりスタイルもいい。




「店長!髪の毛だいぶ伸びましたね!似合ってます!」


「そ、そう。ありがとう」


荒木の言葉を聞いた店長が、頬を赤くしていた。店長の悪い所だ。褒められるとすぐ気が抜ける。


「いたっ!」


「今変な事考えてたでしょう?」



そう言って頬を引っ張ってくる店長。これは店長に限らないが、女性の人は勘がするどい。


「考えてないですよ」


「翔太くん嘘はだめですよ」




ニコッとした顔で言ってきたが、目は全く笑っていないのである。


「……すみません」


これ以上何か言ったらどうなるか分からないので、ここら辺で、黙っておくことにした。


「分かればよろしい。さぁ早く掃除しましょう。荒木くん雑巾と掃除機取ってきて」


「はい!分かりました!」


そうして俺たちが、掃除を再開したとろこで、店のドアが開く音がした。


「申し訳ありません。本日は閉店の・・・・」


そこで、言葉を言うのを辞める荒木。


目の前には、女性だが、身長170cmはあるだろう、美しい女性が立っていた。


「眼鏡を買いたいのだけれどいいかしら?」


その女性は、透き通った声で言う。


「は!?申し訳ございません!本日はもう閉店のお時間で、また後日でよろしいでしょうか?」


荒木が我にかえったのか、慌てたように言う。


「貴方には聞いてないわ。私は翔太に聞いてるの」


「す、すみません!」


これ以上見ていても、荒木が可哀想なので助けに入る事にした。


「部活が失礼しました。荒木戻っていいぞ」


「は、はい」


そう言って荒木を下がらせた。


「お客様。先程の物が言っていたように、本日は閉店の時間ですので・・・」


「それがどうしたの?」


「いや、ですから閉店のお時間でして」


「そう。お父様に言って閉店の時間を見直してもらうわ」


それはまずい。


「分かりました。どのようなメガネをお探しですか?」


完璧な営業スマイルで、彼女に聞いた。


「最初からそうすればいいのよ。どれが似合うと思う?」


「そうですね・・・最近でしたら此方の、丸いメガネが流行っておりますので、どうぞかけてみてください」


ここは最近定番の、丸い黒のプラスティックのメガネを紹介し、鏡を持ってきて、メガネをかけてもらう。


「どうですか?」


「そうね・・・いいと思うけれど・・・どこが似合っているかしら?」


めんどくさせぇ。


そう思いながらも、聞かれた以上答え無ければいけないので、どう似合っているか言う。


「はい。お客様は、元々が小顔なのですが、丸いメガネをかける事によって、更に顔が小さく見えます。さらに、此方のフレーム黒色なのですが、お客様の白い肌をより強調され美しくみえます」


「そう・・ありがとう。これ買うわ」


「ありがとうございます」


その後いろいろな手続きを済ませ、お客様の顔にメガネを合わせた。


「お会計は・・・」


「はい。これ」


そう言ってカードを出してくる。


「お預かりいたします。・・・ありがとうございました」


そう言ってカードを返す。


「ありがとう。じゃあまたね」


「それでは、またのご来店をお待ちしております」


ふぅ〜やっと帰ったか。


「あの・・先輩」


「どうした?」


「さっきの人って・・誰ですか?」


「あーー荒木は初めてだったか」


確かに荒木が入社してからは、一度も来たことがなかったな。


「先程の方は、咲良グループの現会長の孫娘で、社長の娘の、咲良愛美さんよ。歳も翔太君と一緒で25歳よ」


そういったのは店長の尾崎さんだ。



「え!?ぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!咲良グループのご令嬢!!!」


驚くのも無理はない。咲良グループとは、世界的にみても有名なグループだ。最近では主に鞄や、服などを、自社で開発し、ファッション業界にも力を入れている。メガネもその一つだ。


