第37話 「きっと、うまくいく」


 こんにちは。

 今回はこちらの映画!

 インド映画では比較的有名な作品ですが、実はわたくしずーっと「観たい観たい」と思いながら果たせずにおりまして。

 インド映画を昔からご存じのかたには不要な情報ばかりになりそうなんですが、せっかく観たんでご紹介させてくださいね。

 

 そんなわけでずっと観られずにいたこの映画。それがこのほど、職場で「RRR」を激推ししていたころ、「インド映画ならこれは観たことありますか? いい映画です、おすすめですよ」と先生に言われて火がつきました。「アマ〇ンプライムビデオで観られますよ」と教えていただけたことも大きいです。


 〇「きっと、うまくいく」(原題「3 idiots」)

 2009年製作・公開

 ラージクマール・ヒラーニ監督・脚本

 インド映画。ヒンディー語作品 170分


 ご存じのかたも多いと思いますが、こちらは当時のインド映画の興行収入歴代1位を獲得した、金字塔的な作品。多くの人の心に訴えた作品であることは、これを見るだけでも明らかです。

 当時よく見たポスターのとおり、主人公は若い男性三名。

 かれらはそれぞれ違う背景をもちますが、エンジニアになることを目指し、インド屈指のエリート理系大学ICEに入学した学生でした。

 そこは非常にハイレベルな成績を要求される大学で、そもそも入ること自体が非常な難関といわれる学校。

 ここに非常に厳しい学長がいるのですが、彼の実の息子でさえも三度も受験して三度とも落ちている……というエピソードが紹介されます。


 とはいえ、物語の冒頭はこの時点よりさらに十年後のシーンからスタート。

 三人のうちの一人、ファランは飛行機に乗り、さあ海外へ出かけようという時になって、とつぜん携帯電話にかかってきた連絡にびっくりします。それは、大学を卒業以来ずっと行方不明になっていた親友、ランチョーが大学へやってくる、という報せでした。


 すでに飛行機は飛び立ってしまっていたのですが、ファランはあわててとっさに仮病を使い、無理やりに飛行機をUターンさせて大学へ飛んでいきます。途中、事情を説明して三人組の仲間のひとりだった親友ラジューも誘います。

 なんだかんだでようやく大学に到着したふたりでしたが、そこで待っていたのは親友ランチョーではなく、彼にすさまじい対抗心と恨みを抱いていたかつての同級生の男でした。男はランチョーとした十年前の「十年後、ふたりのうちどっちがより素晴らしい成功をしているか賭けよう」という約束を果たそうとやってきていたのです。


 この後、映画は十年前の出来事と現在とをいったり来たりしながら展開していくわけですが、その構成と塩梅の絶妙さには舌を巻きました。一瞬たりとも飽きさせない、笑いあり、涙あり、そしてインドの根深い社会問題まで考えさせられる内容の濃いストーリー。


 前述しましたが、かつてのICE大学には非常に学生たちに厳しい学長がおりました。この男は学生が純粋に学問を追求することよりも、もっと世俗的な成功を収めることのほうに重きをおいた価値観を持つタイプの「教育者」。しかもかなりのガンコ者。

 長い目で見れば本当に素晴らしい研究をしている学生にも、その内容をきちんと見て評価することもなく、杓子定規な規則ばかりをおしつけて柔軟に対応してやろうとしません。その挙げ句に学生を強引に留年させてしまったりして、その人が絶望して自殺をしてしまうという悲惨な事件さえ起こってしまいます。


 ランチョーは非常に頭脳明晰で優秀ではありながらも、明るくてちょっと変わり者。そしてなにより自由人。でも学問を純粋に追い求めるべきだという強い信念を持つ人でもありました。

 あとのふたりはどちらかというと、家が貧しいからとか、本当はほかにやりたい仕事があるのに父親の過度の期待を裏切ることができずにしかたなくこの大学にやってきてしまった……といった背景の青年たちで、正直いっ大学での成績は落ちこぼれもいいところ。

 それでも同室になった三人は、時にはケンカしつつもやがて深い友情で結び付けられていきます。


 学問に対する考え方の違いやいろんなトラブルにより、やがて学長と対立していく三人。

 そんな中、ふとしたことから知り合った魅力的な医学生の女性が、この学長の娘であることがわかり……。


 インドの厳しい学歴社会の現状を垣間見せつつも、ドタバタなコメディシーンや美しく楽しいダンスシーンは(これはいつものことですが・笑)とても魅力的。また大きな意味での愛と友情には、しばしば涙を誘われました。

 ランチョーがなぜ姿を消してしまったのか、現代のランチョーはどうなってしまったのか……という部分は全編を通してミステリーとしての意味を持っており、そういう意味でも最後の最後まで飽きさせません。ここがまた心憎いつくり!

 全体に見終わったあとの後味もよく、とても心に残る作品でした。

 圧倒的にオススメです。


 お子さんのいるご家族で一緒にみるのもよい作品ではないかなと思いました。


 ではでは今回はこのあたりで。

 ドスティ!

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