貞操逆転偉人美少女幕末なのに男女比1:10000くらいの異世界に岡田以蔵で転生したけどメインヒロインは勝海舟です!!

園業公起

先生と人斬り

 

世界は黒船が来て変わったらしい。でも俺の世界はそんなのが来てもちっとも変わらなかった。あの人に出会うまでは…。





 西の果ての島国で蒸気機関による産業革命が起きた。その力は文明を大きく進展させ、人々を新たなる世界に導いた。だが同時にその煙は同時に世界を蝕むものだった。


 蒸気機関から発せられる【煙】は男たちを毒した。生きている男たちは次々に息絶えていき、新たに生まれるはずの男たちは子宮の中で朽ち果てた。


 人々が煙の恐ろしさに気がついたときにはもう手遅れだった。世界は煙に包まれて、男というものは黄金よりも貴重なものとなり、女たちは途方に暮れることになったのだ。


 そんな世界の中でいち早く近代化に成功した西洋列強は世界に進出しまだ無事な男たちを狩りだし始めた。


 これが世に言う帝国主義の時代である。


 そしてその牙は極東の島国さえも届き始めようとしていた…。





 幼馴染で金持ち逆流ぎゃるの坂本竜馬の紹介で俺は幕臣の勝海舟の護衛に着いた。だけどそれは半平太姉さんの極秘の指令によるものだった。隙をみて開国派の勝海舟に天誅を下すことが俺に与えられた命令だった。そして俺は女装をして江戸の街にやってきたのだ。


『よしふるくんは人を斬るのがだいーすきだもんね♡だから僕は君に標的をあげるよ。かわいいねかわいいよぅよしふるくん』


 そうだ。俺は人斬りだ。そう自分に言い聞かせる。いつ誰かに襲われても大丈夫なように。俺と勝海舟は江戸の煙い夜道を二人で歩いていた。今日は仕事が長引いてしまい、遅い帰りになってしまった。こういう時こそ警戒せねばならない。


「岡田君はあれかい?坂本の幼馴染なんだって?あの娘の派手好きは昔から変わらないのかな?」


 護衛対象であり、天誅を下す相手でもある勝が俺に話しかけてきた。護衛の下級武士相手の俺にしては随分と気安い。


「ええ、そうですね。昔から厚化粧ですよ。綺麗な顔してるんだから薄くてもいいでしょうに」


 竜馬は派手好きだし一所に落ち着かないお転婆だった。年頃を過ぎたころから化粧にこだわる様になった。袴を短く切って素足を晒すようになって、さらに派手好きが増していった。最近じゃ酒まで覚えて仲間たちと夜巻き遊びぱじゃまぱーてぃー三昧らしい。そのまま遊郭ほすと通いになどならないといいのだが。


「いやいや女はどんなに美しい顔を持って生まれても、なお美しさを求めて着飾るのを楽しむ欲張り者だよ。君だってそうだろう?とても綺麗な顔をしているのに、随分と厚い化粧じゃないかね?くくく」


 俺の顔を覗き込んで勝はにんまりと笑った。俺はさっと目を反らした。俺は厚化粧で顔の線を誤魔化している。男だとばれないように。もし男だとバレてしまったら、良くて遊郭ほすとくらぶ送りか、最悪は米国か英国あたりに売られてしまうかもしれない。孤児で後ろ盾のない俺のような男なんて誰も守っちゃくれないだろう。まあからだを売るなら別だろうが…。


「しかし君はいつもギラギラと周りを睨んでいるね。もう少し笑ってはどうかな?」


「護衛がけらけらと笑っていては示しがつきません。ほら。このご時世では御覧の通りですからね」


 曲がり角の向こう側から三人ほどの体格のよい女たちが現れた。煙が世界を覆う前は女たちの多くは華奢だったのに、まるで男の代わりになるように筋骨隆々な女たちも増えたそうだ。もっとも竜馬のように華奢なままなくせに膂力において文字通りの男勝りな女も多くなったのだが。兎角男には生きづらい世の中である。俺も女に生まれたかった。そうすれば、きっと…。


「男を南蛮人共に売り払う魔女勝海舟!天誅!!」


 女武士たちが刀を抜いて構えた。その視線は殺気に満ち満ちている。だがその殺気に充てられても勝はけろりとした顔をしていた。


「私は男を外国に売ったことなどないよ。これだから攘夷派は困る。平気でデマを流して、恵まれない人々を煽るのだ。まったく…ふぅ」


 懐からキセルを取り出して、煙草の火を船舶の燐寸まっちでつけて煙をぷかぷかとさせはじめる。全くのんきな女だ。肝が据わっているのか、それとも阿呆なのか?俺はため息を吐きながら刀の鯉口に左の親指をかける。そして腰を落として思い切り地面を蹴って、一気に女武士に肉薄する。


