窓から見える、その星は。

垂月 麻紐(すづき あさひも)

プロローグ

 


 轟音。



 頑丈な船体が強い負荷にさらされ軋んでいる。

 音速を超えた船体は空気を切り裂き、鼓膜を易々と破裂させるほどの爆音が防音された壁によって遮音され、それでもなお低く鳴り響いている。

 コックピットから機械音声による繰り返しの警告音と、無線機から鳴り響く勧告音声は混ざり合わさってうまく聞き取れない。


  ここまでは予定通り順調にすすんでいる。


 彼女は押さえつけられたシートベルトをしっかりと握りしめながらもう片方の手をの伸ばし、機器から発せられる警告音のスイッチを切り、無線機のボリュームを上げる。

 先ほどまで雑音と認識していたノイズが意味の通る音声となって船内の雑音を掻き消すほどの大きな音に変わる。

「...です、貴機は日本の領空を侵犯しようとしています。東へ変針してください。こちらは陸軍航空隊です、貴機は日本の領空を侵犯しようとしています。東へ...。」

 

 ...ここまで来れたんだ、夢が叶ったんだ。

 まだできることはある。

 やり遂げるんだ。

 

 今、わたしは、ちっぽけな自分自身の命と、ずっとそばにいてくれた友人とそして、大切なみんなの未来をかけて、世界を救う。

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