第四十七話「晴明の覚悟」
晴明の前に幼いころに別れた、母、葛ノ葉が現れる。
晴明はいつの間にか、変化が解け人の姿に戻っていた。
葛の花の絵柄の赤紫の着物を着こなし、透き通るような白い肌。腰まで伸びた銀髪、愁いを帯びた優しい切れ長の紫色の瞳。
白い狐の耳とふわふわの尻尾。
これだけ、時が経っていても母の美しさは、晴明の記憶の中の姿と少しも変わらなかった。
「立派になりましたね、童子丸。いえ晴明」
「母上、お久しゅうございます。」
葛ノ葉は長年、離れていた息子を目の前にして、たまらなくなり晴明を突然、強く抱きしめた。
「ああ本当に、ごめんなさい…っ」
「は、母上……」
晴明も、感極まって涙があふれる。
「どうか、謝らないでください。母上も、お辛かったのですから
私も貴女と別れ、父と死に別れ
「しかし、私も恋人の美夕と、兄弟と思える道満という家族に恵まれ
友人の篁、兄代わりの保憲殿、他にもたくさんの方々にかこまれて、
今は幸せです。母上、今母上は幸せですか? 辛いことはありませんか?
私は、あなたの幸せを願っています」
晴明は優しく微笑み葛ノ葉を抱きしめ返した。
「ありがとう、晴明……。あなたの幸せは、わたくしの幸せ。
わたくしは幸せ者ですよ。ありがとう、立派に育ってくれて」
ふたりはしばらく抱きしめあい、おたがいのこれまでを語り合った。
「母上、私は炎獄鬼を倒さなくてはなりません。
それは、我が妻になる美夕の肉親です。どうか、罪を犯す息子を
許さないでください。そして神の
「炎獄鬼はおのれの罪の深さに気が付いていません。
あなたの罪と固い覚悟、確かに受け取りました。
あなたの死後、わたくしも共に閻魔様の裁きを受けます。」
「晴明…あなたは、わたくしの誇りです。あなたの大切な方たち、
そして、命あるかぎり美夕さんを大切になさい。
わたくしはいつも、
「母上、ありがとうございます。」
晴明はふかぶかとおじぎをし、頬を涙が伝った。
晴明がふと、見ると母の側に父の
「――父上?」
父は、晴明に微笑を浮かべると葛ノ葉に寄り添った。
葛ノ葉は、晴明に神獣
「今度こそ、誰も傷つけさせはしない! 炎獄鬼、俺が引導を渡してやる。」
晴明は、まばゆい光をまとった、九本の尾を持つ神の
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