あなたは宝物。

紫陽花の花びら

第1話

 それは白馬に乗ってやって来た。冬馬の優しい心

その頃冬馬はどうしても欲しい物があるとかで在学中はバイトに、卒業後は仕事に励む毎日。

そんな恋人を見ていると、私も無駄遣いは極力止めるようになった。この時既にふたりの誕生日以外に大切な日はないと意見の一致を見ていた。勿論普通にデートはしていたけど。

 二十歳の誕生日前夜。仕事帰りバスを待っていると、一台の大きなバイクが止まった。ナンパか? と顔を上げると、そこには恋人がいた。冬馬はバイクを端には止めて跪く。

「谷山桜さん。白崎冬馬は夢の約束を果たしに来た。白馬に跨がりプロポーズを為てとの仰せてしたので、我が白馬一号に跨がり納車即参上!」

「ええ!プロ? お~それが約束だったのか。即答! 谷山桜謹んでお受けいたす。然し見事な白馬」

本当は冬馬が美しかった。

夢の中の冬馬がそこにいたから。

 彼との出逢いは私の夢だった。

高二の冬休み、私は同じ夢を一週間見続けた。銀髪の男子に道を聞かれ、一生懸命説明しながら恋に落ちていく私だが、最後は必ずこれで起こされる。

「有難う! 俺白鷺天馬」

しらさぎてんま? ふざけた名前だ。幾ら時代劇好きな私でも自分の頭が心配になった。  

 新学期早々の転校生。

えっ!あの銀髪男子! 夢か現実か? 心臓がドクドクと煩い。

問題は名前だっ。銀髪男子が黒板に書いた名前は「白崎冬馬」だった。「白鷺天馬」なんと白と馬が合っている! 怖い! 自分が怖い! 流石に「ねぇ、道教えて」とは言わなかったが、

「教科書見せてと」言って隣の空いている席に座って来たのだ。

猛烈に嬉しかった。そして気つけば、何故が普通に付き合っていた私達。

その夫婦の最大のイベント。

一年でたった二日。それが互いの誕生日だ。これだけは外せ無い。何故なら、この世に生まれて来たからこそ、私達は出逢い結ばれた。これはもう祝うしかない最大級のイベント。その日は小洒落たお店でディナーなんて事はなくて。主役の食べたいものふたりで作る。一応仕事はお休みにするのが原則。でも無理なら祝い伸ばし大いに結構。でっ、主役の観たい映画をツモヤでレンタルして、帰り道近くのケーキ屋さんで、各々好きなケーキを買う。作る食べる観る話す。すべて終了する頃には夜も良い感じに更け、とくれば繋がりを求め合い、心地良く結ばれ後は眠りに落ちていく。

 出逢う事は出来ても、共に生きていく事は奇跡だと知っている。

だからこの二日死守。何があっても。



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