転生したけどそれは悪役令嬢にコテンパンにやられる世界でした。

五条理々

第1話


転生する話、好きだよね。


私だってそうだもん。


特に、悪役令嬢に転生する話。大好き。


オタクが気持ち悪いぶりっ子なヒロインをボコボコにしてさ。


かっこいいよね。


うん。ヒロイン気持ち悪いよね。


でもね、私それになっちゃたんだ。


その気持ち悪いヒロインに。



___________________________________



「結愛ー先行ってるからねー」


私の名前は田中結愛。女子高生。めちゃくちゃ平凡すぎて平凡なので特に解説することは無し。


まあ、転生する話は好きだったかな。


だけどこれだけは知って欲しい。


私は死にました。


ついでに、転生しました。


ついでって言っちゃうほど転生は身近なもので、それは最近流行ってる転生の小説のせいなのだが、私は決して悪役令嬢に転生したわけではない。


なんとなんと、ヒロインになってしまったのでしたー


そして今の私の名前はアイリーン・リディエール。


本当はもっと長いんだけど、そんなの紹介しても意味ないから秘密ね。


私は、今七歳でそれ以前のこの世界の記憶は持っているの。


でも私はこの世界なんか初めて見たから自分の記憶しか頼りにできなくて、しかも子供の記憶だから、あまり頼りにならないし。


私はある日、夢を見たの。


そう前世の私の人生総復習みたいな。


そして目を覚ましたら、転生した世界に戻ったの。


そう。ここまでは王道だよね。


だけど、この世界の記憶が蘇ると、私は気がついた。


私、ヒロインだ。



どうして、この世界について、何も知らなかったのにヒロインだと分かったのか。


それは私が「転生したんだ」と心の中で呟いたら、目の前の鏡に私のプロフィールが書かれていたことに気がついたのだ。



 名前 アイリーン・リディエール

 年齢 七歳

 役割 ヒロイン

 家柄 公爵家

 伴侶 ヴィラン・ラミレス

 魔法 ???

 

が記されていた。


でもこんなの、記憶にない。


今日出てきたのかな。


あと、役割と書いているのだから、現実世界というより、ゲームや小説のために作られた世界なのかも。


「レニー様、おはようございます。今日もお元気そうですね。」


あ、マルナさん。

マルナさんは私の家のメイドさん。


基本的にメイドや召使は粗末に扱われやすいけど、お母さまが誰にでも敬意を表しなさい、というから、私に使えている人でも呼び捨てなどにはしてない。


それから私の愛称はレニーだよ


そういえば今日は何をする日だっけ…


ああ、今日はお作法の稽古とお茶会だったね。


「マルナさん、おはよう。今日は稽古の日よね?」


そうですよ。と微笑みながら返すマルナさん。


そこで私はこんなことを考えていた。


きっと私は礼儀もなっていて、優しくて、かっこいい人と結ばれるのね。


だけど、さっきの鏡でうつされたヴィランって人私知らない。


ラミレスの名は聞いたことあるけれど。


貴族だったわよね。


「それからラミレスの方とお茶会です。」


えええっ!


もしかしてその人って…


「その家の次男、ヴィラン様がいらっしゃるのでしたね。」


うそー。なんの下準備もしていないのに、もうあうの?


「大丈夫ですよ、カーナ様もいらっしゃいますし。」


あれ、カーナ?


ああああ!


あの私の大親友!


でもこういう場合って、相手は悪役なのよね。


そして私はめちゃめちゃにされてしまうのよ。


もう、転生したけどそれは悪役令嬢にコテンパンにやられる世界じゃない!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る