「なぁ?!は、速い!?」


「いいやお前らが遅いだけだ。はぁ!!」


 俺は居合でもって目の前の女の胴を真っ二つに切り裂いた。俺の顔に少し血しぶきがかかった。悲鳴を上げる間もなく女武士は絶命した。そして残る二人に向って俺は叫ぶ。


「失せろ!!棺が常人の半分の葬式がしたくなければ失せるがいい!!」


 女武士たちは震えて、この場からみっともなく走り去っていった。


「おお。これはこれはまるで歌舞伎の演目のようではないかね?大したものだね。しかしね君」


 勝は振袖の袖を軽くつかんで、俺の顔に着いた血をぬぐった。人を斬るたびに俺はいつも血を被っていた。その血を見て他人はいつも嫌な顔を見せた。なのにこの人は嫌な顔をせずに俺の顔を拭いてくれている。


「やめてください。綺麗な着物が汚れますよ」

 

 俺は突き放すようにそう言った。だけど顔に触れる手を払いのけることはできなかった。


「君の綺麗な顔に血は似合わないよ。ほらこれで綺麗だ」


 代わりに勝つの振袖が血で汚れた。その事実に俺は落ち着かない居心地の悪さを覚えた。


「だがねぇ君。殺しを嗜んではいけないよ。君の人の斬り方は美しすぎる。それはとてもとても哀しいことだよ」


 俺は殺しを嗜んでいる。確かにそうに違いない。これ以外に俺が生きる道はなかった。他の生き方を知らない。だから嗜む他ないのだ。


「だけど俺が人を斬らなきゃ先生は今頃斬られて死んでますよ」


 俺がそう言うと勝は目をパチクリさせて、優し気な笑みを浮かべた。


「これは一本取られてしまったね。確かにその通りだね。君がいなければ、私は今生きていないわけだ。ありがとう岡田君。ふふふ」


 変な女だ。俺の屁理屈に笑っている。揚げ足を取られて楽しそうにしている。だけどきっと初めてだった。俺という人間を初めて認めてくれたのは、この女がはじめてだったんだ。








 邸宅に帰ってすぐに俺は風呂に入る様に言われた。雇い主より先に風呂に入るなんてできないと断ったが、勝は頑固で一切自分の意見を曲げなかった。だからしぶしぶ風呂に一人で入った。蒸気機関でいつでも手軽にお湯を沸かせるようになったこの時代だが、その便利さの大小で俺たち男は大きく数を減らしたという。そう思うと湯を浴びる気持ちよさにどこかうしろめたさを感じる。今生き残っている男は俺を含めて煙に耐性を持っているそうだ。そもそも不思議な話である。なぜ煙は俺たち男を殺したのか。風呂につかりながら俺は無駄な考えに囚われていた。だからだろう。忍び寄ってくる気配に全く気付かなかったのだ。


「邪魔をするぞ!!」


 引き戸が開いて少し冷たい風が浴室に流れ込んできた。そして湯気が晴れていき、すぐそこに勝が立っているのが見えた。豊かな乳房と弓なりにくびれる腰と桃のように丸みを帯びた尻。まともに女の裸体を見たのは初めてだった。それはそれはとても美しいものだった。と同時にひどく羞恥の感情が浮かび上がってきた。


「あっ…あ、あの…ど、どうして…?」


「せっかくだからな!今日の礼に背中を流してやろうと思ってな!遠慮するな!幕臣に背中を流させてやったと自慢話の種にしてやれ!ふははは!」


 快活に笑う勝だがこっちは気が気でない。女の裸の途方もない衝撃と、俺自身も今や裸であるということの恥ずかしさと恐ろしさで体が動かないのだ。


「ほら湯船から出てこい。頭を洗ってやるぞ。遠慮するな。仏国より仕入れた高級しゃんぷーを使わせてやるぞ。あはは!」


 勝は俺の手を掴んで湯船から引っ張った。とっさのことで振りほどけなかった。そのまま俺は湯船から立ち上がらせられてしまった。


「ん?なんだ随分と薄い胸だな。まあまだお前は幼い。これからまだ膨らむだろう!…ん?なんだそれは?」


 勝の視線が下の方に降りていく。


「んん?なんで股間に変なものをぶら下げている?股間に何もないのが女のはず…あっ」


 そして勝の顔が見る見るうちに茹でたタコのように赤くなっていき。


「きゃあぁんぐっ?!」


 俺はすぐに勝の口を手で塞いだ。ここでさけばれてはたまらない。幼馴染の竜馬でさえ俺が本当は男だってことに気づいてないんだ。というよりも暗殺の標的にまさか男バレしてしまうなんて油断しすぎだ。


