5.ジョナ(33)

「ラルフ、なぜ僕らが選ばれたか知ってるかい。あの兵器は対外来種対策として使うのは強力だけど、致命的な欠陥を抱えている。ひとつはパイロットが確実に壊れる事。強大に拡張された身体機能はどうやら脳にダメージを蓄積させていくらしい。君の機体の更新回数を覚えてるか?初期は更新1回ごとにテストパイロット1人が犠牲になっていたんだ。つまり元々継続して乗れるようなものじゃないし、こんなにひっきりなしにやって来る侵略者に対して毎回そんな犠牲を払っていたんじゃキリがないし、志願者の数は限られている。まあこの問題はすでに突破口が開けているんだけどね。つまり身体拡張さえ頭が受け入れられればいい。動くはずのない方向へ動く関節や、首が斬られたとてあらゆるカメラから見え続ける視界や、ランダムで非科学的に起こりうる成長現象アップデートを違和感なく受け入れられる頭。分かるかい。だから僕らは選ばれたんだよ。誇大しきった妄想に取り憑かれた僕らは難なくそれらを受け止めることができる。彼女なんて実にいい例だね。ご覧、あの木の下に座っている巻き毛の彼女だよ。彼女は自分の頭の中に半導体が詰め込まれてると思ってる。自分をコンピュータだと信じて疑わないんだ。だから目を離すとすぐに機械油を飲もうとするし、多分独自のプログラミング言語なのかな、彼女にしか理解ができない数字の羅列をああやってそこらじゅうに書きなぐる。本来ならこの病院で人生を終えていくはずの僕たちは、初めて選ばれたんだよ。長持ちする使い捨てのパーツとしてね」


「センパイ、今日の午後は暖かくなるみたいですよ。中庭でお茶会でもしませんか。俺テーブルクラスと紅茶持ってくるんで」

「それはとてもいい考えだね」

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