激闘!勇者アルタイル
天然ナガイ
激闘!勇者アルタイル
必殺 星降る聖なる秘剣
「コズミック・セイバー・スラッーーシュ!!!」
「ギャアアアーー!」
断末魔の叫びとともに、魔物たちは光のチリとなって目の前から消えた。
俺は、聖剣スターライトソードをくるりと回し、背負った鞘に収めた。
頭を揺するとサラサラの金髪が優雅になびいた。
「フッ、口ほどにもない」
キラッと白い歯がこぼれる。
自他共に認める王国一のイケメン剣士、勇者アルタイルこと、この俺にかなう相手などいない。
これで魔王城にいる配下のモンスターはすべて片付けたはずだ。
残すは邪悪な総統、魔王のみ。
「今ゆくぞ、待ってろ魔王」
俺は、玉座の間を目指し、城の階段を駆け上がっていった。
◇
アルタイルは高さ三メートルはある重厚な扉を押し開けた。
そこは豪華絢爛というのが相応しく、舞踏会でも開けそうな広い空間だった。
赤い絨毯のうえを真っ直ぐ歩いた。
フロアより数段高い位置に玉座の
アルタイルは魔王と目があった。
魔王は臆することなく、勇者の到着を待っていたようだ。
「勇者アルタイルよ。ここまで来たのは誉めてやろう」
腹の底に響くようなダミ声だった。
アルタイルは威勢よく返した。
「いざ、尋常に勝負! 覚悟しろ魔王!」
「フフフ、貴様の戦いはずっと水晶で見せてもらった」
魔王は不敵に笑った。
「相手にとって不足はない」
そういうと、魔王は立ち上がり肩のマントを外した。
「さあ来るがいい。今日が貴様の命日だ!」
心臓はドラムのように激しく打ち鳴らされ、緊張と興奮に
手に汗握る魔王との最終決戦。ついに戦いの
アルタイルは突進すると見せ、真上に跳躍した。
「とうっ!」
背中のスターライトソードを抜くや、いきなり渾身の必殺技をはなった。
「コズミック・セイバー・スラッーーシュ!!!」
見事機先を制したはずだった。
しかしその攻撃は空振りに終わってしまう。魔王は想像のはるか上をいく、
「その技はすでに見切った。今度は余のターンだ」
魔王は両腕を、十二時と六時の位置に配し、時計回りに腕を動かした。まがまがしいオーラが増幅していく。
<<< ゴゴゴゴゴゴゴ >>>
建物は揺れ、大気すら震えている。
魔王のからだの中心に光の渦ができた。そこから魔王は、黒い鉄球を出現させた。鎖つきの鉄球である。
「このネメシスに触れたら最後、その部位は回復の余地なく朽ち果てる」
そういって魔王は、暗黒鉄球を振り回しはじめた。
「貴様の命運も、もはやこれまで、覚悟せい」
アルタイルは危険を察知し、いち早くさがって距離をとった。
鉄球は羽がついたように宙を舞う。
ブォーンと風切り音を残し、アルタイルの頭髪すれすれを通り過ぎていった。
どうやらあれは物理攻撃だけではない。球には強力な魔力が込められていて、奴が言う通り、聞きしにまさる恐ろしい技のようだ。
魔王は攻撃の手をゆるめない。
矢継ぎ早にネメシスを向けてくる。触れることすらままならない以上、俊敏な動きでかわし続けるしかない。
「はっ」
上体を反らし、くるっとバク転を決めた。
「とうっ」
伸身の宙返りをしながら1回半ひねり鉄球をやり過ごした。
「やっ」
手は使わず側転してかわした。
「えいっ」
高くジャンプしトンボを切った。
それはどれも華麗な体術である。
アクロバティックな動きに、魔王の暗黒鉄球は後塵を拝すばかりだ。
アルタイルは得意だった。人差し指をだし鼻の下をこすった。きっと魔王をからかうように、半ケツでも見せてやりたい気分だろう。
「ぬぬぬっ、こしゃくな! おのれ、これが貴様の実力か!」
「フッ、俺がアベンジャーズに出演したらCG無しで撮影が出来るぜ」
しかし、その軽口が命取りになった。
調子に乗ったばかりに着地に失敗し、アルタイルは、すっ転んでしまったのだ。
泡を食って、すぐに体勢を立て直すが、そこにネメシスが迫る。
バァーーーーン!
「うあっ!」
つい、よけそこねてしまった。もろに顔面に食らってしまった。
「
魔王は大きな口を開け、カッカッカッと高笑いしている。
◇
その機を見て、俺は柱の陰から飛び出した。
ドタドタとやや鈍重な足取りだった。それでも魔王が足音に気付き、振り返ったときにはもう遅い。胸の急所にまんまと剣を突き刺してやった。魔王は勝ったと思い油断していたのだ。
「うぐっ、な、なんと……」
魔王はゴホッと血を吐き、よろめきながら目を白黒させた。
「こ、これはいったいどういうことだ?! ──勇者アルタイルが、ふたりいる……?!」
「ハッハッハッ、残念だったな魔王。お前がやったのはスタントマンの方だ」
激闘!勇者アルタイル 天然ナガイ @atsukana
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