今更幼なじみにはまるワタシ・・・
最時
第1話 どうしよう
陸上部の帰り。
駅で友達と別れて家へ向かう。
近所の幼なじみツバサを追いかける。
まさか小中は当然同じだけど高校まで一緒になるとは。
これが腐れ縁ってやつかな。
同じ陸上部だし。
かろうじて種目が違ったのが救い。
・・・ だけどツバサがいて良かったと思う。
いつも先に行っているけど、ゆっくり歩いて、たぶん私を待ってくれている気がしている。
「ツバサ。たまには駅で待っててくれても良いのに。かわいい幼なじみを置いて先に帰っちゃうなんて」
「自分で言うことか。違う電車の時もあるだろ」
「そういうときは改札で待っていてくれれば」
「忠犬か」
「大丈夫。ストーカーとか言わないから」
「あたりまえだろ。今日はやけに絡んでくるな」
「別に。普通だよ」
こういう会話はツバサだけだ。
「ところで先輩元気」
「誰」
「わかってるでしょ。青木先輩」
「ああ。元気も何もヒカルだって今日会っているだろ」
「私と種目違うし、どうかなって」
「それを聞いてどうするんだ」
「どうするって、そこ聞くとこ」
「聞くよ」
「デリカシーが無い。嫌われるよ」
「いいよ」
「はあ~ もう」
私は大げさにため息をついてツバサの顔をのぞき込む。
「見た目悪くないし、そういうところ直せばモテるのに」
「大きなお世話だ。っていうかこっちのセリフだろ」
「んっ・・・」
ツバサの言葉の意味を考えてみたがよくわからないので流すことにした。
「青木先輩。優しいし、かっこいいし、速いし、成績もトップクラスだって言うし完璧じゃない」
「話変えたな・・・ そうだな」
「私大好きなんだけど」
「それはもう何回聞いたかわからないな」
「彼女いないんでしょ」
「そう言ってたよ。自然に聞き出すのに神経使って疲れた」
「何でだろ」
「自分で聞いてくれ」
「無理に決まっているじゃん。先輩と話すの凄い緊張するんだから」
「誰が見てもそれはわかる」
「でしょ。だからかわいい幼なじみを助けると思ってお願い」
「はあ~ 何を」
ツバサは大きなため息をついて眼を細めている。
「もうじきバレンタインじゃない。チョコ渡したいなって」
「渡せば良いだろ」
「どうやって」
「手渡し」
「これだからモテないのよねぇ」
「大きなお世話だって。って言うか相談相手間違ってないか」
「・・・ たしかに。だけど自分で言ってて悲しくない」
「誰のせいだよ」
布団に入ってツバサとのやりとりを思い出してニヤつく。
ツバサはなんだかんだ言っても私の話に付き合ってくれる。
ツバサと話すのが楽しい。
好きなんだと思う。
ツバサ、私の見た目良く思ってくれているのかな。
そう思うと嬉しくなった。
ツバサも私のことが好きなんじゃないかなって思うんだけど、そういう風に私のことを見てくれているかは確信が持てない。
最初は別にどうとも思っていなかったんだけど。
先輩はかっこいいし。他にもそういう人はいるけど。ツバサは落ち着く。
一緒にいたい。
好きなんだと思う。
最近、寝る前に考えるのはツバサのことだ。
どんどん好きになっていく。
大好きかな。
だけど今更・・・
どうしよう・・・
ツバサが私に告るなんて考えられないし・・・
私がツバサに・・・
ありえないってっ。
今更そんなこと・・・
バレンタインデーの帰り。
いつもと変わらない町並みを小走りでツバサを探す。
最近、意識しちゃってあまりしゃべれなかったけど今日までにしたい。
だけどドキドキする。
こういう日に限ってトイレに行きたくなったり、電車のICカードを変なところに入れていたり、こういうのって私だけじゃないよね。
こういうのでいっそうドキドキがヤバい。
気がつくとずいぶん走っていて、会えない不安を感じて泣きそうになったがツバサを見つけた。
ハッとしてカバンの中にラッピングされた箱があることを確認した。
「ツバサ。たまには待ってよ」
「お疲れ」
ツバサの顔を見たら落ち着いた。
「だけど、ゆっくり歩いてくれているんだよね」
逆になんだか凄く冷静になった気がした。
ツバサが愛しい
「・・・ それで先輩に渡せたか」
「無理。だからこれはツバサにあげる」
今更幼なじみにはまるワタシ・・・ 最時 @ryggdrasil
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