第三話「賀茂保憲の奥方」
道満はしじみ売りや、本業の法師の仕事に。
美夕は兄弟子の
賀茂優子は、巫女の育成をしていて、美夕に自分の能力の制御を覚えさせるため、
晴明が保憲と優子に頼んで、通わせてもらっているのだ。
晴明は化生の自分と美夕を
兄弟子の保憲と優子をとても、信頼していた。
ただ一つ、気がかりなものがあるとすれば、
それは保憲の息子、
光栄は晴明が、父親に信頼されていて、自分より、陰陽師の才能がある事を
もちろん晴明も、
未熟とはいえ、腐っても陰陽の名門、賀茂家の人間、油断ならない男なのだ。
そのような、悪意に満ちた人間がいる屋敷に、
自分が家族同然に、大切に思っている美夕を、行かせる事は晴明にとって、とても心苦しかった。
晴明は美夕が巫女服を着て支度をした頃、自室に呼んだ。
「晴明様、何か御用でしょうか?」
晴明は引き出しから、一枚の紙で出来た
人形とは
人の形を模した物を人形と呼ぶ。
「美夕、これは私の式神が、封じられた物だ。もし、お前の身に危機が迫った時、
式神がお前を守護する。肌身離さず、持っているのだぞ?
そして、これだけは覚えておいてくれ。賀茂光栄にはくれぐれも、気をつけろ」
忠告すると、美夕は素直にうなずいた。
「はい! 晴明様」
立ち並ぶ通りを歩いていくと、
美夕は門をくぐり、屋敷の入り口に向かって歩いていると、
「「キャ! やぁ~だ。
わざとらしく、ささやきながらケラケラと笑い、屋敷の中へ入っていった。
美夕はいつもの事ながら呆れ、
「何よ。あの子達」と、目を吊り上げ小さく舌を、突き出した。
祓(はら)い、清めの授業、弓術、
様々な巫女の授業を、受けていく、
特に美夕は祓い、清めに
皆が美夕の方を見ながらこそこそと、陰口をたたいている。
「何よ! あの化生女。
ちょっとばかり、出来るからって、調子に乗っちゃってさ!
術に長けるのだって、物の怪の血が入っているからだわ。きっと、そうよ」」
嫌な気分になり、うつむく美夕。その時、それを見ていた、
年かさの美しい女性が、厳しい表情をし、巫女見習いの少女達に言った。
「貴女達。暇さえあれば、毎日、毎日、美夕さんの悪口ばかりなさって。
人として、恥ずかしいと思わないのですか?」
すると、巫女見習いの少女達はどこから仕入れた情報なのか、口々に訴えた。
「お言葉ですが、優子様! 美夕は汚らわしい化生で、鬼の血を引いています!」
優子は形の良い眉を吊り上げ、少女達を見回した。
「それが、どうしたというのです? あなた方が美夕さんの立場だったら、
どう、感じますか…美夕さんの立場になって、考えてごらんなさい」
と、静かに言い放った。
少女達は、自分達の尊敬する優子に叱られた事が余程、
優子は優しく、美夕の肩を抱いた。
「美夕さん、かような事は気にしなくとも、良いのですよ?」
「はいっ、ありがとうございます。優子様」
美夕は、嬉しくて涙を浮かべ頬を染めるとほのかに微笑んだ。
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◇今回の登場人物◇
保憲の奥方で巫女の育成をしている、美夕の良き理解者。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
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