第四十五話「熾烈な戦い」
篁は軽く、爪先で小さく踏み込み、間合いを詰め
『チィッ』
炎獄鬼は左によける、しかし、左の頬に赤い筋が走り血が垂れる。
「だーっ!」
道満は、
『フン!』
炎獄鬼は前足で錫杖を折り、道満を払った。
「ぎゃっ!」
でかい身体であるにも、かかわらず道満はまるで、紙でできた力士のようにふっ飛ばされた。
「道満!」
「大丈夫か! 道満っ!?」
篁は道満を気遣い回復の術をかけた。
「え? 篁が初めて、名を呼んで俺を心配してくれた……!」
道満は、初めてのことにぽかんとし感動して目を潤ませる。
「たく、あほ面してんじゃねえよ! 早く立って、かまえろ!」
道満は腕をぐんと、篁に引っ張られ、立ち上がった。
「ああ、あんがとな!」
篁は少し、照れたような表情をしたが、いつものクールな表情に戻る。
「行くぞ!」
「おお!」
道満はまたたくまに、鬼の姿に変化した。
道満はこぶしに、風獄ゆずりの風の力をまとって、殴りかかった。
思いのほか、重い拳に炎獄鬼は三発ほど殴られる。
篁は、天狗さながらの身軽さとスピードを生かして、
炎獄鬼をほんろうし、刀の切っ先で何度も鋭く突く。
『ちいっ、うるさいハエどもが』
その時、上から攻撃をしてきた晴明が炎獄鬼の尻尾を切り落とした。
尻尾の大蛇はのたうち回って動かなくなる。
「これで毒は封じた! 残るは炎獄鬼、本体だ!」
晴明は狐火を放って、大蛇にとどめをさした。
大蛇は青白く燃え上がり、断末魔の叫びをあげる。
「くふふふふ。馬鹿が! 俺がそう、
炎獄鬼は晴明の足をくわえて、ぶん回して投げた。
しかし、道満が受け止め、晴明は術を放った。炎獄鬼は大きな翼で飛んでよけ、雷を放つ。
晴明達は、
青龍の背中を足場にして術を唱え始めた。
「
「
「
晴明、道満、篁がそれぞれ強力な術を放つ。光弾、風弾、重力弾が直撃し爆発を起こす。
間髪を入れず晴明達が切りかかる。
『アアアーーー!』
炎獄鬼は激しい攻撃を受け、衝撃に
落ちた所をいっせいに攻撃を仕掛ける。
しかし、攻撃を受けながらも晴明達の攻撃は止められ、紙一重でかわすが、爪で切り裂かれる。
「うあっ!」
致命傷にはならなかったが、ザックリと爪痕が残りもだえる。
炎獄鬼は、巨体で晴明を押しつぶそうとしてきた。
道満は晴明の盾になって、炎獄の体をがっしと、かかえた。
「うるああ――!」
道満は、渾身の怪力で炎獄を投げた。
「すまん、道満!」
道満は、振り返りグッと、親指を立てた。
◇ ◇ ◇
伯道上人は、炎獄鬼が動けないうちに
術で炎獄の時を止めた。晴明と道満に夢幻の月の精霊の力で力を上昇させるようにいった。
「夢幻の月の精霊よ。我に力を、
月が夢幻の月に変化する。
「いくぞ、道満」
「よし、来た!」
「おふたりとも。私も行きたいです!」
「オレも行くぜ!」
夢幻の月の光が地上に降り注ぎ、晴明、道満、美夕、篁は光に包まれていった。
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