「むぐむぐぐんぐぅううぐう!」


 勝は俺の手を振り払うより先に胸と股間とをさっと両手で隠した。それにどこか惜しい気持ちを覚えたが同時にこれ以上女の裸で動揺せずに済んで安心も覚えた。


「しー。静かに。そうすれば手を放す」


 俺は勝に真剣な声で囁いた。勝は大人しくなってこくこくと頷いた。俺は手を離した。


「なるほど。化粧が厚かったのはそれが理由か。男であることを隠すためだったと」


 勝は視線を興味深げに下に向けながらそう言った。


「下を見ないで俺の目を見て言ってくれ…。まあ、分かってると思いますが」


「もちろん言わんよ。このご時世男を囲っているだなんて知られたら、ここに人さらいやらヤクザやら男日照りやらが沢山集まってきかねない。それに幕臣とは言えども私のような家格の低いものが個人で男を抱えていたらどんな恨みを買うやら分かったもんじゃない」


 頬を赤く染めながら勝はため息を吐いた。


「あーその。湯船から上がってくれないか。それで後ろを向いて座ってくれ」


 俺は言われたとおりにする。女は男と違って男の体そのものにはあまり興味がないと聞いたことがある。むしろ目に入れたくないとさえ思う場合もあるとかないとか。勝もそのような女の一人なのかもしれない。俺は浴室の床に星座で座った。すると頭にぬるっとした感触を覚えた。


「ちょ?!何やってるんですか?!」


「しゃんぷーだ!」


「しゃんぷー?!なんですかそれ?!」


「それは気持ちいいことだ!!まあ任せろ!!」


 勝は俺の頭に手を当ててわしわしと動かし始める。するとぬるっとした液体はそのうちに泡立ちはじめて髪全体を暖かく包み込んだ。


「どうだ?きもちいいだろう?」


「わるくはないです」


「ふふふ。素直ではないな」


 そして勝は桶で湯を組んで俺の頭の上の泡を流した。そして布に石鹼を擦って泡立てて背中を優しく拭きはじめた。


「聞かないんですか?女のフリをしてた理由」


「話したくなったら聞いてやるさ。しかし女の体とは本当に違うんだな。女よりも逞しいのは本当なんだな」


「遊郭とか行ったことないんですか?」


 このご時世、女が男に会いたければ遊郭にでも行くしかない。昔は逆だったとらしいけど。そこでは花魁ほすとたちが夜の街を盛り上げているそうだ。


「ないね。興味がなかった。仕事の方に熱をあげていたと言えば恰好はつくかな?くくく」


「仕事ですか。本当に開国なんてして大丈夫なんですか?南蛮人たちに攫われるなんて御免なんですけど」


「むしろ逆だ。開国しないと大丈夫ではない」


「だから今日みたいに恨まれてるんでしょ?」


「でも君がいたから無事だ。それにこれからもいてくれるんだろう?」


俺が振り向くと勝は優し気に微笑んだ。俺はその笑みに惹かれているのを感じた。そしてふっと下に目をやるとプルンと乳房が揺れているのが見えた。それがいけなかった。俺の頭にすごく血が上るのを感じた。そしてくらくらしてそのまま後ろに倒れて壁に頭をぶつけた。そしてそのまま気絶してしまったのだった。


















『好きな偉人は誰ですか?』


『坂本竜馬です!!何故ならば…』


 そんなありきたりな質問をくぐって会社に勤めて人は大人になるらしい。だけど俺は大人にはなれなかった。まだ若い身空で俺は病に倒れた。ろくに体も動かせず、この世を去るまでの残り時間をただひたすら本を読んで過ごした。死ぬ直前に読んでいたのは幕末の本だった。


「ああ、どうせ死ぬなら坂本龍馬みたいに死ねればいいのに」


 デカい仕事をまとめ上げ、大きな夢を見て、派手に死ぬ。最高の人生だ。俺みたいな何も成せない何者でもない誰かとは違う。














 確かにそんなこと願ったよ。でもさ。


「でもなんで貞操逆転男女比狂いでスチームパンクな異世界幕末偉人はみんな美少女なのになんで俺は岡田以蔵なんだぁああああああああああああ!!!坂本竜馬にしてくれーーー---------!!」


