第39話 「火の道」


 こんにちは。今日ご紹介するインド映画のタイトルはこれ!


 〇「火の道」(原題「Agneepath」)

 2012年製作・公開

 カラン・マルホートラー監督作品

 インド・ヒンディー語作品 174分

 リティク・ローシャン主演


 前回の「ビギル」とこれを、時間の関係もあって続けて観ることになったのですが、いやいやいや……情報量が多すぎました! つづけて「バンバン!」を見ることもできたのをあきらめたのですが、そう判断して大正解だったと思います。だってこんなの、情緒が破壊されまくりますもん……(涙)。

 映画の解説を読むと、どうやら同名のカルト的人気作のリメイク作品とのこと。寡聞にしてもとの映画についてはよく知らないのですが、どうぞご容赦ください。今回は、あくまでもこちらリメイク作品のご紹介となります。


 ではストーリー冒頭を簡単に。

 ムンバイ沖の小島に暮らす少年ヴィジャイ。教師の父は誠実な人で村人たちから尊敬を集めていました。ヴィジャイはその父から「火の道」という詩を教えられ、誠実に生きる道を示されて育ちました。

 ところが彼が11歳のとき、何年ぶりかで島に戻ってきた地主の息子カーンチャーが、ここで麻薬ビジネスを興そうと暗躍しはじめます。カーンチャーは恐ろしい風貌をしており、自分の容姿にすさまじい劣等感を抱いている男。鏡を恐ろしく嫌悪しています。

 このカーンチャーと地元の悪童たちの陰謀により、父は罪人の汚名を着せられ、陥れられて非常にむごたらしい方法で殺害されてしまうのでした。

 しかたなく、母とともにムンバイに逃れるヴィジャイ。そこで産気づいた母親は、街の女性たちに助けられて妹を出産します。

 ヴィジャイはカーンチャーへの復讐を誓い、ムンバイで麻薬マフィアのボス、ラーラーの手下になってのし上がることを決意。


 こうしてどうにかムンバイに落ちついたヴィジャイでしたが、一応働き口はみつかったものの、母と赤子を抱えての生活はやっぱり苦しい。

 警察も腐敗がひどく、警官の多くが裏でマフィアと通じていて、市民の安全をきちんと守ってくれず信用ならない。


 そんな中、ある事件がらみでひどい言いがかりをつけ自分や家族に暴力をふるってきた警官を、ヴィジャイは思わず射殺してしまいます。それがもとで母親から絶縁されてしまうことに。

 孤独にうちひしがれながらも、彼の心の中の復讐の炎は消えず、やがて十五年の歳月が過ぎ去って……。


 PG12であるところからも推察できるように、全体にかなり暴力性の高いお話でしたが、それよりなにより精神的につらくなるシーンが多くて、かなり重い映画でした。もちろん良い作品ですけれども!

 一応、ムンバイの街で仲良くなった女性との美しく明るいダンスシーンもありはするのですが、根底に流れるテーマが重いために「こんな楽しそうに踊ってても、このあとは……」と身構えざるを得ない緊張感にあふれていました。


 ところで、マフィアのボス、ルールーの何がひどいって、平気で人身売買、特に未成年の少女たちを道端で堂々と競りにかけるような酷薄な人間性。

 カネさえ儲けられれば、罪もない少女たちがどうなろうが「知ったこっちゃねえよ」な人なんですよね、ひどすぎる。それでいて、身内のことはとてつもなく愛していて、そのギャップもまた怖いというか。


 ラストまで何度も涙する胸アツな映画であることはまちがいないですが、ある程度の覚悟も必要。

 なにしろ救いがない描写が多めですしね……。でもそこにリアリティを感じるし、そこから這い上がろうと必死にもがくヴィジャイを、こちらも手に汗にぎって応援せずにはいられません。


 主役を務めたリティク・ローシャンさんは「バンバン!」でも主役をされた、長身のものすごいハンサムさんです。筋肉もしっかりと鍛えられていて本当に美しい。

 目の色が薄くて、ときどきオリーブ色?に見えるのですがそれもまた本当に魅力的!


 ぜひぜひ、機会がありましたらこちらもご覧くださいませ。

 ドスティ!

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