スペースシープナイト
三夏ふみ
白馬の騎士は……
それは白馬に乗ってやってきた。
白銀の鎧に赤十字が刻まれた盾。昔、お母様聞いたおとぎ話から抜け出た白馬の騎士に、リア・ローゼンの瞳は奪われた。
「お嬢さん。貴方が望むなら、私は盾となり剣となってお守りいたしましょう」
そう言った甲冑の下から現れたのは、どこをどう見ても羊の頭だった。
光線が飛び交う船内、突然現れた場違いな客に混乱の沈黙が流れる。
「構うな!撃て、撃ちまくれ」
目の前で起きた夢のような出来事に戸惑う手下に恫喝を入れ、宙賊長はレーザーガンの引き金を引く。
再び光線がリア目掛けて放たれる。白馬の騎士は颯爽と反転し巨大の盾を構えるもあっけなく貫かれ穴だらけに。しかし、怯まず馬の腹に合図し猛然と宙賊目掛けて突進する。目標がリアから騎士へ、穴だらけの盾を宙賊に投げ捨て、剣で斬りかかる。数人切り捨てるが光線の雨は止まらない。放たれた光の矢を切り払うとお次は剣が穴だらけだ。
手綱を強く引き高々と上がった前足で、宙賊共を蹴散らす。
「騎士様!」
駆け寄るリアが、胸に抱いていた父の形見を力いっぱい投げ渡す。
受け取った
勇猛果敢な騎士の活躍に次第に後退する宙賊。その姿を見て安堵するリア。騎乗で勝利を確信し高々と剣を掲げたその時、騎士の胸を貫く光線、その先には宙賊とは別の統率された機兵の姿が。
指揮官らしき兵士が合図すると、先程飛び交っていた倍以上の光線が騎士を貫く。上体がよろけた所へ追い打ちの一撃。騎士の頭部が吹き飛ぶ。
悲鳴にならない悲鳴。口を両手で覆い、胴体から離れ落ちる首を見つめ、膝から崩れ落ちるリア。
「ツレテイケ」
無機質な声が響くと両脇を抱えられる。
(ああ、神様。どうかお願い致します)
そう願い最後の力を振り絞ると、兵士の腕を振りほどき懐に隠し持っていた短剣を構える。
「お嬢さん。お願いする相手を間違えていますよ」
後ろの屍がスクリと立つと転がっている頭を拾い上げ元の場所へと挿げる。
その場に居た者すべての、理解の範疇を超えていた。屍となったはずの騎士は立ち上がるとみるみる黒く染まっていく。光線が再び貫く、が煙のようにすり抜ける。そして騎士が小さく何か唱えると、全員が苦しみだし倒れていく。
目を丸くして見守るリアに羊頭の騎士が近づき耳元で囁く。
「契約は成立しました。ご安心を我が主、この程度なら3日ほど寿命を頂くだけですから」
スペースシープナイト 三夏ふみ @BUNZI
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