第二話「もう一人の住人」❖
◇今回の登場人物◇
「蘆屋道満-あしやどうまん」
播磨の法師陰陽師と呼ばれる素性不明の男性。美夕のことを一途に想っている。
自称「晴明の好敵手」晴明に勝負で負けたため、現在、弟子になっているようだ。
開けっ広げな性格で、情にもろい。
蘆屋道満AIイメージイラスト
https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818023213640081067
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「――様! 晴明様」
後ろから美夕の声がして晴明が振り向くと、背中にふわりとうちかけを掛けられた。
美夕は心配そうに、晴明の顔を覗き込んだ。
「晴明様、ここは冷えます。お酒もほどほどになさって、
もう、お休みになられてはいかがですか?」
「ああ、わかった。もう遅い時間だ……お前も眠ると良い」
美夕の頬を片手でさすると、彼女は頬をほんのりと染め嬉しそうにうなずいた。
安倍家の朝は早い、晴明の式神が屋敷中の木戸を開けた頃、
美夕は朝餉の支度をして晴明と、もう一人の住人が起きて来るのを待つ。
しばらくして、ふすまが開いたと同時に部屋に入ってきたのは、体格が良く茶髪で
短髪の見るからに人が良さそうな青年。
「あ~! 腹減った。飯、飯。あっ、美夕ちゃん、おはよう。俺、大盛りね!」
「道満様、おはようございます」
美夕は、明るい笑顔でにこやかに迎えた。
美夕に向けてニカッと、白い歯を見せて人懐っこい大型犬のような、笑みを向けた。
名を
弟子とは名ばかりで噂では自称、“晴明の
ふと道満は晴明がいつも、座っている席を見て。
「あれっ、美夕ちゃん。晴明ちゃんは? まだ、来てないの」
そう、道満は師匠の晴明の事をちゃん付けして呼ぶ。
本人は親しみを込めて呼んでいるらしいが、当の晴明は、どう思っているのだろう。
朝餉は、
美夕は、道満のひときわ大きな御飯茶碗にご飯を盛り付けながら、横目で見た。
「晴明様は、お屋敷内のお清めをなさっています。道満様も手伝われてはいかがですか?」
道満は片手をひらひらとさせ、
「ああ、いいの! いいの! 俺がやると仕事が雑だとか言って、
晴明ちゃん怒るから。晴明ちゃん、綺麗な顔して怒ると怖いんだもの」
からから笑うと。美夕は、相変わらずの道満の弟子としての責任能力の無さに
「はぁ、貴方という方は……もう少し、晴明様のお弟子さんという自覚を持ってください」
眉をハの字にして困っていると、ふすまが開き晴明が入ってきた。
「道満、あまり美夕を困らせるんじゃない」
「あっ、晴明様。おはようございます。朝餉のご用意はしてありますよ。毎朝、お清めお疲れ様です」
すると、晴明が優しく美夕を見詰め
「ああ、おはよう。美夕、式神にさせても良いのにいつも家事を任せて、すまないな」
晴明のちょっとした、心遣いに美夕は胸が暖かくなる。
「いいえ、晴明様……このお屋敷に置いてくださって、いるのですもの」
晴明と美夕の間に、良い雰囲気が流れる。それを見て、道満はむすっとすると、
晴明と美夕の間に割って入り、美夕を突然、カバッと抱きしめた。
「晴明ちゃん! 美夕ちゃんは俺のなの! 見つめ合うの禁止!」
美夕はゆでだこのように顔を真っ赤にして、口をパクパクさせている。
晴明はこめかみに青筋を走らせ、声色が低くなる。
「ほう? 美夕が、お前のだと。さっさと美夕から離れろ! さもなくば」
晴明の拳骨が、道満の頭に振り下ろされた。
「痛ってえ――!」
道満の頭に大きなたんこぶが出来、朝餉が始まった。
道満は暗い表情で、何やらどす黒い気を放ちブツブツと、文句を言いながら
汁物を掛けた御飯と、なすの漬物をかっ込んでいる。
晴明はすました顔で、汁物をすすっている。
いつもの朝の光景に美夕は、思わず肩をすくませ、手を合わせて食べ始めた
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