いつか夢見た、あの日
折木憲伸
第1話 運命が変わった日
浪人生活2年目が終わろうとしていた1月
木村は、成人式とその後の中学の同窓会に参加していた。
『今何してるの?』
『浪人してるんだよ』
こんな会話をいくらしただろうか
話すたび、自分が情けなくなる木村。
かといって やる気が出るわけでも、大学に受かる為の勉強をする訳ではない、
いや、出来ないと言った方が正しいのかもしれない。
彼自身、大学には行きたいし、こんな精神的に辛い浪人生活にはこりごりしている、
しかし身体は動かない。
頭では 大学に行った方が、人生を豊かにすると理解しながら行動に移せない本当に情けない奴だった。
木村が会場を見渡すと そこには、記憶よりも綺麗なった初恋の親しかった女の子『葵』がいた。
木村は勇気をだして声を掛けようと決心した。したつもりだった。しかし、
「あおっ...ぃ...」
木村は、自分には地位も名誉も立場もない
そんな自分に彼女に話しかける権利はないと
言葉を音にしようとした直前に思ってしまった。
その音にもならない言葉は会場の喧騒にすぐに飲み込まれ彼女には届かなかった。
木村は音の出ない寂しい口を、ワインで潤した。 そのワインは、かつて飲んだものより幾分か渋い気がした。
少しして 木村は1人帰路につく。
同級生達は、今頃二次会をしている頃だろうか。
キラキラと燦然と輝く同級生達は、
彼にとってあまりにも眩しく、その光に何か呑み込まれそうで 必死に逃げた。
会場に預けていたコートが取り違えられていた事に気付かずに。
いつか夢見た、あの日 折木憲伸 @MICHIRU0320
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。いつか夢見た、あの日の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます