第11話 暴力表現についての考察

 こんにちは。

 またもや「完結したした詐欺」が延長しておりますねすみません(苦笑)。

 もういいや、完結マークつけるのしばらく諦めます……。まだ書きたいことも出てきましたし。


 で、今回の話題はこちら!

 SNSをやってらっしゃるかたはすでにご存じかもしれませんが、このところ「RRR」の暴力表現について某SNSであれこれと話題になっておりました。

 私の記憶している範囲で紹介しますが、記憶違いなどがあって多少事実と異なる部分があるかもしれません。その点はどうかご容赦・ご理解いただけましたら幸いです。


 さてさて。

 ひとつ目は、ファンになった人に勧められた、または劇中歌「ナートゥ・ナートウ」が米アカデミー賞最優秀賞を受賞したりして話題になったことなどから、そのほかの前情報もあまりなく「RRR」をご覧になったというご年配の女性のエピソード。そばで見ていた他の人による報告でした。

 楽しみにして映画館にやってきたものの、あまりの暴力表現がきつくて観つづけられず、つらくて気分も悪くなり、途中で外へ出てしまわれたのだとか。顔色が悪く入口のところで座っておられたとのことで。

「もっとこう……楽しい感じの映画なのかなと思ってたんだけれど……」と。


 もうひとつが、とある男性が自身のブログにまとめた体験談。

 話題にもなっている作品だし、人に勧められたので観にいったけれど、暴力表現が激しくてとても観ているのがつらかった……というもの。

 こちらについては書き方にいろいろとひっかかりを感じさせる文言が多かったこともあって、SNS内でかなり炎上してしまいました。すでにもと記事を削除されていますので、今となっては詳しく確認することが難しいのですが。


(※ 一応補足しておきますが、こちらのブログ記事については、なんとなくただのPV稼ぎのための釣り記事だったのかも……? という疑惑がいまだぬぐいされないままです。というわけで、こちらに関しては話半分に聞いとくほうがええかな~とは思っております)


 ともあれいずれにも共通するのが、暴力表現にあまり耐性のないかたが、事前に「ナートゥ」などの楽しい踊りや歌のシーンぐらいの情報だけを入れて観にいかれて、驚き嫌悪感を覚えた、という点でした。


 正直「なるほど」と思う部分はあります。けれどもこのミスマッチは、テレビ番組などで明るく楽しい踊り「ナートゥ」の部分ばかりをクローズアップして取り上げすぎていたり、お勧めする人の配慮がちょっと欠けていたりしたことで生じた問題なのかなあ、と思ったり。

 紹介のしかた、大事ですよね。


 実際あれはインド解放闘争がテーマの物語。流血沙汰やら拷問やら殴り合い殺し合いといったシーンが非常に多い作品です。インド人英国人問わず、むごたらしく死んでいくシーンも多い。

 それを知らずにいきなり観てしまうと、暴力表現にあまり免疫のないかたは確かにかなりびっくりするだろうなと。


 ですからまず、お勧めする側も「楽しいよ!」だけじゃなく、一応「流血や暴力シーンもけっこう多いから、それが大丈夫そうなら行ってみて!」とつけ加えるぐらいはした方がいいかも。

 SNS上でよく言われていたのは「『ゴールデンカ○イ』が好きで大丈夫ならきっと楽しめるよ!」というもの。なるほどです。


 そういえば私もこのエッセイを書くにあたって「ええぞ!」とは言うてますが、暴力表現についてはわざわざ詳しく書いてなかったな~と反省。

 ついでながら、「RRR」のレイティングはG。つまり「どなたでもお楽しみいただけます」というやつです。

 でも、あのアニメ「鬼滅の刃」でもレーティングPG12(小学生以下のお子さんには保護者等によるサポートが必要です、というランク)なので、こちらもPG12、あるいはR15ぐらいでもよかったのかもしれませんね、残酷シーンがあることを考えると。まあいまさらかもしれませんけども……。


 主人公A・ラーマ・ラージュもコムラム・ビームもインド解放闘争の中で若くして死んでいった実在の人ですし、それはもちろん英国人に殺されてのことだったでしょう。

 流血や暴力がないはずがないし、日本での映画ポスターでも十分、戦う物語であることは表現されていたと思うんですけどもねー。


 「RRR」のラストでアップテンポの楽しい曲「エッタラジェンダ」で華やかな踊りとともに紹介されていくインド解放闘争の偉人たちも、この闘争の中で命を落とした人が多数。

 この中に、非暴力・不服従で有名なあのガンジーがいないことは象徴的です。


 いろいろと調べていると、今のインドではあまりガンジーの評価は高くないのだとか。むしろ命を懸け血を流して独立を勝ちとった解放闘争の士こそ、より多く尊敬されているのだそうです。


 ラージャマウリ監督もどこかのインタビューで言っておられました。「これはあくまでもアクション映画、そしてエンターテインメント。だけどインド人として、過去にそうやって血を流して戦い死んでいったインド解放闘争の士たちに敬意を払い、かれらを描くための映画でもあるんだ」と(意訳ですよ)。

 つまりこれはインド人のインド人によるインド人のための映画。


 作品冒頭でも「1920年 インド」とテロップが出ますが、時代も近くてどうしてもナショナリズム色が強く出る。政治的な側面が否めない。だからそういうものに鼻白みがちな人はとくに違和感や不快感を覚えるようです。これまたちらほらとSNSで拝見したご意見でした。

 しかしあんな風に他国からあからさまに侵略されたこともない、今は戦争もしていない国の人間が「ナショナリズム色が濃すぎる」だの「不快」だのなんだのと言うべきものではない気がします。

 まあ意見を言うこと自体は自由なんですけどもね。インド国内でもいろいろ賛否は分かれているということやし。


 そういえば「こういうものをエンタメとして楽しみ消費していいとは思えない」っていう人もいたな。

 まあこれに関しては、「いや本国の人が『エンタメです。どうぞ楽しんでね』って作って出してる作品なんやけども……」ってなった(苦笑)。正直、めっちゃモヤモヤしました。まあええねんけども。


 実はさきほどのブログの男性も「こんな風になんでも暴力で解決しなくても、話し合えばすむこと」(意訳)と書いておられました。でもそれはインドの人たちにとってとても無礼な言い方のように思う。

 たとえば今で言うならウクライナの人たちに、「ロシアが攻めてきて、無辜むこの市民に対して略奪、暴行、拉致、強姦などをくりかえしていても暴力で応じるな、話し合いで解決しろ」みたいなことを、平和な国から偉そうに言い放つようなものだと思うのです。

 実際に血を流し殺された肉親がいる人たちに対しては、とても頓珍漢で無責任かつ無礼な発言だろうと思う。

 まさに侵略されたり占領されたりしている現場にいる人たちだって、そんな甘い状況なのだったらとっくに話し合いで問題を解決しているでしょう。インドでも、それでは到底無理だったからこその武力闘争だったはずです。

「向こうがそもそも話し合いのテーブルになんかつかないんだよ!」って思うんやけど?? それでどうやって話し合えと?? ってなる。


 すでに当該のブログは消されていますが、今となっては本国インドのかたがあのブログを目にすることがなかったことを願うばかりです(はっきり言って、ここで紹介している以上にひどいこと、無神経なことも書いてたので)。


 はあ。

 なんや熱くなりすぎて話がアレコレとっちらかっててすみません。

 とりあえず、人にお薦めするときは「楽しいよ! でもつらくて悲しくて暴力的なシーンもけっこうあるから、苦手なら無理しないでね」ぐらいにしておきましょう~。

 ドスティ!

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