「うわ?!なんだ藪から棒に!もう夜なんだぞ!静かにしろ!」


 俺が目を覚ますとそこは勝の膝の上だった。柔らかい太ももの感触を頭の後ろに覚えた。そしてすこしむっとした勝の綺麗な顔が目の前に見える。


「お前は私よりも坂本の膝枕の方がいいのか?いくら私が干物女でも傷つくぞ…」


 どことなくしゅんとした感じで勝が俯く。可愛い。じゃなくて!俺にはまさかの前世があったのだ。ごくごく普通の現代日本からこのスチームパンクな異世界幕末に転生したらしい。せめてさぁ。生まれたときから記憶を持ってたりとかしてほしいよね。というか戦国時代でもないのに偉人さんが美少女になってるんですけど?織田信長じゃなくて勝海舟が女の子とかレアい気がする…。てかギャルの坂本龍馬と俺が幼馴染って…なんだその日本史を変えてくださいと言わんばかりなポジションは…!それよりも岡田以蔵って…しかも俺だけネームド偉人だけど男です。激しく謎である。というか勝海舟を殺しに来た俺ヤバすぎやろ!日本史への影響半端ないよ!ぎりぎりで前世に気づけてまじでよかった!つーかこれからどうすればいいんだ?この世界はスチームパンクで男女比が狂った貞操逆転世界でしかも幕末。変な蒸気機関のせいで技術が無駄にチートしてるし、なんか蒸気飛脚とか言う空飛ぶパワードスーツなんかもあるヘンテコ世界だ。







 だけどこれはチャンスだ。何者でもなかった俺が何者かになれるチャンス。


 ただ生まれて死ぬだけだった前世。

 ただ生まれて道具として使われれるだけの今世。


 だけどこの瞬間からは違う。俺は未来の歴史の知識で世界に関われるのだ。俺は俺の人生を生きれる!やっとみずからをよしとして生きることができるのだ!!




「さっきから様子が変だが、まだ頭が痛むのか?」


 湯上りで少し温い勝の手が俺の頬に触れた。その感触が酷く心地いい。前世は病院生活ゆえに、今世は身の危険故に女とこうやって過ごす機会がなかった俺には刺激が強すぎた。きっと頬が真っ赤になっていること間違いなしだ。


「先生」


「なんだ?」


「俺を弟子にしてくれませんか?」


 勝は首を傾げている。さっきまでの俺は武市半平太の影響下にあったから攘夷派だった。今はそんな夢想は見ていない。


「かまわないが。私の下で何がしたいんだ?」


「そうですね。やりがいのある自由な生活かな」


 そして俺はうとうととし始める。閉じ始める視界には勝の暖かい微笑みが見えた。この人と出会って俺の世界は変わった。ならこの人と一緒に俺は生きてみたいそう思ったんだ。








***作者のひとり言***


よんでくれてありがとうございます。

なんか電波を受信したんで書いてみた。


美少女になった勝海舟と一緒にスチームパンクな幕末を乗り切るお話の導入みたいな感じ。


メインヒロインが勝海舟…?織田信長呼んで来いよ!!つーかなんでスチームパンク?意味わかんねーよ!

でも蒸気飛脚という名のパワードスーツ設定はなんか個人的にはイカしてると思ってます。






キャラ紹介


坂本龍馬


ギャル。ぜよぜよ言ってる。遊び人風だけど、いつも吉原の門をうろうろするだけで入ったことはないピュアガール。転売ヤーの元祖とか言ったらきっと怒られるけど、商社ってデカい転売屋ですよね?ちがいますか?ちがいますかすみません。



武市半平太


ヤンデレ。



勝海舟


バリキャリウーマン。テクノクラート。福沢諭吉絶対許さないウーマン。毒舌江戸っ子気質。人をディスるのが得意。視野が広いがある意味侍という枠に最後まで囚われた人だったんじゃないかな?



西郷隆盛


器がデカい。おっぱいもでかい。



ペリー提督


歌麿デカ竿を求めてはるばる海を越えてやってきたむっつりスケベレディ。

「ジャパニーズの竿ははじめてデース」とか言ってるけど、そもそも男が貴重な世界で他の竿なんか見たことすらないので、いろんな意味で初めてである。


井伊直弼


感じの読み方がわかんねー。



高杉晋助


ぼっちじゃないけど三味線でロックしてるイメージ。きっと主人公のチートで結核を乗り越えて生き延びるんだろうなって思ってる。





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