第17話 「ボクサーの愛」
はいこんにちは~。
もいちょいと、せっかく「RRR」から興味を持っていろいろ観ることになったそのほかのインド映画をご紹介させてください~。
今回の作品も、前回「プレーム兄貴、王になる」でご紹介した「シネ・リーブル神戸」さんで開催してくださっていたインド映画祭の中のひとつ。
もともとJAIHO(ジャイホー)では「ザ・ブローラー 喧嘩屋」というタイトルで配信されていたらしいのですが、2022年12月の日本公開時にはタイトルが変更されて「ボクサーの愛」に。
インド本国では2017年の公開。
アヌラーグ・カシャップ監督作品、153分。
この作品で特筆すべきは、映画の冒頭でも説明されるとおり「これは実話にもとづく話」だということ。
これがあるからこそ、特に中盤以降の展開を追うにつれて背筋が寒くなってきます。
ではさらっとストーリーのご紹介を。
北インド、ウッタル・プラデーシュ州の町バレーリーのとあるボクシングジム。試合に出ることを夢みて日々練習に励んでいた主人公シュラワン。カーストの低い彼にとって、試合に出て名声を勝ち得ることはそのまま人生の勝利にもつながることでした。
ところがジムのオーナーであるバガワーンは、シュラワンをはじめとするジムのみんなにろくにボクシングを教えてくれません。そればかりでなく、自分の屋敷でボクシングにぜんぜん関係なさそうな雑用をさせてこき使ってばかりいる。
バガワーンはかつてのチャンピオンらしいのですが、彼が教えるのはごく一部の有望な(そして恐らくはカースト上位の)選手だけ。
要するにシュラワンはカーストが低く、バガワーンは高いわけですね。
しかもこのバガワーン、地域の有力者でもあります。屈強な男たちを何人も雇っていて、都合の悪い時にはその力を行使し、地域を支配しているという男。要するにほとんど土着のヤ○ザみたいなやつ。まあ表だって悪事をはたらくことはないんですが、裏じゃさんざん悪どいことをやりまくりです。
ある日、とうとうこのひどい待遇に耐えきれなくなり、不満をぶちまけてバガワーンを殴ってしまったシュラワン。ほかのボクサーたちやバガワーンの手下の男たちにボッコボコにされた上、破門を言い渡されてしまいます。
意気消沈するシュラワン。
そのとき、美しい学生の女性スナイナーに出会い、恋をします。
スナイナーは耳は聞こえるのですが言葉を話すことができません。声が出せないという障がいがあるようなのです。
彼女も、ひたむきに気持ちを伝えてくるシュラワンに惹かれていきます。
この映画ではいわゆる「インド映画っぽい」役者たちによるダンスや歌などはまったくないのですが、あちらこちら大事なシーンで素敵な歌が流れます。ここもちょうどそんなシーンのひとつ!
さて、実はこのスナイナー、なんとあの最低なボクシングジムオーナー・バガワーンの姪でした。
実の父親は、弟であるバガワーンに借金などがあって頭があがらず、気弱でなんでもかんでも弟の言いなり。頼りにならない。
バガワーンは姪のスナイナーのことも勝手に、とある富豪のずっと年上の男と政略結婚させようとしていました。
このあたりの描写で強く印象に残るのが、色濃い男尊女卑です。特にバガワーンは、スナイナーだけでなく自分の妻も、ほとんど自分の奴隷のようにしか思っておらず、日々当然のようにしてこき使っています。
一方シュラワンはどうにかこうにか他のボクシングジムに入れてもらえることになり、練習を再開。仕事をしながらのことなのですが、仕事でまたカースト関連で意地の悪いことをされたりして時に折れそうになりつつもひたむきに頑張っていきます。その姿にやっぱり応援せずにはいられなくなる。
でもバガワーンが練習場所や試合のことも、とにかくことごとく嫌がらせや邪魔をしてくるという状況。
ムッキー! 腹たつぅ!
ともかくも。
あれこれあって、なんとかスナイナーと結婚式を挙げることができたシュラワン。ですが、もちろんバガワーンはそんな結婚認めない。
遂に、スナイナーとその家族を襲い、拉致して遠くの田舎の村へと連れて行って監禁してしまいます。スナイナーは薬を使われ、朦朧とした状態で寝てばかり。バガワーンは彼女の母親を脅して彼女の見張りと世話をさせておき、例の金持ち男と無理やり見合いまでさせてしまいます。
いっしょに捕まったお父さんはバガワーンの手下の男たちに足を折られて動けない状態に。もうムチャクチャや……。
バガワーンは彼女を人質にして、「次の試合で八百長をして負けろ」とシュラワンを脅してきます。
もう八方ふさがり!どうなるの~!
ね? これが「実話にもとづく話」って聞いたらめっちゃ怖いでしょ?
どんな社会よインド……ってなる(もちろん全員じゃないことはわかってますが)。
姪っ子を拉致ったうえに薬で意識を朦朧とさせといて無理やりおっさんと政略結婚させようとするんですぜ奥さん! しかも実の叔父が。どんなんや!
バガワーン役のジミー・シェールギルさんがまた、なんやサメを思わせるような黒目がちの怖~い目で全編「怪演」をされており、ほんま心底怖かったです……。あんなんに狙われたら絶対に助からん。でも、あれだけでも観る価値あるかも。もはや怖いモン見たさみたいなやつですけども(笑)。
あと、主演のシュラワン役ヴィニート・クマール・シンさんはこの役のために一年間みっちりと身体づくりのトレーニングを重ねたのだとか。さもありなん、まことに素晴らしく鍛えられた筋肉質のお身体です。そして力強いアクション!
ボクシングそのもののシーンはあまり多くなく、逆にバガワーンたちとの戦いのアクションはめちゃ多かったという印象。むしろそっちがメインなんやと思う。
……ということで、気になるラストはぜひぜひ、ご自身の目でどうぞ~!
ドスティ!
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