「そうだ。うちの会社は、咲良グループの傘下の会社だからな」


「だ、だからさっきお父様に電話するって」


「そうだ」


もし社長に電話されて、怒りをかってしまえば、首は間違いないだろう。


「でも何で、うちの店に?」


「それは佐藤くんが目当てよ。そうよね佐藤くん?」


「・・・・」


そうなのだ、彼女がこの店に来るのは、俺のせいである。


「え!?佐藤先輩さすがっす!!」


「・・・別に大したことではない・・・逆に迷惑だと思ってる」


「どういう関係なんっすか?」


「3年前、俺が入社してすぐに、お店の視察として彼女が来たんだ。そこで、チャラそうな奴が店に居て、絡まれていた所を俺が助けたんだ」


「え?ボリィガードとか居なかったんすか?」


「あぁ。あの時はお忍びだったそうだからな」


「なるほど」


「それ以降、この店に来るようになったわけだ」


あの時助けたのは、店員として当たり前の事をしたと思っている。それが原因で店に来るようになるとは、思ってもいなかった。


「はい!この話はここでおしまい。私この後用事があるんだから、早く早く!」


「わ、分かりました!」


「・・・・」




そう言って俺達は、片付けを再開した。










「お疲れ様でした。明日もよろしく!! 」


尾崎さんがそう言って、今日は解散になった。


「先輩お疲れ様でした」


「おつかれ〜」


はぁ〜今日は疲れたなぁ。帰りにカニでも食べて帰るか。


そう思って美味しいカニが食べられる所に行こうとすると、目の前に黒い高級車が止まった。


おいおい勘弁してくれよ〜


高級車の窓が開き、そこからお嬢様が顔出す。


「翔太乗りさない」


「・・・はい」


そうして俺は高級車に乗った。



ここは素直に従っておいた方がいいのだ。以前も今回の用な事があったのだが、その時は乗らずに帰ろうとしたが、家まで着いてきて帰らないのである。もはやストーカーである。


まぁでもたまに、ご飯を一緒に食べたりは、する様な仲にはなったのだが。


「今日はメガネ選んでくれてありがとう」


こちらを向いて言ってきた。咲良さんの顔は、大人びでおり、一般人とは比べ物にならないほど美人だ。目がくりくりしていて、髪は黒髪のセミロングだ。極めつけスタイルもよく、胸も大きいほうだ。


「・・どういたしまして」


「翔太に選んで貰えて嬉しかったわ」


ニコっとしながら、コチラを見て言う。


「・・・そうですか」


顔が少し赤くなるのを感じで、窓がある方へ顔を向けて誤魔化す。


「翔太はこの後夕食?」


「・・・あぁ」


「なら一緒に食べましょう」


今日疲れている俺にとって、彼女とご飯を食べるのは少し堪えるので断ろうとした所


「・・咲良さ!?」


「咲良じゃないでしょ?愛美って呼んで」


彼女が俺の唇に指をおいて言ってきた。


「・・・無理だ」


「どうして?」


「・・・・恥ずかしいから」




俺は顔が赤くなるのを感じながら答えた。




「私と二人の時は名前で言う約束でしょ?」


「二人じゃないだろ」




実際運転手さんいるし。




「私の事はお気になさらずに楽しんでください」




運転手さん。そこは空気読まなくていい所です。




「ほら呼んで?」


「ま、・・・・愛美」


「はい。よくできました」


何かバカにされているような気がするが、気の所為だろうか?



俺と愛美が出会ったのが三年前。それから、三年間も付き合いがあるので、名前で呼ぶのは普通だが、さすがに恥ずかしい。


「愛美。俺の方を見て」


「なによ!?」


「そのメガネとっても似合ってるよ。愛美にだからこそ、そのメガネを紹介したんだ。絶対似合うとおもって」




仕返しに、愛美の顔に近ずき、窓に壁ドンするように言った。案の定効果抜群のようだ。




「もう!?急にそんな事言って!!!ば、バカじゃないの!」


そう言って叩いてくる。




「だって事実だから」


「・・・翔太」


お互いの顔が近ずく。そしてあと小指一本分までの距離に唇が近ずき・・・そして・・・・


「お食事は何処でなさいますか?」


『!?』


運転手さんの言葉で、現実に戻った俺と愛美は、元の場所に戻った。


あっぶねぇ!?もう少しでキスする所だったぁ!!運転手さん今回はナイス!!心の中でグッドを送っておいた。


「そうだなぁ。俺はカニが食べたいんだが・・・どうだ?」


「い、いいんじゃない」


まだ照れてるようだな。まぁ俺も人のこと言えないけど。


「じゃあカニが食べれ所でお願いします」


「かしこまりました」


運転手さんにそう伝え、愛美の方を見る。


「今日の夕食は、俺が奢るよ」


「いいわよ。別に」


どうやら平常運転に戻ったようだ。


「いいって。今日は気分いいから」


「そう?ならお言葉に甘えるわ」


これから先も、このままの関係がつづいていけばいいと思いながら、店につくまで二人で楽しく話していたのだった。




後書き

評価よろしくお願いします。

連載候補です。

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