俺氏、あなた専用料理人。

けんぴ

第1話

働きたくない、働きたくない、働きたくない

「ああああああああ!働きたくないよーーーーーーー!」

「うるさ」

彼は1人暮らしをしている。

俺は実家暮らし。

ここは彼の家。

部屋で雑誌を読みながら2人で話していたところ、私は急に将来に不安を持っていたことを思い出した。

「将来が不安だ、不安なんだよー!」

「そりゃ、働きたくないって思ってるからな」

「働いたら負けだよ、きみ」

現代において人生に負けることは働くことである。

しかし生きていくためには食べ物が必要だ。食べなければ餓死してしまう。

しかし働かねばお金がもらえない、食材が手に入らない。

つまり働かねば生き延びられない。

「働いたら負けだということの根拠はあるのかい?」

「あるよ、あるさ、今に言ってやる!ファイツクラブ見たらわかるさ、お金があれば欲に手が伸びる、お金があればすぐ物質に手を出す、なのに俺はモノに囲まれたくない、だから俺は働かない!

この世界に私は生きていけるのだろうか。お金を生み出す仕事というのは本当に必要かと思うね。」


「そうか、多分お腹空いてんだ、なんか食べに行こうぜ」

置き時計の短い針が2時を少し超えていた。

俺は朝に食パン一枚を食して以来なにも食べていなかった。

イライラしたり、不安になっていたのかもしれない。

そしてこいつは多分俺の話なんか聞いていない。

いや聞いていないというか、耳から耳へ聞き流している。

「そうだな、お腹空いてたんだ、小林の選ぶ!ここら辺のおすすめグルメ!行きましょか、お金持ってきてない、プリーズ、頂戴、お願いします。」


「ここか」

奢ってもらえることになった。

いいよと簡単に返事をもらった。やりぃ。

小林の家から徒歩10分ほどでついた。

いつも行く本屋の隣にあったとこで少し気になっていたところではあった。

外観は落ち着けそうな大人っぽい雰囲気だった。

ここはハンバーガー屋さんらしい。

中に入ると、ジャズが流れた。

少しアメリカを思わせるようなシールなどがあり、ユニークさも存在していた。

メニューを開いてみる

「いつもなに頼んでんの?」

「これ」

小林はテリヤキバーガーを指した。

「テリヤキバーガーか、いやここはスペシャルバーガーを頼もう。」

聞いた意味、、、と絶妙に聞こえる声で言ってきた。

困る


肉の焼ける音とが聞こえてきた。

待ちきれねぇ、追加でのどの渇きを解消させるジンジャーエールを頼んだ。


来た

この店のジンジャーエールは辛口のようだ。

スパイスの効いた香りが口いっぱいに広がった。

甘さは全くない、今ののどの渇きにはちょうどよかった。


バーガーが来た

「でけえな」

一口では食べられない、潰せば一口ガブリといけるだろうがそんなことはしたくない。なんかこいつの前ではお上品に食べたい。そういう思いがあった。

ナイフを使い切ろうとした時

「やっぱ最初はガブリと豪快に噛み付くよな」

俺がデカさに戸惑っていると、小林は見本を見せるように(本人にその気はない)豪快に一口頬張った。

「確かにこれはナイフでいくのはもったいない気がする。」

(多分色々なプロモーションの影響を受けている。cmで豪快にかぶりつく勢いのある映像が染み付いているからそう思うのではないだろうか。)

少しの勇気をもってかぶりついた。


長くなって申し訳ない、この瞬間だ。

私が料理が好きになった理由だ。

あまりに美味しかった。

普通のハンバーガーを想像していたのか、お腹が空いていたのか、お金持ってないのに食べている罪がスパイスになったのか。

この瞬間、世の全てに包まれ、感謝の舞を小さな私が踊っていた。

ありがとう!ありがとう!ありがとう!


現実に戻った。

「美味しいって、すげぇんだな。何でこんなに美味しいんだ。

何でこんなにうまいんだ。」

「なんれらろうれ」

小林は何回か来たことがあるのか、違うものを食べているのか、まるで普通にうまいとでも言い出しそうな興味のなさを態度でも示していた。

飲み込んでから話さない?


「なぁ小林、一緒に暮らせない?」


ブフォー

「唐突すぎて吹き出したんだけど、どういう意味ー!?」

「小林がお仕事して、お金を少しもらってそのお金で俺と小林の料理をつくる。

小林、外食とカップラーメンばっかでしょ。不摂生はよくない。」

「おめぇだってそうだろうがー!」 台パン

「落ち着けって、俺カップラーメンは食ってるけど、お金ないから外食はしてないよ」

「そういうことじゃねー!」

ぐーパン

「いタァ!」

ここカメラワークよくしといて


「悪い、とにかく俺一緒に暮らしたい。」

「その思いに至った経緯、理由を述べよ。」

「俺働きたくないじゃん?」

「うん」

「主はご飯つくらないじゃん?」

「うん」

「俺料理作りたくなったじゃん?」

「ふーん」

「料理と掃除もするから住まわせてください。俺実は親に嫌われてんだよ、実家暮らしで働いてねぇって、頼む!」

「しょうがねぇな、いやそれありがてえな。うんよろしく」

「よっしゃー!」

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俺氏、あなた専用料理人。 けんぴ @hifkho

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